MasupAwards2016:最優秀賞は「YouTube映像と連携してコンテンツを拡張するフレームワーク」

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12月17日(土)に、東京・天王洲にある「寺田倉庫」で、ITクリエイターのお祭り「FESTA2016」が開催された。FESTA2016は、リクルートホールディングスが主催する日本最大級の開発コンテスト「MashupAwards」の運営事務局が、Azureなどのユーザーグループ(JAZUG)、IoTLTなどのエンジニアコミュニティも巻き込み、モノづくりを楽しむ全てのITクリエイターの出会いの場として開催したイベントであるその「FESTA2016」で、2006年からはじまり、今年で12回目となる「MashupAwards2016」の決勝戦が行なわれた。

MashupAwardsの審査基準は、
・アイデア(独自性、新規性、優れた着眼点、発展可能性)
・完成度(実用性、ユーザビリティ、エンタテインメント性)
・デザイン(芸術性、優れた表現技法)

の3つで、事業性が入っていないことが特徴だ。それは、クリエイティビティを最大限に活かし、新しい発想を促すためだ。そのため、今すぐビジネスとして通用する作品は少ないが、ビジネスの可能性を秘めた技術やアイデアが形となって発表され、新しい気付きや刺激を与えてくれる。また、時代の流行りを感じられるイベントでもある。

最優秀賞はYouTubeの映像と連動したマッシュアップ作品を簡単に作れるJavaScriptのフレームワーク「str.js

12回目となるMashupAwards2016で優勝したのは、YouTubeの映像と連動したマッシュアップ作品を簡単に作れるJavaScriptのフレームワーク「str.js」だ

ブラウザーのYouTube映像プレイヤーを起点として、スマートフォン、IoT機器、Webサービスなどと連携しコンテンツを拡張する。利用方法は、YouTubeの字幕エディターの部分に、テキストではなく強引にstr.js形式でJavaScriptを書くだけである。

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プレゼンではその仕組みを使って実現できるデモ動画を多数披露した。

この場もYouTube動画でプレゼンしており、クリッカーとしてMESH(ブロック形状の電子タグ)の「ボタンタグ」を利用。さらに、持ち込んだ丸椅子の裏に「動きタグ」を付け、椅子をひっくり返すことでも動画の再生制御するデモを実演した。このような、ユーザーの入力により動画の再生制御をするだけでなく、動画の内容と同期して現実世界へ表現を拡張することも可能だ。

披露したデモ動画は以下のようなものだ。これでも一部の紹介となる。

・顔認識を利用し画面を見ている時だけ動画を再生
・知的書評合戦ビブリオバトル動画からスマホのシェイクで購入サイトへ誘導
・花火動画と同期して「HappyNewYear」というメッセージをスマホに表示
・花火動画と同期して、MESHのGPIOタグを使用しリアルに花火を打ち上げる
・HappyBirthdayソング動画の名前部分だけ音声合成で自分の名前を挿入
・いま流行りのPPAPの動画と同期して電子モーター「Webmo」を左右に動かす

この、矢継ぎ早に出される本作品を使ったさまざまな動画の拡張デモが、そのフレームワークとしての可能性を感じさせ最優秀賞に選出された。

審査員の藤川氏(えふしん)は個人ブログで選定の理由をこう語っている。

動画にイベントを埋め込んで、何かをするというのは、古くから動画技術を知ってる人なら割と当たり前だったりします。ただ、そのアイディアが実際に楽しめる形で沢山の人に実用化されたのは、実際のところ、ニコニコ動画だけ。個人的には、動画技術がなし得なかった、「動画+何か」というのが、IoT時代だからこそ、次なる新たな時代を作るんじゃないか?という期待を込めて、栗原さんの最優秀賞の選定に賛同した次第です

動画と連動してイベントを発生させることそのものは新しい考えではないが、時代の変化に伴い、昔流行らなかったことが姿を変えることもある。MashupAwardsの決勝にでてくる作品は、そんな「時代の流行り」を感じさせる作品も多かった。

魔法のように、あらゆるものをノックでコントロールできる実世界指向インタフェース「MagicKnock with MagicTV

次に評価が高かったのが、机や壁などに設置することでノック音とその強弱を検知し、コントロール信号を送信できる小型ワイヤレスデバイス「MagicKnock with MagicTV」だ。
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2種類の入力だけでスマート家電を操作することができるテレビ画面向けのGUIシステム「MagicTV」と連動させ、ノックするだけで音楽を聴いたり、映画を見たり、照明などの家電をコントロールすることができる。

仕組みは、デバイスに圧電素子が組み込まれており、振動をマイコンで検知し、BLEでテレビに通信する。フルカラーLEDを搭載しており光フィードバックもある。普段はコントローラとしてはOFFとなっており、コントロールしたいときに決まったノックをすると認識し起動する仕組みとなっている。また、機械学習を使ってノックの強さから個人を識別し、操作する人間が変わっても5回程度のノックで操作者のノックの強さを学習する。

