空飛ぶ車実現の鍵を握る自動運転車とドローンのテクノロジー

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【編集部注】執筆者のTony AubeはOsmoのリードデザイナー。

幼い頃は、日曜朝のアニメチャンネルを兄弟で見ながら、宇宙家族ジェットソンの再放送で一家が空飛ぶ車で空を走り回る様子を眺めていた。当時はサイエンス・フィクションの黄金期で、ハリウッドは、ブレードランナー、バック・トゥ・ザ・フューチャー、スター・ウォーズ、フィフス・エレメントといった映画で溢れていた。そしてこのような映画の影響で、私たちは夢のようなテクノロジーで溢れた未来がいつか訪れると信じていた。

今周りを見てみると、当時の未来像に含めれていた、たくさんのものが既に実現したように感じる。道を歩いている人のポケットの中には高機能の通信機が入っており、地球上の誰とでもすぐにコミュニケーションがとれる。人間の遺伝子情報は全て解明され、世界中のほとんどの情報を指先で集めることができるばかりか、火星を侵略しようとさえしている。ここまで技術が進歩しているにも関わらず、何かが欠けている気がしないだろうか。まだ空飛ぶ車が誕生していないのだ。空飛ぶ車を作るのがそんなに難しいはずはないだろう。

空飛ぶ車の忘れ去られた歴史

信じられないかも知れないが、空飛ぶ車の誕生から既に70年以上が経っている。1904年にJules Verneが発表した小説Master of the Worldの中に空飛ぶ車が登場して以来、技術者は何世代にも渡ってその実現に向けて努力を重ねてきた。1940年にはHenry Fordが、飛行機と自動車を組合せた乗り物がそのうち誕生すると予言していた。当時の飛行機と自動車は、機体の価格が低下する一方、技術力は向上し、普及率も上がってきていた。そのため、近いうちに車と飛行機を組合せた乗り物が登場すると思われていたのだ。Fordの予言は正しく、彼の予言から数年後に、航空エンジニアのTed Hallが世界初の完全に機能する空飛ぶ車を完成させた。

70年前に作られたこのビデオには、実際に空を飛んでいる車の様子がおさめられている。機体は乗用車と取付可能な翼からできている。当時の航空機大手だったConvairが支援していたこのプロジェクトの中で、彼らは66回もテスト飛行を成功させていたため、あとは微調整を加えれば商業的な成功は目の前だと考えられていた。しかし1947年に行われたテスト飛行中、着陸時に衝突事故が起き、それ以後Convairはプロジェクトから手を引くことになった。そして、危険すぎると判断されたこのプロジェクトは、Hallの空飛ぶ車を一家に一台という夢とともに、最終的には消えてなくなってしまった。

それ以来、幾度となく空飛ぶ車の開発プロジェクトが立ち上げられたが、プロトタイプの段階を越えるようなものは生まれなかった。しかし、空飛ぶ車のアイディアに関して注目すべきなのが、誰も諦めないということだ。挫折や失敗が繰り返されているにも関わらず、どの世代のエンジニアも空飛ぶ車のアイディアの虜になり、その状況は今でも変わっていない。

究極的に言えば、空飛ぶ車が実現しない理由はテクノロジーやコストの問題ではない。

今日でも、TerrafugiaAeroMobilMoller Internationalといった企業が、この夢の実現に向けて動いている。彼らの名前は聞いたこともないかもしれないが、3社とも実際に動くプロトタイプを既に完成させている。

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AeroMobil 3.0というぴったりな名前が付けられた、AeroMobileの最新のプロトタイプ。

それじゃなぜ空飛ぶ車は世界中を飛び回っていないのか?

前述の通り、空飛ぶ車に必要なテクノロジーが誕生してからは既に何十年も経っており、今日でも空飛ぶ車の開発を行っている企業が存在する。それではなぜ、未だに車が空を飛んでいる様子を目にしないのだろうか?

一言で言えば、それは人間のせいなのだ。

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以前の記事でも触れた通り、人間というのはひどいドライバーだ。アメリカでは、車が関連する事故で年間3万人が命を落としており、8710億ドルものお金が消えてなくなっている。あなたの周りで運転が1番下手な人を思い浮かべてみてほしい。次に、その人が2トンの重さを持つ死のマシンに乗って、空を飛び回っている様子を想像してみてほしい。どんな気持ちがしただろうか?

