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アプリ開発のNagisaがiOS事業を終了、生々しいその経緯を明らかに

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10月にアップルが開発者アカウントを停止し、App Store上から自社アプリが一斉に削除されたNagisa。業界には様々なウワサが錯綜し、それに対してのアナウンスもしていた同社だが、12月11日には自社で提供するiOSアプリ事業のサービスを終了すると正式に発表。今後は受託制作、事業提携・協業等でiOSアプリを提供するほか、事業譲渡でのサービス提供の道を模索するとした。加えて、開発者アカウントの復旧に向けてアップルとは協議を継続するとしている。

この11日の発表だけでは、結局のところNagisaはなぜアカウントの停止措置を受けたのかという詳細は分からないままだった。そのため、これまでに同社が否定していた話も含めて「マンガアプリ上に性的描写があったのではないか」「SNSの運用監視を怠ったのではないか」といったウワサが流れた。だが14日、Nagisaはその経緯について生々しい内容を含めた発表を行っている。

性的描写や広告SDK、審査時のコンテンツ表示が原因

同社の発表によるとアカウント停止の理由は、(1)一般漫画作品の一部にある性的描写での規約違反、(2)既存アプリのアップデート未対応による広告SDKでの規約違反、(3)コンテンツの開発環境と本番環境の出し分け——の3点だ。

まずマンガの性描写について。アップルは以前から表現規制に厳しいという評判があったが(以前だと、マンガ内に描かれたMacbookのアップルマークが問題になったなんて話もある)、規約こそ開示しないものの、性描写についても日本の商業誌以上の規制を行っている。

Nagisaいわく「米アップル社からのご指摘を受け、作品の掲載取り下げ、及び性的描写の該当箇所の白塗り修正を順次進めておりました(中略)米アップル社へ複数回に渡る確認を行っておりましたが、十分な見解を得られることができず(中略)修正作業人員の不足から、迅速な対応が行えていたとは申し上げられない状況でした」という状況だったのだという。同社はアダルト作品については掲載していないとアナウンスしているが、アップルの(明確にしていない)規約上はたとえ一般誌のマンガであってもアウトだったということだろう。

また同社は過去3年間で100個以上のアプリを提供しているが、その広告実装に問題があったというのが2つめの話だ。同社も「具体的なアプリ名について米アップルからのご指摘はなく、いくつかのアプリで規約違反があるという報告をいただいておりました。」としている。僕も数社のアプリ開発者に話を聞いたところ、アップルでは具体的に問題箇所を指摘したり、修正の確認をしたりということはないそうだ。そのため、開発者側で「修正したつもり」であっても、アップル側から見ればペナルティが重なっていったということがあるということだろう。

3つめに挙げた「コンテンツの開発環境と本番環境の出し分け」だが、Nagisaの説明によると「これまでマンガアプリの審査に3ヶ月以上を要したことがあり、800作以上にのぼる作品のチェックによる審査の遅延を考慮に入れた」ため、審査中のアプリの対応は、一部コンテンツのみが公開されている開発環境を利用していたということだ。つまり、審査をスムーズにするためだというのが言い分だが、それをアップル側が問題視したというわけだ。

これに関連しては「開発者あるある」とでも言うべき話を聞いた。例えばカードゲームアプリなんかであれば、規約上アウトもしくはグレーなコンテンツ(例えば性的描写そのものでなくても、きわどいイラストなど)はアプリ審査中には表示しないようにしておき、審査後に改めて表示するといったことは、アプリ開発者の間では時々聞くような話なのだそう。Nagisaがどんなコンテンツを表示しなかったのかは明らかにされなかったが、「すべてを開示していない」ということ自体が指摘すべきポイントになったことは間違いない。

ユーザーに対して謝罪

僕は経緯を説明したリリースが公開されるのと前後してNagisaに問い合わせを行っているが、リリースにも「これまで長くご愛用してくださったユーザーの皆様にはご迷惑をおかけいたしまして大変申し訳ございませんが、何卒ご理解いただきますようお願い申し上げます。」とあるように、同社からはユーザーに対する謝罪のコメントを得た。

アップルはアプリビジネスの個別具体例に関しては関して一切アナウンスを行っていないし、アプリやアカウントが停止措置を受けた際、アプリ開発サイドがここまで詳細な説明をするのは異例のケースだ。詳細を公開したのは、アプリのアップデートができないユーザーなどへの謝罪という観点が大きいのではないだろうか。

ただしそもそも論で言えば、アップルという企業のプラットフォームに乗ってビジネスをする以上、彼らが正しかろうが、そうでなかろうが、ルールはルールだということだ。プラットフォーマーの意向に沿わなければ、いつでも、誰でも、こういった事態が起こりうるということなのだろう。