シンギュラリティに反論する: それはテクノロジの議論の仮装をした宗教だ

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Ray Kurzweilのシンギュラリティ(Singularity)の予言にはすごく違和感を感じたので、以前はそれを批判する記事を本誌のために書こうとしたこともある。シンギュラリティを主張する理論は、テクノロジはその指数関数的な進歩によって、数十年後には想像を絶するほどの高能力に達し、それによって人間とその知覚・感覚、さらに現実が抜本的に変わる、と言う。それは別名、ナードの携挙(Rapture of the Nerds)*とも呼ばれる〔*: 仮訳: コンピュータマニアたちの天国〕。

その記事は結局書かなかったが、それは、いまいましいことに、技術の進歩に関するKurzweilのこれまでの予言がそれほどひどく間違ってはいないからだった。それらはとても強気で、超楽観的で、成長カーブは大げさだが、カーブの形そのものはそんなに荒唐無稽ではない。違和感は感じるけど、予言の内容そのものは、平凡な預言者のそれに比べると、何か感じさせるものがある。

しかし、それではなぜ、シンギュラリティには違和感を覚えるのか?

最大の理由はそれが、技術的理論に仮装した神学的信仰、と思えるからだ。それには、それ自身の有名な‘科学史’もある。今や伝説の数学者/物理学者John von Neumannが発明し、偉大なるSF作家Vernor Vingeが世に広めた。ここで<科学史>をかっこで囲むのは、それがあくまでも信仰の範疇に属するからだ。

確かに今は、テクノロジが指数関数的に進歩している。ムーアの法則は鈍化したとはいえ、今後のコンピュータ化の進展によって、テクノロジ以外の分野も同様に進歩していくだろう。

しかしシンギュラリティの理論は、ムーアの法則のような指数関数的成長が、別の新しい、(彼らにとって都合よいことに)未知の、パラダイムに取って代わられる、と主張する。“古いパラダイムがその必然的限界に近づいたとき新しパラダイムの支配が始まる”、とKurzweilは述べている。過去にもそういうことは何度も起きている、という彼の主張は認めるにしても、しかしいずれにしてもそれは、現状では信仰や信条でしかない。

その、おもしろくて、しかも深さもある主張によると、神の降臨は未来においてもないけれども、われわれ人間自身が必然的に神になるのだ。それは多くの人の脳と心を刺激する、中身の濃い考えだ。人間のすべての知覚や感覚に神性がある、とする考え方は、ぼくも嫌いではない。それは、真理かもしれない! しかしシンギュラリティはまことしやかな宗教であり、信仰の産物ではあっても科学ではない。そう見なすべきだ。

シンギュラリティ説の賛同者の多くが、それが自分たちが生きている今の時代に起こり、彼ら自身が天国に携挙される、と信じているのも、偶然ではない。宗教には、死の恐怖を和らげ死後の生を約束するものが多い。しかしシンギュラリティは、いとも簡単に、人が永遠に生きられると約束する初めての宗教だ。しかもそのために個人的な犠牲や、食事の制限は課せられない。このおいしい勧誘を断るのは、むずかしい。

シンギュラリティという宗教は、天使と悪魔も用意している。どちらも、自分で自分を強化する人工知能だ。半神半人もいて、それは強大なコンピュータに脳神経を直接接続した超人だ。だから、このような、まことしやかなSFと古代宗教を融合させるテーマは、すごくおもしろいことはおもしろい。実現してほしい、とすら思う! これに比べると、そのほかの未来論はどれも、退屈だ。

しかし同時にそれには、どの宗教にも共通する欠点がある。信仰を優先するのあまり、現実をないがしろにしている。この場合はとくに、その機会費用が大きい。シンギュラリティを信仰すると、貧困や格差、不正義、気候変動などの社会的現実的困難が、どうでもよくなる。でも心配は要らない。その信仰によると、テクノロジの神代が訪れれば、これらの問題のすべてを、われわれの並外れた優秀性が、野菜にたかる小さな害虫のように駆除してしまうだろう。

シンギュラリティを信ずる者と議論しても無駄だ、とぼくは思う。彼らが必ずしも間違っているとは思わないが、ぼくの問題は、必ずしも正しいとも思えないことだ。でもぼくは彼らに、「逆パスカルの賭け」のようなものを当てはめるのがふさわしい、と思う。あなたがシンギュラリティを信じているとしても、それは実際には起きないと思って生きるのがベストである。実際に起きたら、あなたがやってることは無意味になるかもしれない。そしてもし起きなかったら、あなたがやってることは、この、あなたが期待しなかった限界と制約の多い世界で、あらゆる意味と意義を持ちうるだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。