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空飛ぶ車が一般に普及すれば、間違いなく世界中の建物で死亡事故が起きるだろう。現代の建築物は、(常に発生している)普通の車の衝突事故には耐えられるように設計されているが、空飛ぶ車は想定されていない。さらに、空中ではちょっとした衝突事故が起きるだけで、衝突した車と衝突された車の両方が地上に落ちる可能性がある。空飛ぶ金属の塊がいつ自分の頭の上に降ってくるかもわからないような世界には誰も住みたくないだろう。

究極的に言えば、空飛ぶ車が実現しない理由はテクノロジーやコストの問題ではない。空で何かを操縦するにあたって、ほとんどの人間はあてにならないという事実こそが、本当の理由なのだ。

ドライバーレステクノロジーの登場

ここから空飛ぶ車の議論は面白くなってくる。私たちは既に自動車に関して、あてにならない人間の問題を自動運転技術で解決した。

自動運転車は現実のものだ。大手テック企業は軒並み自動運転車の開発に力を入れており、街がGoogleカーのような自動運転車で溢れるのも時間の問題だ。自動運転車は素晴らしいアイディアである一方、その後継候補である自動飛行車には魅力では勝てない。

「どうすれば、空飛ぶ車を操縦できるほどコンピューターが賢くなれるのか?」と疑問に思うかもしれない。

どうやら、路上を走る車よりも空を飛ぶ車用のドライバーレステクノロジーの方が、簡単につくれらしい。空中には歩行者もいないし、くぼみもない。工事現場もなければ、その他のコンピューターが判断に迷うような障壁も空中には存在しないのだ。これこそ、ドライバーレステクノロジーがまず航空機に導入され、既に何十年間も航空業界で利用されている理由だ。センサーや演算能力、AIといったテクノロジーの発展に伴い、最近ではパイロットの必要性さえ問われている。今日のパイロットは、1フライトあたり平均3.5〜7分しか飛行機を操縦しておらず、以前は弁護士や医者と肩を並べていた給与に関しても、現在アメリカのパイロットの初任給は最低で時給10.75ドルまで下がってしまっている。自動化によって、タクシーやトラック運転手の仕事がなくなってしまうという議論が至る所でされているが、パイロットも例外ではない。

ここまでをまとめると、安全性が空飛ぶ車の主な問題点で、ドライバーレステクノロジーがそれを解決できるかもしれない。それでは、誰がその研究を行っているのだろうか?

いつもの顔ぶれ

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シリコンバレーに拠点を置く3人の著名人は、近年空飛ぶ車に強い関心を持っており、現在全員がドライバーレステクノロジーの開発に注力している。さらに3人とも豊富な資金力を持っているほか、世界トップクラスのエンジニアの力を借りることができ、これまでにも不可能と思われていたことを可能にした実績がある。Travis Kalanick、Larry Page、Elon Muskがその3人だ。

先月公開した98ページに及ぶ白書の中で、Uberは空飛ぶ車の未来に関するビジョンを説明している。この文書(概要はこちら)には、今後10年のうちにグローバルなオンデマンドのシェア航空サービスを提供するため、Uberがビジネスをどのように展開していくかについての具体的な計画が記載されている。要するに彼らは、ドライバーレスの空飛ぶ車用のUberアプリをつくろうとしているのだ。

UberそしてTravis Kalanick以外に、Larry Pageも空飛ぶ車にはかなり興味を持っている。これまでに彼は、1億ドル以上ものお金を、空飛ぶ車の開発に力を注ぐZee.AeroとKitty Hawkという2社のスタートアップに密かに投資してきた。Zee.Aeroは現在ホリスター市民空港でプロトタイプのテストを行っており、変わった見た目の乗り物が離着陸する姿を見たと報告している人もいる。Kitty Hawkの動きは謎に包まれているが、とても興味深いことに、以前Googleで自動運転車プログラムのトップを務めていたSebastian Thrunがこの会社の経営に関わっている。

