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自宅でできる腸内フローラ検査サービスのサイキンソー、総額2.7億円を調達

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人間の腸内に住み着くさまざまな細菌の集合体「腸内細菌叢(そう)」、別名・腸内フローラ。健康な人も含め、あらゆる人の体に存在する腸内フローラについての研究は、ここ5年ほどで大きく進み、腸内フローラを構成する細菌のパターンを分析することによって、体質や生活習慣、特定の病気になりやすい/なりにくいといったことが分かるようになってきた。

この腸内フローラを自宅で、郵送で検査できる個人向けサービス「Mykinso(マイキンソー)」を提供するスタートアップ、サイキンソーは12月28日、総額2.7億円の第三者割当増資を発表した。引受先はREVICキャピタルとAGSコンサルティングが運営する、地域ヘルスケア産業支援ファンド、ほか事業会社だ。

腸内フローラ分析を支えるビッグデータ解析

腸内フローラ研究の近年の目覚ましい進展は、実は遺伝子解析テクノロジーの向上とリンクしている。ゲノムを読むために利用されてきたビッグデータ解析の技術を、腸内菌のDNA調査に応用することで、従来の技術では乳酸菌やビフィズス菌など、ごく少数の特定の菌の動向しか把握できなかった腸内フローラの環境の全体像が分かるようになり、そこから腸内フローラのパターンが、病気の発症に関わる重要なデータであることも分かってきている。

サイキンソー代表取締役の沢井悠氏は前職で、遺伝子解析を手がけていたバイオベンチャー、ジナリスの取締役経営企画室長として参画していた。残念ながらジナリスは2016年7月に破産しているが、遺伝子解析については、ジーンクエストやDeNAライフサイエンスのMYCODEといった検査キットが提供され、個人向けにもサービスが広がっている。

沢井氏は、研究が進む腸内フローラの解析についても「遺伝子検査サービスと同じようにサービスが提供できるのでは」と考え、2014年11月にサイキンソーを設立。2015年秋からは、郵送検査型の腸内フローラ検査キット・Mykinsoの提供を開始した。Mykinsoでは、腸内フローラを解析するためだけでなく、顧客の問診アンケートと解析データを突き合わせ、体質や生活習慣を読み解くためにも、マイニングをはじめとしたビッグデータ解析を利用しているという。

調達によりデータ収集と開発を強化

Mykinsoはサービス開始から1年少々経過した現時点で、累計約2000キットを出荷。個人向けに検査キットを販売するほか、企業向けに、機能性食品などの摂取による腸内フローラの変化を検査結果としてデータ提供したり、医師らヘルスケア専門職向けに、生活習慣改善のための提案材料となるようなデータやアドバイスの提供を行う「Mykinso Pro」も展開している。サイキンソー取締役の小河原大輔氏によれば「検査キットは個人向けのものと同じだが、Mykinso Proでは、ビッグデータを統計的に見やすくする機能をSaaSとして提供している」とのことだ。

今回の資金調達によりサイキンソーでは、腸内フローラのデータ取得を加速させ、生活習慣病や消化器疾患の発症リスク評価に、もっと活用できる質・量の情報を得たい、としている。沢井氏は「現在はキットを販売することによりデータも蓄積する形を取っているが、事例として腸内フローラデータを使いたいというところ(企業や調査機関)には、戦略的に検査サービスを提供していきたい」と話す。また、Mykinsoのサービス向上を図るため、開発も強化するという。「データそのものの質に加え、データを見やすくするためのインターフェイスの質も上げていく」(小河原氏)

「直近では、今後1年以内に検査件数1万件に到達することが目標だ。桁が上がることで、サービスのステージが変わると考えている。ただ数を集めればよい、ということでもなく、我々としては質の良いデータを集めて、数と質を追求していく」(沢井氏)

サイキンソー代表取締役の沢井悠氏(左)、取締役の小河原大輔氏(右)

サイキンソー代表取締役の沢井悠氏(左)、取締役の小河原大輔氏(右)

腸に良い生活習慣を普及させたい

「日本人の生活習慣は、生活習慣病との関連で海外でも注目されている。日本人の腸内フローラと問診アンケートのデータを集めた上で分析を進め、アジアやヨーロッパなどの海外でもサービス提供することには、意味があると考えている」と、沢井氏は海外進出にも意欲を見せる。

「腸に良い生活習慣を普及させることが、Mykinso事業の中長期的な目的」と語る沢井氏。「健康で長生きできる環境を人々に提供するために、腸内フローラの検査にとどまらず、食べ物の提案や、相談に対するアドバイスなども将来的に展開することを考えている」(沢井氏)

Mykinsoの検査キット販売価格は、1万8000円(税抜)と決して安くはない。遺伝子や腸内フローラの解析ではなく、血液検査のカテゴリーになるが、KDDIの提供するスマホdeドックやケアプロのセルフ健康チェックなど、健康状態をセルフチェックするという目的だけであれば、より安価なサービスも存在している。

こうした“健康セルフチェック”関連の競合サービスについて尋ねたところ、沢井氏は「検査にもクオリティがあって、我々は質の高いデータを取ることに重きを置いてきたので、現状ではこの価格で提供している。ただ今後は、検査キット自体の販売価格は抑えて、生活習慣改善のアドバイスといった周辺サービスをより強化して、そちらで付加価値を出していくことはあり得る」と話してくれた。

ヘルスケア関連の情報提供といえば、このところDeNAの「WELQ」で正確性に欠ける記事が掲載されていた件が問題になっていたが、このあたりの情報の正確性や医療倫理についても質問してみた。「我々が生活習慣改善のための指導を情報提供する場合には、医師などの専門家の監修を受けている。AIに頼るのではなく、正しい、質の高い指導やサービスを提供している」(沢井氏)。腸に良い生活習慣を普及させる、という目的からぶれる動きは考えていない、ということのようだ。

個人からの引き合いだけでなく、医療機関からの紹介でキットを提供することも増えているというMykinso。「医療機関やヘルスケア関連の専門職の方々とも連携して、情報提供を強化していきたい」と沢井氏は言う。「現在利用している方からは、腸内フローラが可視化できて面白い、と言われている。お腹の悩みを継続的に抱える人に利用してもらって『助かった』という声もある。もっとアドバイスがほしい、という期待もいただいているので、応えていきたい」(沢井氏)