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お金のデザイン、いよいよロボアドバイザーによる資産運用「THEO」の本サービスを開始

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製品を発表する、お金のデザイン取締役会長の谷家衛氏

注目されるFintech関連だが、中でも2015年から急速に注目されているのが「ロボアドバイザー」を提供するスタートアップ企業のウェルスナビお金のデザインだ。これまで機関投資家や富裕層にしか利用できなかったグローバル分散投資による資産運用サービスをネットを通して民主化するサービスで、先行する米国ではWealthfrontBettermentといったスタートアップ企業をはじめとして、すでに200社以上がロボアドバイザー関連サービスを提供している。

そんな中、日本で注目されるロボアドバイザー関連の1社である「お金のデザイン」が今日、一般ユーザー向けサービス「THEO」(テオ)を開始した。お金のデザインは、2013年から招待ユーザー70人を対象に限定サービスを続けていたが、今日から誰でも最小10万円から、運用手数料1%でグローバル分散投資の資産運用を始めることができる。

「お金持ちの老人」として日本がやるべきこと

東京・恵比寿で記者会見をした同社会長の谷家衛氏は冒頭、2016年にTHEOのようなロボアドバイザーサービスを本格展開する意義を説明。「(個人が)円で資産を持っておくのがいちばん良いと言えなくなってきた」と切り出した。

photo01ソロモン・ブラザーズ出身で独立系ファンドのあすかアセットの創設やライフネット生命保険創設に携わってきた谷家氏だが、現在ロボアドバイザーと呼ばれているサービス自体を着想したのは2007年のことだそう。ただ、当時はデフレで円高だったことから、円での元本を守るということを考えると時期尚早と考えていたという。

今でこそ政府主導で「貯蓄から投資へ」と言われているが、デフレかつ円高の状況では円の相対的価値が高まるため、円で資産を持つのは正解だった。谷家氏は「これまで日本人は常にいちばん賢い投資をしてきた」という。過去を振り返ってみれば、金利が高いときにワリコーやワリチョーといった金融商品を行列してまで買ったのは個人だったし、不動産バブルのときに、いちばん不動産を売ったのも個人だった、と。ここ20年くらい個人資産に占める現金・預金の割合が先進諸国に対して著しく高いことの理由として、日本人はリスクを取らないからだとか、金融リテラシーが低いからだと言われてきたが、そうではないということだ。

2015年時点で日本の個人資産1700兆円の約半分は円による預金だが、これは今まで正解だった。それが今変わりつつある。その背景にあるのは円安やインフレといった中長期のトレンド、年金問題や人口減少に伴う低成長という日本が置かれた状況にあると谷家氏は指摘する。

「国内で成長戦略を考えるのは無理がある。一方、日本はすごくお金持ちの国です。今でも対外純資産は世界一の国です。だから全体としては、『日本人はお金持ちの老人』と似た立場にある」(谷家氏)

世界中のお金持ちの老人たちがどうやって資産を運用してきたかというと、プライベートバンクを通じて、世界中に富を分散するということをしてきた。自国通貨が暴落するかもしれないし、不動産価値が暴落するかもしれない。谷家氏は最近はお金の流量が莫大になって投機的な資金がグローバルに動きまわる結果、ファンダメンタルズを見てももはや各種資産の値動きは読めないと言う。そうしたリスクがある中で、何が起こっても良いように資産を分散して持っておく。老人のように日本という国は低成長しかしないかもしれないが、成長が期待できる国や地域に投資することで世界経済に貢献ができるし、資産を保全・運用する日本の個人のためにもなるという。

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グローバル分散投資で世界経済の成長に連動した資産運用ができるという(出展:お金のデザインのWebサイト)

民主化される資産運用サービス

資産運用の全部、または大半をアルゴリズムで置き換えるという「ロボ」アドバイザーという言葉には米国ではチープで否定的なニュアンスもあるようだ。しかし、ネットやスマホ、クラウドの発達によって可能になったサービスモデルには違いないし、一部の富裕層だけが恩恵を受けいてたサービスが民主化されたという意味では歓迎すべきものだろう。もともと資産家向けのプライベート・バンキングではマネージドアカウントと呼ばれる資産運用をプロに任せられるものもあったが、数億円程度以上の資産がある富裕層向けにすぎなかった。