Uberはドライバーレスの空飛ぶ車用のUberアプリをつくろうとしているのだ。

Muskはと言えば、どうやら彼は空飛ぶ車のアイディア自体そこまであてにしていないようだ。誤解しないでほしいのが、彼は空飛ぶ車をつくるのが難しい考えているわけではなく、ハイパーループのようにもっと効率的に都市間を移動する手段があると信じているのだ。しかし、長距離移動手段としてMuskが推奨しているのが、電気飛行機だ。いくつかのインタビューの中で、Muskは次なる大きなアイディアとして超音速電動ジェットのことを話していた。すでに彼は電気飛行機のデザインを終えているため、このまま競合が登場しなければ、またMuskは新たな会社を立ち上げて超音速電動ジェットを現実のものにしてしまうかもしれない。

面白いことに、これらのプロジェクトの機体のデザインには共通点がある。UberもPageもMuskも、電動で人間を運ぶことができ、地面に対して直角に離着陸できるような機体を考えているのだ。特に最後のポイントが重要だ。

人間用ドローンとして知られるVTOL機

ここまでに紹介した空飛ぶ車は、せいぜい飛行機と車が奇妙に組み合わさった高価な乗り物としか捉えられない(車と飛行機の良い点が潰されてしまっている)、と思う人もいるだろう。もともと車と飛行機は全く別の目的を持った乗り物であるため、単純にふたつを組み合わせただけでは上手くいくはずもない。突き詰めれば、飛行機と車を別々に購入した方が良いくらいだ。

このような設計上の問題を解決するために、空飛ぶ車は車か飛行機のような見た目をしていなければならない、という固定観念をまず捨て去る必要がある。以前公開した記事の中でも、人は旧来のソリューションを新たなテクノロジーに応用しようとする悪い癖があるということや、なぜ全く新しいプロダクトには新しい設計上のアプローチが必要かということに触れていた。これこそ、VTOL機の構造を空飛ぶ車に採用すべき理由なのだ。

VTOL機とは垂直離陸機(Vertical Take Off and Landing vehicles)のことを指している。要するに、今日のドローン革命を起こしたテクノロジーを使って、将来人間を運べるような空飛ぶ車をつくることができるかもしれないのだ。翼や車輪のことは一旦忘れ、宇宙家族ジェットソンが乗っているような空飛ぶ車や、DJIのドローンを人間が乗れるように大きくしたものを思い浮かべてみてほしい。

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CES 2016で公開されたEHang 184は、数あるプロトタイプの中でも注目の機体だ。

もしも、ドライバーレステクノロジーが空飛ぶ車実現の鍵を握っているとすれば、ドローンのテクノロジーは、機体を大量生産できるように簡素化する上で重要な役割を担っている。

飛行機の翼を車に取り付けるというアイディアは、見た目以外にもさまざまな問題を抱えている。翼を使って飛ぶためには、乗り物が水平方向に離陸する必要があり、これは危険なだけでなく、プロセスも煩雑になる上、離陸時に広大なスペースが必要になる。翼を垂直スラスタに替えるだけで、機体は素早く空高くへと舞い上がることができ、そうすれば燃料も節約できる。このように設計を行えば、主翼や尾翼、エレベーターといった、飛行機の中で最も危険とされる可動部を乗り物に搭載しないですむのだ。その結果、もっとシンプルで安全かつ大量生産しやすい機体が生まれる。

空飛ぶ車は車か飛行機のような見た目をしていなければならない、という固定観念を捨て去らなければいけない。

設計上重要な別の点として、電気モーターが挙げられる。これは単に環境に優しいだけでなく、VTOL機の動力源としては電気が一番理にかなっているのだ。電気モーターであれば、可動パーツの数を抑えられ、内燃エンジンよりも簡単につくることができる。また、電気モーターの方がずっと燃費が良く、メンテナンスも簡単で、飛行中に壊れる可能性も低いほか、内燃エンジンのように衝撃で爆発することもない。さらに電気を利用すれば、複数のスラスタを別々にコントロールすることもできる。そのため、もしも複数あるスラスタのうちどれかが故障しても、それ以外が直ちに浮力を補正し、無事に着陸することができる。そして最後に、電気モーターは騒音面でも内燃エンジンに勝っている。これこそ、VTOL機とヘリコプターの違いを生んでいるポイントだ。前述の白書の中でUberは、VTOL機の離陸時のノイズは、街の環境音と変わらない程度の大きさで、飛行中にはほとんど音が聞こえないはずだと推測している。

