Rapyuta Roboticsが10億円を調達、警備や点検に使えるドローンを手始めにRobot-as-a-Serviceを目指す

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クラウドロボティクスの事業化を推進するRapyuta Roboticsが10億円のシリーズA資金調達を行った。リードインベスターはSBIインベストメントであり、社名は明らかにしていないが事業会社1社も参加する。同社は2015年1月に3.51億円のシードラウンド資金調達を実施しており(発表資料、調達先はCYBERDYNE、フジクリエイティブコーポレーション、ブイキューブ、それにSBIインベストメント)、今回と合わせ総額約13億円を集めたことになる。加えて、同社とチューリッヒ応用科学大学の応用情報技術研究所クラウド・コンピュータ研との共同事業に関して、スイス連邦政府が50万米ドルを支援する。

同社は2014年7月に設立。スイスのチューリッヒ工科大学からのスピンオフ企業である。東京に本社を置き、スイスのチューリッヒ、インドのバンガロールに開発拠点を持つ。27人の社員がいる。CEOのGajan Mohanarajah氏は日本の東京工業大学(東工大)で修士号、チューリッヒ工科大学で博士号を取得した。Rapyutaとは、チューリッヒ工科大学時代にCEOのGajan Mohanarajah氏が始めたクラウドロボティクスのプロジェクト名でもある(このサイトに当時の記録が残っている)。

また同社ではfreeeの財務本部長を務めていた松田海氏が最高財務責任者(CFO)として、また産業革新機構バイスプレジデントを務めていた山脇真波氏が事業開発部長として、ビジネス開拓と内部統制の強化にあたっている。

屋内警備に使えるドローンと独自の位置測定技術を開発

数々のロボットベンチャーが登場している中で、同社の事業の位置づけは独特だ。同社は自らの事業をフェーズ1とフェーズ2に分けて説明しているが、フェーズ1では、自社開発の自律型ドローン(「モーター以外は自社開発した」と説明する)とクラウド上のソフトウェアを組み合わせ、夜間のビル内警備や、共同溝内の調査のためにドローンを活用するビジネスを考えている。実際に、不動産会社や警備会社と商談が進んでいるという。

同社の独自技術として、照明条件が悪い夜間のビル警備や共同溝などでドローンを飛ばすための測距技術がある。屋内の要所に電波の発信器を設置し、ドローンとの間の電波の到達時間を測定することにより、15cm程度の精度で距離を測定する。ロボット研究では画像認識により位置を把握する試みが多いが、「画像処理だと環境、ライティング、壁の模様などが影響する。それに夜間の警備では使えない。電波はよりロバストな手法だ」と同社CEOのGajan Mohanarajah氏は説明する。

信頼できる位置測定の仕組みはロボティクスに欠かせないが、同社は独自にこの技術を開発したことになる。同社のデモビデオを見せてもらったのだが、倒立振り子を倒さないよう浮遊するドローンを高精度で制御するデモや、狭い屋内でドローンを自律的に飛行させるデモが繰り広げられていた。自律性、高精度、高耐久性、障害回避、これらを実用レベルまで高めたドローンを提供する。

クラウドロボティクスの考え方では、計算量が多い部分はクラウド上で処理し、ロボット本体はより安価、軽量になるようにする。特にドローンのようにペイロードの制約が厳しい機体では、処理能力が大きなコンピュータをペイロードとして搭載するよりもクラウドに処理を投げる方法のメリットが出てくる。

気になるのは、ロボット制御でリアルタイム性が必要となる領域と、クラウドとの通信による遅延(レイテンシ)の両立だ。目安として「1秒遅れても大丈夫な処理はクラウド。そうではないものはロボット本体に搭載する」(同氏)としている。「例えば障害回避は、万一ネットワークが切断されていたとしても機能する必要がある」(同氏)。

さらに進んだフェーズ2で同社が狙うのは、ロボットのためのPaaS、「Robot-as-a-Service」だ。同社のプラットフォーム上で手軽にロボット向けアプリケーションを開発できるようにし、複数のロボットベンダーと共同で事業を進める構想だ。いわば、ロボット業界のAmazon Web Servicesの地位を狙っているのだ。さらに同社のプラットフォームの中核部分はオープンソースソフトウェアとして公開する方針である。

「ロボットで難しいのは、いろいろな種類の専門家が必要になること。例えば顔認識が得意な人はロボットに貢献できるのに、現状ではそのためにロボットのハードウェアまで自分でやらないといけない」(Gajan Mohanarajah氏)。プラットフォームの整備により、いろいろな分野の専門家の知識を持ち寄って、ロボットをより賢くすることができるようになるというビジョンである。

ロボットは、お金が必要な分野だ。同社は工場を自分たちで持つ訳ではないが、資金の使い道は多い。今回調達した10億円の資金は、開発費、テスト、エンジニアチームに投資するとしている。例えばドローンなどハードウェアのテストの外注化を進めて「時間を買う」(同社CFOの松田海氏)ために使う。

ロボット産業が立ち上がるかどうか、大きな部分はロボットの「賢さ」にかかっている。そのためのプラットフォームを提供するのが同社のビジョンだ。ただし、同社はまずドローンのハードウェアから自社開発する必要があった。ロボット産業の難しさを改めて感じる。同社のビジョンがロボット産業の立ち上がりに寄与し、世界を変える日が来るかどうか──それは今回調達した10億円をどれだけ有効に使うのか、そして初期の顧客のニーズが同社のビジョンとうまく噛み合うかどうかにかかっているだろう。同社の今後に期待したい。