Google I/O: AndroidのInstant Appsはアプリとウェブページとのギャップを埋める新アプローチ

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モバイルのネーティブ・アプリはいろいろな面でブラウザ・ベースのウェブページよりも優れたユーザー体験を提供できる。しかしユーザーがネーティブ・アプリを利用するためには検索などによってまずその存在を発見し、ダウンロードし、インストールするのを忘れないようにしなければならない。Googleはアプリとユーザーのこうした関係を根本的に見直そうとしている。

今日(米国時間5/18)、Google本社に隣接する野外劇場でスタートした I/O 2016デベロッパー・カンファレンスでGoogleはAndroidアプリを次世代に進化させる道筋を発表した。

Instant Appsはは反応の速いモバイルアプリとそれより遅いウェブアプリとのギャップを埋めるもので、たとえユーザーがモバイルアプリを事前にインストールしていない場合でも、URLをタップするだけでほとんど即座にアプリを起動できる。ただしInstant Appsの普及のペースはゆっくりしたものになりそうだ。

要するに従来の方式ではアプリをダウンロードしてからインストールするという手間がかかる。これには時間も食う。しかしInstant Appsを利用すれば、デベロッパーはアプリを小さなコンパートメントの実行可能ファイルに分割し、数秒でスタートするようにできる。

GoogleのAndroidのエンジニアリング担当副社長、Dave Burkeは私のインタビューに対して「Instant Appsはアプリの将来に対する考え方を全面的に改めるものだ」と語った。Instant Apps開発の動機は、処理が高速なネーティブアプリのユーザー体験をウェブサーフィンの便利さに近づけようとするものだった。Burkeは「ウェブページは短命だ。ユーザーはあるページを読んでしまえば、それきりで戻って来ないのが普通だ。ところが現在のネーティブ・アプリは大きすぎて使い勝手が悪い。ユーザーはごく一部の機能、たとえばそのページの情報しか必要としていないのに、アプリにはすべての機能が詰め込まれがちだ」と語った。

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GoogleのMichael SiliskiとFicus Kirkpatrickが私に説明したように、新しいアプリはブラウザでウェブページを開くのと同じ手軽さでモバイル・アプリを起動させようとするものだ。チームは新アプリのサイズについ調整を繰り返しているところだが、SiliskiとKirkpatrickはInstant Appsのダウンロードは4MB以内となることを期待している。

ユーザーの立場からみると、新しいアプリはこういうことになる。ある都市を初めて車で訪問し、地元の自治体が提供する有料のパーキングメーターを利用しようとしているとしよう。ユーザーはAndroidスマートフォンをパーキングメーターにかざす。すると内蔵のNFCチップが必要な情報を読み取る。ほとんど同時にInstant Appのパーキング・メーターアプリが起動する。ユーザーは自治体のパーキング・メーター・アプリを事前にインストールしておく必要がない(あるいは後でアンインストールする必要もない)。

B&H - Device

Googleのエンジニアの説明によれば、このアプリのポイントは使い勝手をできるかぎりスムーズにすることだ。そもそもスマートフォン自体にログインしているのだからユーザーはGoogle Walletによる支払いができる。またパーキングの利用を終えればユーザーはもうそのアプリを必要としない。「ネーティブ・アプリ化するのが適当なサービスも多い。しかし最初にアプリをインストールしなければならないというのはユーザー体験を大きく損ねている」とSiliskiは説明した。

現在、GoogleはBuzzFeedの協力を得て実験を行っている。Buzzfeed Videoアプリがそれだ。 またB&Hと提携してデベロッパーがこの新方式によるいわば「その場で起動する使い捨て」のアプリを有効に利用する例を示している。

デベロッパーがInstant Appsを開発するためにはそれなりの準備が必要だ。ただしKirkpatrickの説明によれば、これはゼロから新しいくアプリを書き直すようなものではなく、既存のアプリのアップグレード程度の作業量だという。ソースコードはそのまま利用できるし、デベロッパーによってはわずか1日でInstant Appを作れるだろうという(もちろん簡単なアプリの場合)。

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Instant Appsはセキュリティーが保証されたサンドボックス内で作動する。Instant AppsはAndroid Jelly Beanまで後方互換性がある。

BurkeはInstant Appsと現在注目を集めているボットを結びつけるアイディアも持っている。つまりボットのような複雑な処理をする場合でも、ユーザーに大きなアプリを事前にインストールさせる必要なしに、ウェブページを開くのと同じ使い勝手で利用できるようになるという。ただしBurkeは「ボットは言われているほど便利な存在ではない」と言う。必要な情報を得るまでの段取りが非常に面倒で、しかも大量に文章を入力しなければならない場合が多いからだ。それに引き換え、「Instant Appsならダウンロードやインストールといったネガティブな面をボットから取り除くことができる」という。

しかしデベロッパーの作業を介する必要があるため、ユーザーが大量のInstant Appsを見るようになるにはある程度の時間がかかるだろう。現在は限定されたベータ・テスターの協力を得ている段階で、Googleはデベロッパーからのフィードバックを広く求めるために今日の発表を行い、機能の一端を紹介した。Instant Appsのアプリが一般ユーザー向けに登場するのは今年の後半になるという。Googleでは引き続き来年もIntant Applsを利用するデベロッパーの拡大を見込んでいる。

動きの激しいモバイルの世界にあっていささかゆっくりしたペースのようだが、Googleではこの機能の利用に難しい側面があるとしている。「デベロッパー側の作業には相当の変更が予想される。われわれは新機能を正しく使ってもらいたい」とSiliskiは語った。

Googleはこれまでもネーティブ・アプリとウェブページの間のギャップを埋めようと努力してきた。たとえば、Google検索の結果にAndroidおよびiOSのネーティブ・アプリのコンテンツが含まれるようにしたし、アプリをインストールしていなくてもストリーミングが表示されるなどの努力をしている。 しかしInstant Appsは(ダウンロードしてインストールした後に初めて使い始めることができる」というネーティブ・アプリの限界を根本的に打ち破ろうとするものだ。

現在App Storeには膨大な数のアプリが登録され、ユーザーはすでにありったけのスペースをアプリに占領されており、新しいアプリのインストールには消極的になっている。2015年の調査によれば、一般ユーザーはスマートフォンに接する時間の85%をアプリに費やしているということだ。しかしそうしたサードパーティー製アプリのうち、日常的に繰り返し利用されているのはほんのわずかに過ぎない。

ユーザーの状況がこうしたものであるため、デベロッパーにとってはネーティブ・アプリをインストールしてもらうのがますます狭き門になりつつある。正しく利用できれば、Instant Appsはデベロッパーの直面する難問を解決する有力な手段となるだろう。

画像: Jeff Chiu/AP

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+