お金のデザインCOOの北澤直氏によれば、技術的ハードルが下がったことが、ロボアドバイザーというサービス台頭の背景にある。すでに2015年末時点で米国では600億ドルの運用残高となっているが、A.T.Kearneyは2020年に2.2兆ドルに増えるとしている

もう1つ、過去10年ほどの間にETFが6000種類にも増えて、あらゆる国の資産に少額でも投資できるようになったことも、ロボアドバイザーのようなサービスが台頭する背景にあると北澤COOは指摘する。

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ユーザー視点を打ち出したロボアドバイザー

THEOは多くのロボアドバイザー同様に数個の質問に回答すると自動的にポートフォリオを作成して、実際の運用まで行ってくれるサービスだ。投資対象となるのは90カ国、62通貨、約1万1000の銘柄。これらを含む6000本のETFの中から35〜45本のETFを組み合わせたプランをユーザーの嗜好性に応じて提示してくれる。プランを過去に適用していた場合の利回りや将来の資産推移シミューレーションも同時に表示する。

具体的にはTHEOでは9つの質問に回答する。年齢や投資経験、リスクに対する考え方などだ。

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このとき各ユーザーに提示されるETFの組み合わせは、1950年代に米国で登場した現代ポートフォリオ理論に端を発する一連の金融工学のモデルに基づくものだ。株式、通貨、債券、不動産、コモディティなどの性質の異なる資産を組み合わせることで、個別資産だけを持つことによるリスクを相殺して、ポートフォリオ全体のリスクを一定範囲で管理するというものだ。

THEOがユニークなのは、ポートフォリオ理論に基づくロボアドバイザーでありながら、ユーザー視点を強く打ち出している点だ。例えば、10年後に住宅購入など大きな出費を考えているというようなケースに対応できるという。この目的のために資産を種別ではなく、「ロングターム・グロース(成長重視)」、「インカム(安定性)」、「インフレヘッジ」の3種類に分類してユーザーに提示。運用益を再投資するか配分を受け取るかなども選択できるし、各資産のリスクの見積もりを後から自分で変更できるという。この辺りは投資理論としては必ずしも正しくない行動なのかもしれないが、ユーザーが何を望むのかを優先している意味でネットっぽいサービスにも思える。過去の利回りシミュレーションにしても、あえて「リーマン・ショック以前の2007年7月から運用していたとしたら」という前提を置くことで見かけの利回りの数字を大きく見せることをしていないという。ここも従来の証券会社の金融商品の見せ方とずいぶん違うように思える。

実際にポートフォリオに組み込むETFは、過去のパフォーマンスがインデックスに密に連動していること、手数料が安いこと、そして流動性が高いことなどで選んでいるという。

プランを確定したら、実際に申し込みをして運用開始する。ポートフォリオは時間とともに各資産の評価額が変動して比率が崩れてくる。これを適宜調整する、いわゆる「リバランシング」は毎月THEO側で自動で行ってくれるほか、資産比率自体を市況に合わせて自動的に調整する定期的な「リアロケーション」も、THEOでは自動化しているという。

すでに国内でもロボアドバイザーとしてはエイト証券が2015年5月に「8 Now!」を開始している例があるほか、ウェルスナビも招待制サービスを2016年1月に開始している。また、2015年11月末にはマネックスグループとクレディセゾン、米バンガード・グループが新会社を設立し、2016年4月にもロボアドバイザーサービスを開始するとしている

というように新サービスや会社が立ち上がる日本のロボアドバイザー市場だが、いくつか課題もありそうだ。1つはロボアドバイザーの提供者や金融関係者と、想定ユーザーの金融リテラシーに大きなギャップがある可能性だ。例えばいまGPIFの評価損が「問題化」しているが、この騒ぎの原因は一部のメディアの誇張によるものだろうか、それとも日本の平均的個人の感覚なのだろうか? もし後者であればロボアドバイザーの普及には、大規模なマーケティングや相談窓口の設置などが必要となって説明コストとして大きくのしかかってくるのではないか。スタートアップとして見た場合、手数料1%と薄利であることから運用残高が数百億円とならないことにはビジネスの立ち上げとして厳しいということもある。前出の北澤COOは、総計18億円と日本のスタートアップとしては十分な資金調達ができているとしながらも、「この1年はロボアドバイザーにとっても会社(お金のデザイン)にとっても正念場」と話している。