野菜の栽培に最適な土壌を整えるー、農業IoT「ゼロアグリ」が4億円を調達

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美味しい野菜を多く収穫しようと思うなら、気温や湿度、土壌環境を知り尽くし、毎日作物に最適な水と肥料が行き渡るように調整しなければならない。水や肥料は多すぎても、少なすぎても品質の良い野菜は実らず、最適なバランスを習得するには何十年もの経験が必要だ。農家の負担を減らすため、ルートレック・ネットワークスはIoTとアルゴリズムで最適な水分と肥料を自動で計算し、農場への供給を可能にするシステム「ゼロアグリ」を開発している。本日ルートレック・ネットワークスはグロービス・キャピタル・パートナーズ、東京大学エッジキャピタル、テックアクセルベンチャーズ、オイシックスより総額4億円の資金調達を実施したことを発表した。

「ゼロアグリ」は養液土耕栽培で用いることができる、かん水と施肥の自動化システムだ。養液土耕栽培とは、ビニールハウス内で地表か地面の中に点滴チューブを設置し、そこから必要な水と肥料を作物に与えて育てる方法を指す。

これまで農家は与える水と肥料の量を経験と勘に頼って決めていたとルートレック・ネットワークスの代表取締役、佐々木伸一氏は話す。「農家ではその日の温度や湿度、作物の育ち具合などを確かめ、与えるべき水や肥料の量を調整していました。彼らの体自体がセンサーになっているのです」。水やりの作業だけでも数時間かかるが、与える水の量を決めるために作物の状態を見て回ったり、外の気温や湿度を確かめる手間も多くかかっているという。

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ゼロアグリは、農地に設置する日射センサー、土壌センサー、温湿度センサー、そして農地に水と肥料を与える液肥タンクと連携している。ゼロアグリはセンサーのデータを元に自動で液肥タンクを制御するため、かん水と施肥作業を大幅に削減することができるという。タブレット端末でデータを確認し、そこから手動で水と肥料の量を調整することも可能だ。

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農業分野では就農人口が減少し、就農者の高齢化が進んでいると佐々木氏は話す。就農人口の平均年齢は67歳で、この人たちが引退してしまうと、彼らの持つ農業の経験や知見も失われてしまう。ゼロアグリは、農家が培っていた経験や勘を栽培アルゴリズムに反映することで、技術継承が途絶えることを防ぎたい考えだ。また、農業の経験が浅い人でもすぐに収益が上げられるよう栽培をサポートすることにもなると佐々木氏は話す。

佐々木氏は2005年にルートレック・ネットワークスを創業し、機器間の通信技術(M2M)を用いた燃料電池運用管理や車両運用管理システムなどを開発していた。農業が直面する様々な課題に対し、こうしたテクノロジーを活用できないかと考え、2010年から農業分野に参入した。

農業は特にICTの利活用に対して保守的と佐々木氏は言う。その一因について佐々木氏は「農業を営む人は経営者だからです。生産した作物が収入に直結します。堅いビジネスをしようと思うと、新しいものを取り入れづらくなります」と説明する。

当初手がけたサービスは農場に関するデータを可視化するものだったが、それだけでは農家には受け入れられなかったと佐々木氏は話す。取得したデータを示すだけでなく、それを活かして次のアクションに結びつけられるサービスでなければならないと感じたという。そのためには農学の知識が必要と考え、2011年から明治大学と栽培アルゴリズムの共同開発を始めた。ルートレック・ネットワークスは現在、明治大学黒川農場の実験ハウスでゼロアグリの開発を行っているという。

ゼロアグリの価格は基本システム120万円で運用費が年間12万円だ。これは農家が1年半から2年ほどで回収できる価格だそうだ。ゼロアグリはトマトやピーマン、キュウリ、ナスなどの果菜類を中心に21品目に対応している。

現在では50件以上の農家がゼロアグリを導入しているという。かん水作業の削減、使用する肥料や農薬の量の削減に加え、収穫量の増加、作物の品質の向上につながった実績が増えていると佐々木氏は話す。

今回調達した資金は「ゼロアグリ」のアルゴリズムのさらなる研究開発、そして営業力の強化に充てる計画だ。また、日本と気候が似ているアジア地域でも展開も進めていくと佐々木氏は話している。