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アメリカでVCのあり方は変わりつつある―、Scrum Venturesで宮田拓弥氏が目指すもの

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「今でファンド設立2年ほどです。ようやく形になったので取材を受けるようになってきました」。そう笑いながらTechCrunch Japanの取材に応えるScrum Ventures創業者でゼネラルパートナーの宮田拓弥氏(@takmiyata)は、日本のネット業界、スタートアップ界ではよく知られた人物だ。

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日米でエグジットを経験した起業家から投資家に

宮田氏は、サンフランシスコを拠点に米国のテック系スタートアップへの投資を行うVCを経営しているベンチャーキャピタリストだが、日本と米国でソフトウェア、モバイル関連のスタートアップを複数起業した元起業家でもある。顔認識技術を開発していた南カリフォルニア大学発のNeven Visionの創業に関わり、2006年にGoogleへ売却するというエグジットを経験。日本では自分に似た顔の有名人を教えてくれるサービス「顔ちぇき!」を提供するジェイマジックの創業者として知られていて、これは2009年にモバイルファクトリーに事業譲渡している。2009年にミクシィでアライアンス担当役員に就任し、その後はmixi America CEOを務めた。

アメリカを拠点とするようになって約10年、Y Combinatorを始めとする現地のテックコミュニティに人的ネットワークを持ち、これまでにコマース、ヘルスケア、SaaS、動画、IoTなどのスタートアップ39社に投資してきた。現在の投資テーマはライフスタイルとテクノロジーが重なる領域。投資対象はかなり幅が広く、金融やIoT、ドローン、ヘルスケアもファッションも含むという。技術トレンドとして、新しい価値が生まれるキーとなる、いわゆる「イネーブラー」としては人工知能、ビーコン、クラウドソース、API、ウェアラブルなどに注目しているそうだ。Scrum Venturesとして投資している39社は全部アメリカ企業で、7割がシリコンバレーベース。ただ、創業者の出身国は、韓国、イギリス、シンガポール、ロシア、中国、インド、フランス、オーストラリア、イスラエル、ベトナムなど、かなり多様だ。

VC関連の統計データを提供するCB Insightによれば、アメリカで投資している日本系のVCとしては、Scrum Venturesは投資件数で「最もアクティブ」と言えるという。アメリカで投資活動をしている日本系VCといえば、WiLDraper Nexusがある。

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Scrum Venturesは日本企業からの出資が主

アメリカのVC界隈では付加価値のない資金の提供という投資だけでは、なかなかベンチャーキャピタリストとしてトップ・ティアのグループに入って行って良い投資ラウンドに参加できないという現実がある。宮田氏は自らがエグジットを経験している起業家であることや、多くのアメリカのスタートアップを日本市場や日本企業へと繋ぐ役割を果たすことで、一定の地歩を固めつつあるようだ。

2013年スタートのScrum Venturesのファンド規模は現在合計で約2500万ドル。出資しているLP(Limited Partners)は、RSPファンド(リクルートホールディングス100%出資ファンド)、富士通、博報堂、DeNA、mixi、リヴァンプ、マネックス証券、クロスカンパニー、Jフロントリテーリング(大丸松坂屋 / パルコ) などだ。こうした日本企業がScrum Venturesのようなスタートアップへの投資ファンドの出資者となる背景には、単なる投資という以上に、宮田氏のように現地に入り込んでいる人物を通してテックビジネスのトレンドにキャッチアップするという意味や、シリコンバレーの技術を取り込むようなアライアンスを模索するという狙いもある。Scrum Venturesでは定期的にLP向けのネットワーキングイベントも開催している。

インキュベーションやコミュニティ運営、教育にも取り組む

日本企業を出資者としたファンドを通して、日米のスタートアップ企業や大企業を繋ぐことには価値があるだろう。ただ、そういう2国間をブリッジする役割よりも、宮田氏はもう少し大きな構図の中で自分や自身のVCが果たすべき役割を見据えているようだ。アメリカでVCのモデルが変化しつつあることと呼応して、設立2年になるScrum Venturesでは新しい取り組みを始めているという。

もともとVCの役割として、単に資金を提供するだけでなく、「バリュー・アッド」(value add)と、この業界の人たちが呼ぶ付加価値の提供が重要だ。お金は今やコモディティで、むしろ良いアイデアや技術、チーム、成功しそうに見えるプロダクトのほうが希少。男女関係と同じで、VCと起業家というのは相手を選んでもいるが、選ばれる関係でもある。イケてる起業家に選んでもらえるVCであるためには、かつては、ビズデブやエンジニアリング、人材採用、PRなどでスタートアップを手助けすることが重要だった。これらに加えて、今後はインキュベーションやコミュニティ運営、教育、データベースの提供といったこともカギとなっていくだろうと宮田氏は言う。

インキュベーションやコミュニティというのは、シードアクセラレーターの先駆けとなったY Combinatorのモデルがうまく行っているように見える。最近だと投資済みのポートフォリオ企業以外の超アーリーステージの起業家もコミュニティに巻き込むスタイルも増えていて、日本だとIncubate Fundが主催し、多くのVCが参加する合同合宿のIncubate Campや、East Venturesなどが若い起業家予備軍やVC予備軍を惹きつけて大きなコミュニティを形成している例がある。

Scrum Venturesでもインキュベーションに力を入れていくといい、インキュベーション案件1号として、「#LYVE」(ハッシュ・ライブ)という動画メディアに投資している。#LYVEは元TheBridgeのライターだった福家隆氏が始めたメディアで、30〜60秒程度でシリコンバレーのサービスの体験動画、イベント紹介動画、インタビュー動画などを日本向けに提供していく。中期的には他言語化してアジアを繋ぐような動画メディアに育てる構想だそうだ。

若手の教育にも力を入れるそうだ。

「これまでにも実はScrum Venturesでベンチャーキャピタリストとなるためのアソシエート教育をやってきています。ミニマム3カ月で即戦力というのを目指して、9カ月は実地でOJTということを3人くらいを対象に内部でやってきました。これをテンプレ化して企業向け、大学生向けとして外部化していきます。今はいろんな国の政府と話をしています」

このテンプレの元になっているのは、シンガポール国立大学からの学生が、スタンフォードとの交換プログラムでシリコンバレーにやってきたときに彼ら向けに作ったプログラムなのだという。

「ベンチャーキャピタリストになるというのは企業評価ができるということ。そのブートキャンプをやりたいんですよね。Scrum Venturesに来たシンガポール人は、1年間ですごく伸びました。ちゃんとした教育を受けてる人たちは、あっという間に企業評価ができるようになる。今どきのネットビジネスって、能力が高ければ10代や20代でもできる」

「私はいま42歳です。これから時代が根本的に変わると思います。英語とプログラミングができたら世界で勝負ができるんです。だから自分たちが持ってるナレッジやリソースを使って、若者たちに武器を与えたいんです。いまシリコンバレーで活躍してるのはインド人と中国人ですが、ほかのアジア人にも活躍してほしいと思っています」