SoftbankのARM買収完了―240億ポンド(3.3兆円)は英国最大のM&A

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今年のテクノロジー界で最大級―かつイギリス史上最大―の買収が確定した。今日(米国時間9/5)、SoftbankはARM Holdingsの買収手続きを完了したと発表した

ARMはSoftBankが7月に240億ポンド(現在のレートで320億ドル、当時は310億ドル)で買収する意向を示した半導体メーカーだ。この買収によりSoftBankはIoTの世界に向けて大きく飛躍することになる。ARMは9月6日付でロンドン証券取引所(LSE)での上場が廃止となる。SoftbankではARMを今後も独立企業として運営する意向を示している。

今回のニュースは、買収完了のために必要とされる規制当局による承認が得られ、最後の障害が取り払われた直後に発表された。ソフトバンクは買収を発表した声明で次のように述べていた。

「買収契約の条件に従い、SBG〔SoftBank Group〕は発行済、未発行を含めてすべてのARM株式(ただしSBGないしSBG子会社が取得済み株式を除く)を総額で約240億英ポンド(310億USドル、3.3兆日本円相当)のキャッシュで買収する。買収手続きの完了後、9月6日(グリニッチ標準時)をもってARMのロンドン証券取引所への上場は廃止され、公開企業ではなくなる」

Softbankはまた「この買収に伴う財務および営業への影響は手続きの完了を待って行う」とも述べていた。ARMとSoftBankの財務は今日から統合が開始される

これまでSoftBankはモバイル網および固定回線におけるインターネット接続サービスを消費者に提供してきた。しかしニュースが発表された当初からわれわれはARM買収がSoftbankがIoTテクノロジーにおいて飛躍していくための重要なピボット点になると報じてきた

SoftBankのファウンダー、CEO、孫正義は今年初め、それ以前に公表していた引退の意向を取り消したことでテクノロジー界を驚かせた。そしてARM買収が発表された。孫CEOによれば交渉開始から終了までわずか2週間だったという。この買収はある意味でSoftBankという会社が次の時代をどう生き抜いていくかを予め示すものといえるだろう。

この取引について一部では、Softbankは機を見るに敏だったと評している。 Brexit〔イギリスのEU離脱〕によってポンドの為替レートが低落した瞬間にARMをさらったというわけだ。この国民投票では過半数の有権者がイギリスがEUを離脱することに賛成した。これが経済に与えた影響は大きく、英ポンドの為替レートは大きく下がった。

しかし孫CEOはARM買収を発表したプレス・カンファレンスで「Brexitは私の決定に何の影響も与えていない。多くの人々がBrexitについて憂慮している。この国の経済に与える影響は良かれ悪しかれ複雑なのもとなるだろう。…しかし私の投資の決断はBrexitが原因ではない」と述べた。

なるほどSoftBankとARMが買収について交渉していた2週間にポンドの価値は16%下落したが、逆にARMの株価はほぼ同率でアップした。つまり差し引きゼロだった。また考慮すべき経済的要素は他にもあった。この買収に先立ってSoftbankはAlibaba株の一部を売却、同時にフィンランドの有力ゲーム・メーカーSupercellも売却した。SoftBankは90億ドル(1兆円)という巨額の資金を起債によって調達する計画を発表している。孫氏は「これは為替レートの変動に便乗してできることではない」と述べ「もっと早く買収したかったのだが、資金が手元に入ってくるのを待っていたのだ」とジョークを飛ばした

「私は遭難しかけている会社に投資することはない。私はパラダイム・シフトに投資する。…これは私の情熱であり、ビジョンだ」と孫氏は述べた。

事実、Softbankは常にパラダイム ・シフトのまっただ中にいた。孫氏は社員がたった16人だったYahooを通じて「パソコン・インターネット」に投資した。その後はモバイル化に巨額の投資を行った。SoftbankはSprintの買収を始めとして多数のモバイル関連企業を傘下におさめている。そして孫氏の信じるところでは、世界がIoTに向けてシフトしていくのは必然的な流れだという。

ARMはイギリスにおけるテクノロジー企業のサクセス・ストーリーの代表だった。スマートフォン時代の到来の波に乗ってARMのチップ・デザインはppleを始め、世界の有力モバイル・デバイス・メーカーが採用するところとなった。

ARMにとってスマートフォン・ビジネスは依然として重要な柱だ。先月も長年のライバルであるIntelがARMのテクノロジーのライセンスを受けてスマートフォンのプロセッサーを製造すると発表しているのは興味深い。Intelはこれによって自社のスマートフォン向けチップ・ビジネスを大きく加速できると信じている。

しかし将来にむけてさらに重要なのは数年前からARMがビジネスの本質を IoTにシフトさせている点だ。ARMは現在の稼ぎ頭であるモバイル事業がいつかは頭打ちになることを予期していた。

そしてARMの予期通りに事態は推移している。スマートフォンの販売台数の伸びは事実上ゼロになった。世界の多くの市場でスマートフォンの普及は飽和点に近づきつつあり、すでにスマートフォンを所有しているユーザーは簡単に新機種に買い替えなくなった。

なるほど現在でもいわゆる「つながった」デバイスは多数存在する。冷蔵庫や玄関のドアのカギといったダム・デバイスが続々とスマート化され、インターネットにつながるようになった。しかし真のIoT時代の到来はまだこれからだ。ARM(いまやSoftbankだが)はこのパラダイム・シフトをいち早く参入したことにより、同社がスマートフォンで収めたような成功をIoTでも収められると期待している。

Featured Image: a-image/Shutterstock

〔日本版〕原文冒頭のニュースリリースへのリンクは日本からは無効なので相当するウェブページに差し替えてある。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+