次のEC事業機会は「食」―三井物産がロシアのミールキットECに出資

次の記事

[重要な追記あり]ビットプロパティー、沖縄のメガソーラーを仮想通貨テクノロジーでトークンにして売る、すでに14億円以上を販売

三井物産がロシアのサブスクリプション型食材デリバリーサービス、いわゆる「ミールキットEC事業者」のChefmarketの株式の一部を取得したことを発表した。総額120万ドル程度のシリーズAラウンドでの出資で、三井物産の持分比率は5%程度となるという。

Chefmarketは2012年創設のスタートアップで、モスクワを拠点にサンクトペテルブルクなど4都市でサービスを展開している。Chefmarketの主要サービスは5日分の食材と、プロのシェフが考案したメニューが同梱されたミールキットを提供する定期購買型サービスだ。

chefmarket

Chefmarketと同様のミールキットサービスは、米国では2011年頃からBlue ApronPlatedChef’dHome ChefMuncheryHelloFreshなど数多く立ち上がっている。ここに挙げた企業だけで総額64億2800万ドル(約6800億円)もの資金を調達していて、Amazon Freshを展開する米Amazon参入の噂もあるほど加熱している。新規市場に先鞭を付け、今もマーケットリーダーのポジションにあるBlue Apronは月間800万食を配達している。米Fortuneが6月6日に伝えたところによればBlue Apronは向こう1年以内のIPOを計画していて、上場時の時価総額は30億ドル以上になるだろうという観測もある。

Technomicによれば、2015年のミールキットEC市場規模は全世界で約1100億円、うち米国市場が約440億円。2020年には全世界で約1.1兆円となる見込みだ。冬場の気候の厳しさから、ロシアでのミールキットECの潜在需要は諸外国より高いと見ていることが、三井物産がChefmarketへの出資を決めた背景にある。さらに、ロシアの食品小売市場は約21兆円と大規模だが、EC化率はわずか0.2%。ミールキットに限らない食品EC市場の成長余地は大きいと見ているという。

ミールキットは従来の食材配達サービスとは違う世代

日本でも昔から生協やヨシケイといった夕食宅配サービスが存在するし、ミールキットはオイシックスが取り組んで来た事業領域とも重なるわけだが、今回Chefmarket出資を担当した三井物産の諸岡耕作氏(ICT事業本部メディア事業部メディアリテール事業第一室)は、いま立ち上がりつつあるミールキット関連サービスは、ユーザー体験がモバイルネイティブであることや健康志向が強いことなど既存の食材デリバリーサービスとは異なると見ているという。例えばデータ解析をして需要予測をするなどネット進化の流れの中にあって、「今後は日本でも似たものが出てくるだろうなと見ています。日本では生協が1兆円ぐらいの売り上げがあって大きいですが、そこを次世代型がリプレースしていく、というのはあるのではないかと踏んでいます」(諸岡氏)。

EC事業といえば、米国でAmazon、日本で楽天、中国でアリババといったように、各地で有力プレイヤーが出揃った感がある。一方でEC化率が低い商材やサービスはまだまだ多い。例えば日本の統計でいえばC向け物販のEC化率は4.37%に過ぎない(経済産業省によるPDF資料「平成26 年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備」)。こうしたことから三井物産ではGDP規模が大きく、かつ1人当たりのGDPも高い地域・国でAmazonや楽天と異なるアプローチのEC事業への投資を進めていて、そのなかでも食品関連ECを有望な1つの領域と見ているという。「EC化率の高い地域では次は食に向かう。高付加価値のものとして、そもそも買いに行かなくてもいいとか、プロが選んだ食材であるとか、そういうところで伸びていくと思います」(諸岡氏)。レシピまで考えた上でのミールキットは食材を無駄にすることが少なく、そうした経済性も人気の秘密という。

衣食住関連のグローバル市場を狙って内外のスタートアップへ投資

食品ECとはいえ、三井物産がロシアでネット系サービスに出資というと、ちょっと意外な感じもする。ただ、同社はもともとサハリンでの資源開発を手がけてきてロシアとの関係が深いし、「ロシア版Square」といわれるQIWIに2010年に出資して、2013年の米Nasdaqへの上場を支援した実績などもある。QIWIはYandexなどと並んでロシア企業としてNasdaqに上場している数少ないネット企業だ。このときに出来た人的ネットワークがあったことから、今回も「ロシア版Blue Apron」とも言えるChefmarketへの出資と繋がったそうだ。今回の投資はQIWI創業者でロシアの代表的若手起業家アンドレ・ロマネンコ氏が参画するファンドとの共同投資だという。

三井物産といえばエネルギーや資源、機械といった稼ぎ頭が思い浮かぶが、国境をまたぐメディア・広告関連事業も手がけている。米テレビショッピング「QVC」の2000年の日本法人設立では40%を三井物産が出資。2013年までに国内売上高1000億円にまで成長させ、この経験から中国のCCTVとの協業や、インドの通販会社Naaptolへの出資でテレビショッピングを横展開した実績もある。通信・メディア・広告を手掛ける米Aolの日本進出に際してはジョイントベンチャー立ち上げで三井物産が日本法人へ出資したこともある(情報開示:三井物産はTechCrunch Japanを運営するAOLオンライン・ジャパンと同じ米Aol傘下のグループ会社であるAOLプラットフォームズ・ジャパンの株主)。最近だと国内ではメルカリやソラコム、マネーフォワード、Tokyo Otaku Modeなどにも出資していて三井物産はスタートアップ企業への投資も積極的に行っている。もっとも三井物産はVCではなく事業会社。スタートアップ投資では決まったチケットサイズや投資対象ステージがあるわけでもないし、回収期間が設定されているというわけでもない。「衣食住関連のグローバル市場での事業機会を狙っていく」(諸岡氏)というのが基本スタンスだそうだ。