グロービスが総額160億円の5号ファンドを組成、年金基金の出資は「VCの悲願」

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gcpちょうど1年前の年始、僕はインキュベイトファンドが組成した110億円の3号ファンドについて記事にしたのだけれども、2016年も年始に大型のファンド組成のニュースがあった。

ベンチャーキャピタルのグロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)は1月4日付けで第5号となる新ファンド「Globis Fund V, L.P.、グロービス5号ファンド投資事業有限責任組合」を組成した。一次募集(ファーストクローズ)は約140億円。出資するのは三井住友信託銀行、日本政策投資銀行、大同生命保険、マスミューチュアル生命保険株のほか、国内大手企業年金基金を含む国内外の大手機関投資家。ファンド総額は160億円の予定だが、すでにそれ以上の出資要望があるそうで、3月末の最終募集(ファイナルクローズ)を前に、すでに募集が完了している状況だという。

GCPでは1996年に1号ファンド(5億4000万円)を組成。1999年に2号ファンド(200億円)、2006年に3号ファンド(180億円)、2013年に4号ファンド(115億円)を組成。累計120社以上への投資を行っている。直近の投資先上場企業としてはピクスタやイード、カヤック、ブイキューブなど、TechCrunchの読者もよく知るIT企業が多い。

投資領域は「6 Tech」ほか、投資額は1社最大20億円超に

5号ファンドで投資対象とするのは、「6 Tech」(FinTech、HealthcareTech、EduTech、HomeTech、AutoTech、FrontierTechの総称)のほか、シェアエコノミーやAR/VR、IoT、AIなど。GCPパートナーの高宮慎一氏いわく、「IT(Information Technology:情報技術)&IT(Industry Transformation:産業の変革)の領域。2016年に『来る』という領域かどうかに関わらず、ファンドが終了する10年先までを見据えた投資を行う」とのことだ。

投資対象とするのはシードマネーを調達済みで、シリーズA以降の調達を検討しているアーリーステージのスタートアップが中心。GCPというとレイターステージの資金調達を手がける印象が強かったのだけれども、よくよく考えてみると、メルカリスマートニュースなどもアーリーステージでの投資だ。内訳としては「ざっくり45%がアーリーステージ、35%がミドルステージ、残りがレイターステージ」(高宮氏)なのだそう。具体的には1社あたり数億円〜最大で20億円超の出資を行う予定だという。

昨日はシード特化のVCであるSkyland Venturesの新ファンドのニュースがあった。その中でパートナーの木下慶彦氏が自身の投資スタンスについて、進捗報告のために起業家の時間を取るようなことをしないためにも「ノーハンズオン」だと語っていたが、GCPのスタンスは、バリバリの「ハンズオン」なのだそう。もちろん投資対象のステージも違うし、事業内容によって出資先ごとにVCが支援するべき内容は異なるので、どちらが正しいという話ではない。

GCPのハンズオンの中で特徴的なのは、3R、すなわちIR、PR、HRの業務支援だという。投資担当以外のキャピタリストや親会社であるグロービスのスタッフ、社外のパートナーなどと連携して各種のリソースを提供するのだそうだ。例えば元証券会社の引受担当者がIRまわりのコンサルティングをしたり、グロービスの広報チームがPRの支援をしたりするほか、GCPが投資先企業の人材ニーズをとりまとめてヘッドハンターに共有。一括で広く人材の確保を進めるといったこともしているそうだ。

年金基金からの出資は「VCの悲願」

ファンド組成のニュースはこれまでいくつもあったが、少し珍しいのは、「企業年金基金などの機関投資家が出資している」という内容だ。高宮氏はこれについて、「ある意味では国内VC、ひいてはベンチャー業界の悲願ではないか」と語る。

それはどういう意味か? 100億円超のファンドを組成するとなると出資者1組織ごとに10億円ほどの額を集める必要が出てくる。かといって10億円もの資金を出せるような組織なんてそうそうはない。そこで銀行や保険会社、政府系金融機関などの機関投資家からの出資を仰ぐ必要があるわけだ。そんな機関投資家の中でも、年金基金といえばリスクに対して非常にセンシティブな運用を行ってきたところだ。例えば2015年には、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が年金の運用において、四半期での損失を出したと批判を浴びた。もちろん短期的に見れば8兆円近い損失という大きな話だ。だがたった1つの四半期の損失という見方もできる。長期的に見ればGPIFは高い運用成績を上げており、しかもベンチマーク(運用成果を測定し、評価するための基準)と比較しても良い結果となっている。

しかしそういったネガティブな反応を意識する以上、年金の運用はセンシティブにならざるを得ないというのは致し方ないところ。とはいえ年金基金は数千億円を超えるような運用総額を誇っているわけだし、代替資産(株式や債権以外の資産。不動産もVCへの出資もこれにあたる)に長期的視点で腰をすえて投資するプレーヤーであるという意味でも、機関投資家の中でも大きな存在だ。米国においては、年金基金からの資金がVC業界の発展を支えてきた側面が大きいとも聞く。

そんな背景がある中で年金の資金が入ることについて、高宮氏は「もちろん我々の成果が評価されたということや、そのIRを行った結果ではある」とした上で、「それ以上に、ベンチャーというハイリスクハイリターンな領域に、年金の大きなお金が流れ始めたということが大きい。GCPだけの話ではなく、VC業界、ベンチャー業界全体に意味があること」(高宮氏)と説明する。

2015年3月に発表されたJapan Venture Researchのレポートでは、スタートアップの調達額は増加(一方でその社数は減少)というトレンドが紹介されているが、米国と比較すれば国内VCの投資額はまだまだ小さい(2012年度で米国VCの投資額は国内VCの約24倍という数字もある。リンク先はベンチャーユナイテッド チーフベンチャーキャピタリストである丸山聡氏のブログ)。今回の発表は「GCPが大きなファンドを1つ作った」というだけ(もちろん、「だけ」といっても大きなファンドができることは国内のスタートアップコミュニティにとっては大きな意味がある)の話だが、背景を読み解けば「国内VCに流れるお金の変化」という大きな兆しの見える話とも言えそうだ。

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