エンジニアVC誕生、始動した500 Startups Japanの日本人パートナーは元野村證券のハッカー

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シリコンバレーの著名アクセラレーター「500 Startups」が36億円規模(30Mドル)のファンドで日本で投資活動を本格化するとお伝えしたのは9月のことだ。そのとき、元起業家でDeNA投資部門のVCだったジェームズ・ライニー(James Riney)氏のほかに、もう1人日本人パートナーがいると書いた。その彼が今日、正式に500 Startups Japanのパートナーに就任したことを発表した。

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500 Startups Japanのパートナーに就任したジェームズ・ライニー(James Riney)氏と澤山陽平氏

500 Startups Japanのパートナーに就任した澤山陽平氏は、この11月まで野村證券でベンチャー企業の調査を担当していた。野村證券の未上場企業調査部門である野村リサーチ・アンド・アドバイザリーで副主任研究員として、スタートアップ界隈のイベントやミートアップで活動していたから知っている人も多いことだろう。野村在籍期間中の3年10カ月の間にITセクター担当として、約150本のレポートを執筆し、計9件のIPOに関わったという。関わったIPO案件は、アライドアーキテクツ、みんなのウェディング、ディー・エル・イー、フリークアウト、弁護士ドットコム、レアジョブ、VOYAGE GROUP、ロックオン、Gunosy、AppBankと、アドテクやEdTech、ビッグデータ解析など多ジャンルにわたる。

150本ほど書いたという「レポート」というのは、経営者へのインタビューを通して会社や事業の内容や、その将来性を8〜20ページでまとめる仕事。野村グループ内で、「IT系スタートアップ→金融」という橋渡しをしていたことになる。「例えばアドテクのことなんて、金融側の人からしたら良く分からないわけです。バナー広告とどう違うの? という感じ」(澤山氏)なのだそうだ。もちろんアドテクは証券市場をお手本として発展してきていたので、金融関係者なら説明すれば分かるのだろうけど、ベンチャーやスタートアップは規模が小さい。アンテナ役として澤山氏のような「通訳者」が必要だということだ。

澤山氏の経歴はちょっとユニークで、彼が通訳できるのは、ITと金融の間だけじゃない。もともとは研究者タイプで、東京大学理科2類在学時代はバイオ関連を志していた。

「大学に入ったときから研究室に遊びに行ってたんですが、そこで気付いたのはバイオは時間がかかるということ。実験でなんかやったらすぐ何十時間待ち、とかがあるんですね。それを見てバイオ・インフォマティクスに関心が移って。だんだんとITそのものに傾倒していき、シミュレーションをやるようになったんです。大学を終えて、東大の大学院で医学部に受かっていたんですけど、そちらではなく原子力のシミュレーションのほうへ行きました。2007年4月のことです。まだ原子力ルネッサンスといわれて東芝も日立も勢いがあった頃ですね」

澤山氏はTechCrunch Japan主催のハッカソンに過去2度参加してくれたことのあるハッカーでもある。

「高校生のころは、Windows 98でネットサーフィンとチャットをしていたんですが、その頃に古本屋で見つけたJavaの本でプログラミングを始めました」

そんな彼は「趣味はプログラミング」だといい、Javaのほかに使える言語として、C、C++、FORTRAN、PHP、Ruby、Objective-C、Scalaなどを挙げる。2014年のTechCrunch Tokyo Hackathonで入賞したクラウドファンディングのウォッチ系サービス「CFTraq」は実はいまも動いているが、これはRuby on Railsで動いているそうだ。手を動かして何かを作るのも好きなのだといい、先日はミニ四駆に小型カメラを搭載してVR動画を見ながらコースを走れるなんていうガジェットを自作していたりもした。

理系の修士号を持ち、コードも読み書きすることから、エンジニアと深いところまで話しができるのがVCとしての自分の強みと澤山氏。日本には比較的数の少ない「ハッカーとしてのエンジニアVC」が誕生したと言えそうだ。もともと関心のあった領域であるバイオ関連のベンチャーも広く動向をウォッチしているようだ。

野村證券以前に澤山氏は、JPモルガン証券の投資銀行部門に約3年間勤務し、大手企業に対するM&A戦略の提案や実施時のアドバイザリー業務、資金調達を始めとするコーポレートファイナンス全般を担当していたそう。だから企業規模として大きいところも小さいところも金融を軸足に幅広く見てきたことが強みだという。スタートアップ関連でも「野村證券時代はシードからレイターまで全部みていました。VCだとレイヤー別になりがちですが、調査なので全部みるんです。まだアプリだけで会社も設立していない超シード期の起業家にも会っていました」(澤山氏)という。4年弱で交換した名刺の数は3000枚ほどになったというから、これを読んでいる人の中にも澤山氏に会ったことのある人が少なくないことだろう。

500 Startups Japanで日米を繋ぐ

金融とテクノロジーをバックグラウンドに持つ澤山氏だが、500 Startups Japanのパートナーとして活動していくにあたっては、もう1人のパートナーであるジェームズ・ライニー氏と同じ立場だ。

「(500 Startups Japanは)日米の架け橋になっていけると考えています。2人ともバイリンガルでバイカルチャー。日本もアメリカも、どちらも分かっているというのは、なかなかいません。日米を繋ぐことを求めている人は、日本にもアメリカもいます。例えば、ニューヨークに行ったときにEdTechのKnewtonに会いに行ったんですね。いきなりinfo宛にメールを投げて。彼らは教育関連スタートアップですけど、日本の学研やベネッセ、リクルート、そしてEdTechスタートアップが何をしているかって全然知らないわけです。それで説明したり日本に来た時に色々な人に紹介したりしたんですが、その後もろもろ経て、今では国内で2社と事業提携している。海外から見ると日本はブラックボックスなんですよ」

500 Startups Japanのパートナーの2人は「アメリカを良く知る日本人」と「日本を良く知るアメリカ人」の組み合わせだ。澤山氏いわく、「ジェームズと私は、もともと2人ともJPモルガン出身という繋がりがあるのですが、色んな意味で相互補完関係なんです。ジェームズはビジネスとマーケティング、私は技術の理解とファイナンス。ジェームズには起業家経験があって、一方私は大企業にいたという違いがあります」。

そんな2人は500 Startupsファミリーのメンバーとして日本を拠点に活動する。現在、500 Startupsのメンバーは100人ほどいて、このうち約20人がパートナーだそうだ。過去5年間で500 Startupsは3号ファンドまで組成し、約50カ国で1500社以上に投資している。成功事例としては、GrabTaxiCredit KarmaTwilioなどのユニコーンや、MakerBotWildfireVikiSunriseSimpleといった大型M&Aエグジットが挙げられる。

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