同業他社が沈む中iFoodが3000万ドルを調達し南米市場を攻める

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世界的にフードデリバリースタートアップの勢いが落ちてきているようだが、南米の投資家は、少なくともひとつのある企業に新たな光を見出している。

ブラジル発のオンデマンドフードデリバリーサービスを展開するiFoodは、この度3000万ドルを新たに調達し、南米でのビジネス拡大とオンラインフードデリバリー市場での基盤固めをしようとしている。

オリンピック選手がブラジルで金メダルを目指す中、iFoodは新規に調達した資金を利用して、フードデリバリースタートアップ界の表彰台のトップを見据えているのだ。

3000万ドルの資金はiFoodもよく知る投資家から出資されることとなった。Naspersが投資を行ったモバイルコマースの雄Movileや、イギリスを拠点とするグローバルオンラインテイクアウトサービスの上場企業JUST EATは、昨年にもiFoodに対して5000万ドルの投資を行っていた

そのため、この度の資金調達は3社の複雑に絡み合った関係の延長線上にあると言える。今年に入ってiFoodはブラジルにあるJUST EAT傘下のhellofood Brazilを買収しており、新たな資金の一部はメキシコへの拡大を目的として、JUST EATのメキシコ子会社SinDelantalの買収に利用される予定だ。

以前のTechCrunchの報道によれば、MovileはiFoodの支配権の60%を握っている一方、グローバルプレイヤーであるイギリスの巨大フードデリバリー企業Just Eatもその30%を保有している。

メキシコ最大のフードデリバリー企業であるSinDelantalは、2015年2月にJUST EATに買収された。そして2016年2月にJUST EATが買収したhellofood MexicoのオペレーションをSinDelantalと統合したことで、SinDelantalの勢いはさらに増した。

新しい買収話がまとまれば、iFoodはSinDelantalの株式の49%を保有し、SinDelantalはiFoodと、iFoodの30%を保有するJUST EATのジョイントベンチャーとして事業を行うこととなる。なお、買収金額は発表されていない。

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「iFoodは常にモバイルエクスペリエンスのことを意識しています。私たちは携帯電話を使ったフードデリバリー業界で、1番簡単で使いやすいサービスを提供したいと考えています」とiFoodの共同設立者兼CEOのFelipe Fioravanteは説明した。「Movileが持つモバイルの強みのおかげで、常に進化を続ける世界レベルのサービスを生み出すことが出来ました」

この南米のスタートアップに対する新たな投資は、フードデリバリー業界への投資に勢いが無いグローバル市場の流れとは逆行するように映る。

グローバル市場で企業の統合や評価額の急低下が普通になっている中、JUST EATとiFoodだけがその恩恵を受けているのだ。アメリカではSpoonRocketが業務を停止し、その資産をiFoodに売却した一方、ヨーロッパではRocket InternetがJUST EATに対してフードデリバリー事業の売却を行った。

新興市場の状況はさらに悪く、最近のBloombergの記事が示唆しているように、特にインドは大きな打撃をうけている

以下はBloombergのウェブサイト上にあるSaritha Raiの記事の抜粋だ。

ベンチャーキャピタルの資金は干上がり、スタートアップは次々と市場から消えていっている。ムンバイを拠点とし、フードデリバリーアプリの先駆け的存在でもあるTinyOwlは、Sequoia Capitalを含む投資家から2300万ドルを調達していたものの、資金がほぼ底をついてしまったため、TinyOwlよりも規模の小さな競合のRunnrに身売りすることとなった。また、GoogleやAmazon幹部から資金調達を行ったDazoの昨年の事業停止に続き、SequoiaとSnapdeal.comの支援を受けた食料品配達サービスのPepperTapも4月にその幕を閉じた。グルガーオンを拠点とし、インドで唯一のフードテック系ユニコーンであるZomatoでさえ、HSBC Securities and Capital Markets (India)のアナリストによって、今月その10億ドルにおよぶ評価額を半減させられてしまった。

一方、南米でも特にブラジルとメキシコのビジネスは様子が違うようだ。

5年前にローンチしたiFoodは、1万軒以上のレストランとパートナシップ契約を結び、毎月170万件の配達実績を積み上げている。

「ブラジルでの成功を見た後、メキシコでもiFoodと協力関係を結ぶというのは当然の決断でした。」とJUST EAT CEOのDavid Buttressは声明の中で述べた。「iFoodはローカル市場について細部まで理解していて、モバイルサービスにも強みを持っています。この勝利のコンビネーションこそ、私たちが拡大に向けて求めているものでした」

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細かな情報を超えて、南米中のテクノロジー・サービス業界の成長率を表す数字の中には驚くべきものがいくつかあり、これがJUST EATやMovileによる南米企業への投資の理由なのかもしれない。

言葉にするととても味気ないが、世界銀行は南米の中期的な経済見通しの中で、その大きな成長可能性について触れている。

以下が世界銀行のコメントだ。

マクロ経済の持続や物価・金融の安定、さらには引き続き強気の投資家の存在を背景に、経済成長の原動力が再度バランスし、安定した消費拡大を補完するような形で(ネット)輸出額や、プライベートセクターへの投資が増加していくだろう。中期的には、金融・通信・エネルギー分野でのさらなる構造改革によって、経済活動の活発な拡大に向けた土台が固められることが期待される。

世界銀行のこの評価は星の数で言えば3個半くらいに値する。また、マクロ指標と同じくらい重要なのが、他の業界が縮小している南米経済でのEC業界のシェアの大きさだ(多くの新興市場で似た現象が起きている)。

南米中で劇的に増加しているスマートフォンの保有率や、WhatsApp・Facebookといったソーシャルメディアを支配する膨大な利用者数(人口の半分しかインターネットを利用できないにも関わらず、南米のユーザーがWhatAppのユーザーベースの38%、Facebookのユーザーベースの20%を占めている)を背景に、ソーシャルメディアの利用者数は今後さらに増えていくだろう。

同時にアメリカのテック企業は南米の可能性に気づきはじめた。PayPalは最近メキシコの通信大手América Móvilとパートナシップを組んで、モバイルウォレットプラットフォームの開発にあたっている。

18カ国で約3億人の契約者(AT&Tの契約者数の約3倍)を抱えるAmérica Móvilも、Uberと同社のLTV(顧客生涯価値)の一部を含む戦略的提携を行い、南米でモバイル業界が担う役割の重要性を強調する結果となった。

ECが同地域では突出しており、2015年には南米全体で23%の成長率を記録している。これは中国を除く全ての市場を上回る成長率で、中でも経済危機で何年にもわたる打撃を受けたアルゼンチンでは40%の成長を遂げていた。クレジットカードの普及率が15%程度で、人口の約半数が銀行口座を持っていない地域におけるこの数値の意味を考えてみてほしい。このような状況にあっても、様々なデジタルソリューションが人々に求められるているという実態が数字から見て取れる。

これらのトレンドは、iFoodが成功し続ける上で良い前兆となるものばかりであると同時に、マクロ経済が振るわない市場にあってもデジタルビジネスは成長できるということを証明している。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter