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スマホがジカ熱の特効薬に?

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【編集部注:本稿の執筆者、Shawn DuBravacはConsumer Technology Associationのチーフ・エコノミストでDigital Destiny: How the New Age of Data Will Transform the Way We Live, Work, and Communicateの著者】

スマホは現代の生活においてさながらデジタル版スイス・アーミーナイフのような存在となった。単に電話としての役割を超えて、写真やビデオを撮影したり、物を購入したり、ソーシャルネットワークに接続したり、街で道案内をしてくれたり、考え得るあらゆる目的のために、時には考えもつかないものも含めて使用されている。アプリを使うのもスマホ上だ。

今日のスマホは極めて強力なマイクロコンピュータだ。驚くべきことには、現在、このデバイスの計算力が集団でひとつにまとめあげられ、さらにすごい目的に使われつつある。その目的とは、ジカウィルスに対する治療法を見つけ出すことだ。

我々のほとんどは、この小さな奇跡とでもいうようなデバイスをポケットやパースに入れて普段持ち運んでおり、もはやスマホなしの生活など想像すらできない。その依存度たるや、オバマ大統領によるとそれはもはや「崇拝」といったレベルのもののようだ。しかし大統領も#OpenZikaプロジェクトのニュースを聞けば見方を変えるかもしれない。

IBMのWorld Community Gridの研究プロジェクトは、ボランティアのコンピュータ、アンドロイドのスマホ及びタブレットのネットワークを仮想的なスーパーコンピュータに変えてしまおうというものだ。

ボランティアがWorld Community Gridのアプリをダウンロードすると、研究者はそのデバイスにアクセスして演算を実行することができるようになる。蚊に媒介されるジカウィルスを撃退するには抗ウィルス剤が必要だが、その演算はジカに対する抗ウィルス剤を製造するために必要な化合物に関する仮想実験を行うためのものだ

Consumer Technology Associationの研究によると、世界中では大体26億のスマホが使われており、さらに14億のスマホが毎年売れている。先進国の多くでは、スマホの総数は人口より多く、世界の最僻地でも所有率は増加の一途を辿っている。

スマホ人気の陰で固定電話の契約数は下降の一途を辿り、アメリカでは遂に世帯数の50%を割り込むまでになった。また、スマホは何百万ものデジタルカメラのシェアを切り崩している。つい最近の2011年の時点では80%のアメリカ人はデジカメを所持していたが、今日その比率はたったの61%だ。つまり我々は迅速かつ熱狂的にオンライン、オフラインの両方においてスマホに移行しているのだ。

仮想的ドラッグスクリーニングは今日のスマホが実現できる最新ワザのひとつだ。そんなことまでできるとは。

我々が暮らしている空間では、互いに繋がった何百億ものデバイスがあらゆる場所に現れ、公共および私的な空間で日常的に存在している対象を次々に置き換えている。例えば、パーキングメーターや消火栓、自転車ラックや道路、自動車や家のドアの鍵がどんどんインターネットに繋がっている。カメラやマイクロフォンや各種センサーが実際の居住空間と一体化している。

大概のカメラやマイクロフォンはオンデマンドで動作するものだ。すなわちユーザーがデバイスに次どうするかを指示する必要がある。これらのデバイスがデジタル化し、さらにインターネットに接続され「センサー化」すれば、これまでそこにあったが特に利用されず放置され、デジタル情報として利用し得なかったデータを、今度は体系的に取得し始めることが可能になる。

そこにこそ強力なパワーが隠れている。そしてこれこそがWorld Community Gridの着眼するところであり、そのパワーを利用することでこれまでマラリア、エボラ、結核や様々な病気の研究が行われてきた。

#OpenZikaプロジェクトにより研究者はボランティアの提供するデバイスを使って演算を実行させてもらうが、持ち主がデバイスを利用する際に悪影響が出ることはなく、そのせいで持ち主のデータの安全性が損なわれた例はこれまで報告されていない。同時に、このプロジェクトで研究者が手にする演算力はスーパーコンピュータの演算力をも霞ませるほどのものだ。これは、スーパーコンピュータが誰にでも利用できるものではないという点と関係がある。

ラトガース大学の新興・再興病原体センターのAlexander PerrymanがCNBCに語ったところでは、研究者がいわゆる一般的なスーパーコンピュータを使うことができるのはたった数万時間、それは中央処理装置の実行時間で数十万時間に相当する、という。一方でWorld Community Gridであれば3万年相当の中央処理装置の実行時間が手に入る。

ジカ熱の治癒に役立つ化合物を探索するには、何千万種類にも及ぶ化合物を計算評価する必要があるが、World Community Gridプロジェクトはその過程を効率化し、計算にかかる時間の短縮に貢献するだろう。ジカ熱は致死率そのものは低いものの、妊婦が感染した蚊にかまれると赤ちゃんに先天性異常が引き起こされる可能性がある。

仮想的ドラッグスクリーニングは今日のスマホが実現できる最新ワザのひとつだ。そんなことまでできるとは。そして次に何が来るだろうか。大いに注目したい。

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(翻訳:Tsubouchi)