MashupAwards2016の傾向は「機械学習」と「ノープログラミング」

MashupAwards事務局長の伴野氏にMashupAwards2016のトピックスを聞いた。

今年は機械学習や、画像解析技術等がAPIにより提供され、最新技術がAPI等を通じコモディティ化するまでのタイムラグが非常に短く感じるようになったそうだ。そして、作品に関する2つの傾向も教えてくれた。1つ目は、機械学習の作品が多かったこと。2つ目は、ノープログラミング、ノーコーディングで開発できるサービスが多く使われたことだ。それらを代表した作品が決勝でも見られたので紹介したい。

機械学習を取り入れた作品の一つは、「トイレの神様」だ。この作品は、便座デバイスを起点とし、さまざまなサービスを提供する。プライベート空間でもあるトイレで心の本音(独り言)を収集。会話によって心のサポートをしたり、天気や乗り換え案内サービスの情報を提供したり、お年寄りの見守りしたりといったことができる。

なにより評価されたのは、便座への腰の掛け方の違いを加圧センサーデータにより収集、機械学習することによって、使用する個人識別を可能にしたことだ。しかもその仕組は、どの便座にも取り付け可能である。

便をとり健康管理をするというサービスはよく聞くが、そこで問題となるのが「誰の便か?」という問題だ。このサービスはその問題を解決できる。また、会話においても、雑談ではなくカウンセリング的な会話が可能となる。(※会話の際にはマイクの設置が必要となる)

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GUIで開発可能でコーディング不要のサービスは、「Dataspider」「kintone」などあるが、一番利用されたのは「MESH」とのこと。MESHとは、人の動きを検知する「人感タグ」、明るさの変化を検知する「明るさタグ」などさまざまな機能をもったブロック形状の電子タグで、アイコンをつなぐだけでIoT作品がつくれる。そのMESHをフル活用し、ノープログラミングで決勝に勝ち残った作品が「どこでもMステ」だ。

どこでもMステ」という作品は、どこでもミュージックステーションに出演した気になれるという作品で、決勝の中で観客を一番引き込んだ作品でもある。

仕組みはこうだ。「人感タグ」で人を感知するとMステのオープニング曲が流れ、カーベットの両脇にあるLEDが光り(GPIOタグ利用)、手を振ると腕につけている「動きタグ」をトリガーに歓声が流れ、バミの位置にある「明るさタグ」を足で踏むとMステの締めの音楽が流れる。

ネタ系の作品だが、アイデアさえあればノープログラミングでクリエイティブな空間を作り、ここまで人を惹き込む作品が作れるのか…、と私は感動を覚えた。プロトタイプであれば、ノープログラミングですぐに形にできるものを作れる時代が到来した。こちらの作品は是非プレゼン動画を見ていただきたい。

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また、今年初めての試みとして、法人を対象とした応募コース「ForPro」が開設された。初代王者は、忙しく離席しがちな上司と会話したい”部下 vs 部下” の上司争奪システムの「全社員早押上司争奪戦」が輝いた。

決勝では一般応募の「ForALL」が11作品、法人応募の「ForPro」が3作品発表されたが、本稿ではそのうち4作品を紹介した。このほかにも今回のMashupAwardsではスマート白杖ディスレクシアの人のためのサービスといった社会的意義の高い作品、HMDなしでVRを体験できる作品非接触給電回路を使った木製パズルといった技術力の高い作品など、さまざまな作品が登場した。気になる読者はMashupAwards公式ブログを参照してほしい。

ITクリエイターのお祭り「FESTA」

ITクリエイターのお祭りとして開催された「FESTA」では、MashupAwardsの決勝だけでなく、JAZUGTwilioJP-UGBMXUG、Pepperコミュニティ、MESHで作ってみた!友の会のユーザーグループの対抗LT、TMCNIoTLTおうちハック同好会MashupAwardsのエンジニアコミュニティの対抗LT、そしてモノづくりを楽しむ人達へ向けたKeynoteも行われた。

キーノートでは、BASE株式会社取締役CTOの藤川氏が企業戦略としてのAPIの利用事例などを含めてAPIビジネスについて語った。

「APIは開発者とのコミュニケーション手段であり、何をどう提供していくのかはエコシステムに影響を与える。これやると儲かるよねっというAPIデザインパターンがでた瞬間に、(エコシステムが充実し)APIビジネスが信頼され本当のMashup時代となるだろう」と語った。

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またコイニープロダクトストラテジストの久下氏は「育てるように作る楽しみ」について次のように語った。

「モノづくりの人が増えれば世の中楽しくなってくるはず。プロトタイプを作るのも楽しいけれど、プロダクトを作ることも楽しんでほしい。プロトタイプは人と触れ合うことでプロダクトに進化していく。いろいろなイベントに参加してプロトタイプに触れてもらい、長期的なプロダクトができることを期待している」と、参加者に訴えた。

今年で12回目となったMashupAwardsだが、初回開催時とは「Mashup」という意味も大きく変わった。Web APIを組み合わせたコンテストではなく、IoTなども含めたITの総合格闘技戦となり、さまざまなものがMashupされている。

時代に合わせてイベントの内容をかえ、応募される作品に変化のあるこのコンテストは、時代の流れを読む一つのバロメーターとしても役に立つかも知れない。しかし、何よりもこのイベントの熱気は、モノづくりを楽しむことの大切さを教えてくれる。決勝のプレゼンは、デモというよりは、技術に裏付けられたエンタテインメントショーと化していた。