毎日の飛行通勤

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出典: Shutterstock

渋滞にひっかかっているときに、大きな赤いボタンを押して空に浮かび上がり、他の車を飛び越えていければと思ったことはないだろうか。渋滞の解消という夢を空飛ぶ車が実現しようとしている。

超高層ビルが都市部の限られた土地を有効利用しているように、都市部で空を飛ぶ交通機関が発達すれば、空の3次元空間を有効活用して地上の渋滞を解消できるかもしれない。― Jeff Holden, Uber CPO

これまでにも述べている通り、渋滞は大きな社会問題のひとつだ。アメリカだけでも、渋滞のせいで年間1240億ドルが無駄になっている。そして、交通渋滞の主な原因のひとつがインフラ不足だ。私たちが利用している高速道路は、今日の車の台数を想定してつくられてはいない。しかしVTOL機を利用すれば、この問題も解決する。VTOL機が一般に普及すれば、道路や線路、橋、トンネルの必要性がかなり減ることになる。これは環境に優しいだけでなく、公共事業に投じられるはずだった何千億ドルものお金の節約にもつながるのだ。

さらに、インフラに依存しない交通機関を利用することで、時間の節約もできる。電車やバスや車は、必ずしも効率的とは言えない限られた道順をたどってしか移動することができない。また、旧来の交通手段には、車両事故や工事などで道が遮断される可能性が常につきまとう。一方、空飛ぶ車であれば、最短距離で一直線に目的地まで到達することができる。さらに、地面と垂直に離着陸できれば、空港や滑走路など、現代の飛行機が離着陸するのに必要なスペースもいらなくなる。家のそばで離陸して、目的地のすぐとなりに着陸すればいいだけなのだ。繰り返しになるが、必要とするインフラの量が減るほど時間は節約できる。

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Uberは白書の中で、VTOL機の最初のユースケースには、長距離通勤が最適だと記している。VTOL機の大量生産が実現すれば、最終的には車を所有するよりもVTOL機を利用した方が安くなるとUberは考えているのだ。例えば、車だと2時間12分かかるサンフランシスコからサンノゼまでの道のりも、20ドルの料金を支払えばVTOL機に乗って15分で移動できるようになるかもしれないのだ。

空飛ぶ車実現への道

空飛ぶ車の実現にはまだまだ時間がかかる。前述の白書の中で、Uberも空飛ぶ車の実現までに解決しなければいけない主な課題を明示していた。まず、ドライバーが必要ないとしても、空飛ぶ車は連邦航空局の規制に準拠しなければならず、承認までにはかなりの時間がかかることが予想される。さらに安全面やコスト面の問題もまだ残っており、バッテリー周りのテクノロジーも追いついていない。Uberは、いかにこのような課題を解決し、10年以内にVTOL機を一般普及させるかについても白書の中で述べている。

著書「From Zero to One」の中でPeter Thielは、私たちはもう革新的な世界に住んではいないと述べ、物議を醸した。産業革命の結果、電気や家電、超高層ビル、自動車、飛行機といったさまざまなイノベーションが誕生した一方、現代のイノベーションのほとんどは、ITや通信の世界に留まっていると彼は主張しているのだ。Thielの指摘通り、ライフスタイルが1950年代から不思議なほど変わっていないという事実に、私たちはスマートフォンのせいで気づいていないだけなのかもしれない。

しかし私は、少なくとも交通の分野ではその現状が変わろうとしていると主張したい。自動運転車やハイパーループ、再利用可能な宇宙ロケットといった最近のプロジェクトを見る限り、イノベーションは未だに生まれ続けている。そして、かつて自動車が地上交通の敷居を下げたように、オンデマンドで共有型の空飛ぶ車によって、空中移動が身近なものになろうとしている。このテクノロジーによって、将来的には誰もが、今よりも快適に速く、安く、安全でより環境に優しい手段で移動できるようになるのだ。

空飛ぶ車の実現に向けた道のりは長いかもしれないが、そんなことは問題ではない。だってMarty、私たちがこれから行こうとする場所には、道など必要ないのだから。

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原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter