Facebookは間もなくエンタープライズ市場の難しさに気づくだろう

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FacebookはWorkplace(旧Facebook at Work)のリリースで、今週正式にエンタープライズ市場へ参入した。コンシューマー向けツールとしてのFacebookの成功は言うまでもないが、異なるニーズを持つエンタープライズ市場は別世界だ。

対象となった1000社にWorkdplaceを無料提供したベータテストの結果、特に社内SNSに関して、エンタープライズが求めるものはコンシューマーとは全く異なることがわかった。Facebookが目指していたのは、既存のコンシューマー向けサービスとの親和性だった。つまりプライベートでFacebookを使っていれば、職場でWorkplaceにもすぐ慣れることができるという考えだ。この戦略は間違いではないものの、リリースのタイミングがあまりにも遅かった。

しかしBOXのCEO Aaron Levieは違った見方をしている。Workplaceのリリースについてのブログポストを読むと、彼はこのサービスに秘められた可能性に本心から期待しているようだった。「FacebookのWorkplaceがリリースされれば、企業や開発者は、私たちがプライベートな連絡や人との繋がりで日頃使うようになった手段を、職場でも有効活用できるようになる」と彼は綴っている。

ちょっとおかしいのは、オンラインソーシャルツールを職場で利用するというエンタープライズ2.0の考え方は、10年ほど前からすでに存在しており、YammerやJive、Confluenceといったソフトは”エンタープライズ用Facebook”として売り出されていたのだ。それでもFacebookはこれまで何の動きも見せなかった。

もしかしたらFacebookはSlackの成功に圧倒されていたのかもしれない。Slackのこれまでの調達資金は5億ドルで、バリュエーションは40億ドルに達しており、ようやくエンタープライズ2.0のゴールを達成するサービスになると思われていた。しかしFacebook以上に上手くその役を担える企業が存在するだろうか?

エンタープライズ版のFacebookをつくるというアイディアは机上では素晴らしいものに見えるが、コンシューマー向けとエンタープライズ向け製品の間には大きな違いがある。というのも、エンタープライズはコンシューマーとは全く違ったニーズを持っているのだ。

Dow Brook Advisory Servicesでアナリストを務めるLawrence Hawesは、エンタープライズ向けソーシャルサービスの動向を追っており、2015年1月のFacebook at Work発表の際に、Facebookはエンタープライズ市場で苦しむことになるかもしれないと話していた。以下が当時の彼の見方だ。

Facebookは、購買担当者の信頼を得るために、安全性や信頼性などをエンタープライズレベルまで引き上げなければならず、さらに、フリーミアムモデルに頼りきるのではなく、ボリュームに基いた課金モデルへ移行しなければいけないとHawesは話していた。そもそもどれも難しい問題である上、既存プレイヤーがいる市場では、これらのアドバイスを実現するのは困難を極める。

しかし、TechCrunch記者のIngrid Lundenが月曜日に報じていた通り、Facebookは自分たちの問題を理解しているようで、これまで利用してこなかったMAU(月間アクティブユーザー数に基づく課金システム)の採用を含め、問題解決に向けて動いていることが当初の発表から伺える。さらにローンチ直後の目を引く契約について、以下のように発表している。

初期段階からWorkplaceのユーザーとなった企業として、3万6000人の従業員を抱えるTelenor、10万人のRoyal Bank of Scotlandなどがある。そして今日、Danone(従業員10万人)、Starbucks(23万8000人)、そしてBooking.com(1万3000人)などの企業がユーザーに加わったことを新たに発表した。

しかし、Facebookは今後もこの調子で顧客数を増やしていかなければならず、SaaSの運営はコンシューマー向けSNSの運営とは事情が違う。Saasには顧客を1番において彼らのニーズを聞くという、もっと高いレベルでの顧客中心の考え方が必要とされるが、これまでFacebookはコンシューマーとも上手く関係を構築できていない。

エンタープライズ向けFacebook自体は確かに的を射たアイディアではあるものの、Facebookがエンタープライズの要望に応えつつ、SaaSベンダーとしてやっていけるかという点についてはまだ疑問が残る。これはWorkplaceが成功しないということではなく、Facebookは今後慣れない顧客のニーズに応えるため忙しくなるということだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter