分身ロボット「OriHime」開発のオリィ研究所、Beyondなどから約2億3000万円を資金調達

次の記事

IMAX、世界に「VR体験センター」を開設へ。独自のVRカメラも開発

小型分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」を開発するオリィ研究所は今日、Beyond Next Venturesリアルテックファンド、個人投資家8人をも引受先とした第三者割当増資により、総額2億2977万円の資金調達を完了したことを発表した

ロボットといっても、産業用ロボットや家庭ロボット、外骨格ロボットなどいろいろな分類があるが、「分身ロボット」というのは、あまりない。OriHimeは「会いたい人に会いに行ける、行きたいところに行ける」をコンセプトとしている。遠隔操作で自由自在に動かせるロボットで、2015年7月から法人向けレンタルサービスを行っている。

ほかのロボットとあまりにコンセプトが違うので説明を聞いても読者はピンと来ないかもしれないが、OriHimeは、もっとも単純化するとネット経由で操作するロボットということになる。自律的に動くわけではないのでロボットと分類して良いのか分からない。むしろリモコンだ。だけど単にリモコンと呼ぶと、OriHimeが切り拓こうとしている新ジャンルを矮小化していることになるだろう。

OriHimeを操作をするのは入院中の患者や、不登校の生徒など、何らかの事情で自ら外出や移動ができない人たちだ。社会生活や家族から孤絶したツラい状態にある人が、授業に出たり、家族とお花見にでかけたり、友人の結婚式に参列するといったことを仮想的に実現できる。行きたい先へOriHimeを物理的に持って行ってもらうことで、操作する人は仮想的に移動先に分身として存在するかのような体験を生み出すことができる。

操作者はOriHimeの手や首の向きをタブレットを使って直感的に動かせる。視覚(カメラ)や聴覚(マイク)があるので、離れた場所にいながら分身ロボットを通して音声による周囲の人との会話が可能だ。授業で質問があるときに挙手したり、ほかの誰かが発言しているときに首をそちら側にむけるなど、まるでその人が本当にOriHimeという上半身だけのロボットに乗り移ってきたかのような存在感を持つというのが、新しい種類のロボットということになる。

ぼくは2年ほど前に創業者の吉藤健太朗氏にOriHimeのデモを見せてもらったことがあるのだけど、確かに小さな上半身だけのロボットに誰かが憑依したような、非常に不思議な感覚を生み出すのに驚いた。「あたかもその人が実際そこにいるように感じられる」という状況を生み出すテクニックは自明ではなくて、例えばわざと顔を金星人のような無表情なものにしているそう。これは能面からヒントを得ていて、黒目もあえて入れていない。

OriHimeの顔の位置にディスプレイを付けて操作者の表情を見せるというアイデアもあり得る。でも、むしろ入院患者というのは、クスリの副作用で髪が抜け落ちていたり、顔色が悪かったりすることが多く、自分を見てほしいとは思っていないことが多いそうだ。

首の回転も本当は360度まわった方が「リモコン」なのだとしたら周囲が見渡せて都合がいい。だけど、わざわざ人間と同程度の自由度に抑えている。これは、例えば入院中の母親が使う仮想ロボットが家庭にあったとき、子どもが午後3時に帰宅したからといって「お〜か〜え〜り〜」とお母さんロボの首が180度も回ってしまうようでは、とても子どもとしても「お母さんだな」と感じることができないからだ。

OriHimeはタブレットで操作するのが基本だが、アイトラッキングシステムを使えば、全身がほぼ動かなくなったALS(筋萎縮症)の患者を絶望の淵から救うこともできる、という。オリィ創業者の吉藤氏によれば、日本だけで1万人いるALS患者の実に7割は、人工呼吸器の装着による延命を選ばないそうだ。筋力が落ちて自力で呼吸ができなくなった時点で死を選んでいる。それは、病苦というのもあるが、より本質的には社会との繋がりが持てなくなることからくる絶望が原因にあるのだという。OriHimeを使えばALS患者が自宅で家族と時間を過ごす、ということを仮想的にできる。さらに、いずれはOriHimeを使って遠隔で仕事をすることで病床にあっても社会参画を続けられるような世界を目指したい―、自ら不登校を経験したことのある吉藤氏はかつて創業の思いをぼくにそう話してくれた。