機械学習は、どのように実際のビジネスで活用されているのか

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Googleが開発者向けに新たな機械学習プラットフォームをローンチ

【編集部注】この記事の著者、Lukas Biewaldはクラウドソーシングで人間によるデータの収集、クレンジング、ラベル付けなどをするCrowdFlowerのCEOだ。

機械学習がハイプ・カーブの頂点にあることに、疑問の余地はない。もちろん、それに対する反発もすでに相当なものだ。「機械学習は10代のセックスのようなもの。みんな話題にするが、だれも実際にやったことがない」という古いジョークを、先週だけでも20回くらい聞いただろうか。

だが機械学習はすでに、ビジネスに大きな変革をもたらしている。機械学習を実世界で活用するための膨大な数のプロジェクトの手助けをする会社の経営者である私からしてみれば、それは明らかだ。

変革が起きているのは、「Siri」や「Amazon Echo」などの未来風な製品上だけではない。機械学習と言われて私たちが思いつくような、巨額のR&D予算をもつGoogleやMicrosoftなどの企業に限ったことでもない。現実には、Fortune 500の企業のほとんどが、すでに機械学習によって経営を効率化させ、利益を増やしていると断言してもいい。

では、どのようなところで機械学習が使われているのだろうか?毎日のように私たちの生活をより良いものにしてくれる、ビジネスの裏側に隠されたアプリケーションをいくつか紹介しよう。

ユーザー生成コンテンツをより価値のあるものにする

平均してみれば、ユーザー生成コンテンツ(UGC)は粗悪なものだらけだ。あなたが考えるより、実際にはもっとひどい。誤字や下品な言葉だらけのこともあれば、あからさまに間違った情報だらけということもある。だが機械学習は、最良のUGCと最悪なUGCを特定し、悪いものをつまみ出して、良いものを浮かび上がらせることができる。人間がUGCの内容に1つ1つタグ付けする必要はない。

しばらく前には、スパムメールについても似たようなことが起きていた。かつてのスパムメールの厄介さを覚えているだろうか?機械学習はスパムを特定し、言ってみれば根絶したようなものだ。そのおかげで、毎朝メールボックスに横たわるスパムをみることは最近めっきり無くなった。近い将来、UGCに関してもそれが起こると期待してほしい。

Pinterestは機械学習を使って、あなたがもっと興味を持つようなコンテンツを表示してくれる。機械学習を活用して、Yelpはユーザーがアップロードした写真をフィルターし、NextDoorはメッセージボード上のコンテンツをカテゴリー別に分類する。Disqusがスパムコメントを取り除くことを可能にしているのも、機械学習だ。

お目当ての製品をより早く見つける

当然のことながら、検索サイトを運営するGoogleは、つねに先頭に立って機械学習のリサーチャーを雇ってきた。それどころか、先日Googleは同社の検索部門のリーダーに人工知能のエキスパートを指名したのだ。ただ、巨大なデータベースにインデックスを付けて、キーワードにマッチする結果を引っ張り出す技術自体は1970年代から存在していた。Googleが他と違うのは、最も関連性の高いものが何かを理解しているということで、これは機械学習によって実現されている。

だが、スマートな検索結果が必要なのはGoogleだけではない。Home Depotは、巨大な在庫の中から、どのバスタブが顧客のへんてこな風呂場の形に合うのかを表示する必要がある。Appleはapp storeの中から、ユーザーの検索に対して関連度の高いアプリを表示しなければならない。ユーザーが特定の納税申告用紙に記入する際に、Intuitはそれに適したヘルプページを表示してあげる必要がある。

LystTrunk Archiveなどの、成功しているeコマースのスタートアップ企業たちは、質の高いコンテンツをユーザーに提供するために機械学習を活用している。Rich RelevanceEdgecaseといった他のスタートアップも、機械学習ストラテジーを導入し、顧客が製品を眺める際に機械学習の恩恵を与えている。

顧客にエンゲージする

最近のコンタクトフォームは小さくなったと感じる人もいるかもしれない。顧客とのエンゲージングは、そのプロセスを効率化するために機械学習が活躍したフィールドの1つだ。問い合わせの内容をユーザーに選択させ、数えきれないほどのフォームに記入させる代わりに、機械学習が顧客からの要求の主旨を理解して、担当部署にフォームを届けている。

一見すると小さなことのように思えるが、問い合わせ内容を分類して、所定の部署に届けるという作業は、大企業にとっては非常に大きなコスト負担になりかねない。セールスに関する問い合わせは営業部門に、苦情はカスタマーサービスに届けることで、企業は時間とお金を大きく節約することができる。それと同時に、問題が見つかればそれを優先事項として分類し、迅速な解決につなげることも可能にしているのだ。

消費者行動を理解する

機械学習はセンチメント分析においても、その威力を発揮する。マーケティングに通じてない人からすれば、消費者からの声は実体のないものに感じるかもしれないが、実際にはそれは経営判断を大きく左右するものだ。

例えば映画のプロダクションが、夏の大型作品のトレーラーを発表するとしよう。それに際して彼らは、ターゲット顧客の声をモニタリングし、何が彼らに響いたのかを把握することができる。そして、顧客の反応にあわせて広告を修正することで、ヒット作を生み出すことを可能にする。

ほかの例も紹介しよう。先日、ゲーム会社が人気ゲームタイトルの最新作を発表した。だが彼らは、ファンが待ち望んでいたゲームモードを、その新作品に含めていなかった。それに対して、ファンたちはSNSで新作への不満をもらしたのだが、ゲーム会社はそれをモニタリングすることで顧客の反応を理解することができた。そこで彼らは新作のリリース日を延長し、待望されていたゲームモードも追加する結果となった。新製品に対して中傷していた人々を、応援者に変えたのだ。

何百ものツイートから、顧客が発するかすかなシグナルをどうやって抽出したのだろう?機械学習を使ったのだ。そして機械学習によるソーシャルメディア・リスニングは、ここ数年のうちにビジネスの標準的なプロセスとしての地位を確立した。

次のステップは?

機械学習のアルゴリズムを扱うのは、少しばかり厄介だ。通常のアルゴリズムは予測可能で、そのアルゴリズムがどうやって動いているのか、ボンネットを開けて確認することができる。一方で機械学習のアルゴリズムは、ある意味では人間のようでもある。ユーザーとしては、「ニューヨーク・タイムズは、なぜあんな変な広告を表示したのだろう」、「なんでAmazonは、こんな滑稽な本をオススメしたのだろう」という疑問に対する答えを欲しがるものだろう。

だが実際には、ニューヨーク・タイムズやAmazonはそれぞれの結果に対して、なぜそのような結果になったのか、もはや理解していない。それは、私たちがなぜディナーにタイ料理を選んだのか、なぜWikipediaを見ているうちに思いもよらなかったページに迷い込んでいるのか、という理由を理解していないのと同じことだ。

ほんの10年前、機械学習のキャリアを積みたければ、就職先に選ぶのはGoogleかYahooくらいしか候補がなかった。だが、今はそうではない。機械学習はいたる所にある。データは以前より一般的になり、アクセスも容易になった。「Microsoft Azure ML」や「IBM Watson」のような新しい製品が、最先端の機械学習アルゴリズムにかかる、セットアップコストと運用コストの両方を引き下げた。

それと同時に、ベンチャーキャピタル各社はWorkDay’s Machine Learning fundBloomberg BetaData Collectiveといったファンドを立ち上げた。これらのファンドは、ありとあらゆる業種の、大きな競争優位を生み出すために機械学習を活用している企業に特化して投資をする。

機械学習についての話題のほとんどは、大衆が興味をもつAIパーソナルアシスタントや、自動運転車に関するものばかりだどちらもクールな取り組みだ!)。しかし、あなたが利用している、ほぼ全てのWebサイトにおいて、機械学習はこっそりと活用されているのだ。ビックカンパニーが機械学習に投資している理由は、それがブームだからでも、それが単に最新鋭の技術だからでもない。彼らが機械学習に投資するのは、それがポジティブなROIを持つからだ。だからこそ、イノベーションは続いていくのだ。

原文

(翻訳:Takuya Kimura)