映画「Hidden Figures」は、女の子たちをSTEMヒーローの道へと誘う

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【編集部注】著者のTracey Welson-Rossmanは 、技術職における男女格差を減らす活動を行う非営利団体TechGirlzの創業者である。

全ての世代の親たちが好んで使う格言に「あなたは食べているものになる(you are what you eat)」というものがある。同様の現象が職業選択の際にも起きることを指摘しておきたい。「あなたは見ているものになる」。

私が言いたいのは、私たちの多くが、多感なテーィンエイジャーの時代に影響を与えてくれた人に根ざす、キャリアや生涯を貫く情熱を持つということだ。おそらくそれは素晴らしい先生だったり、印象的な家族だったり、あるいは特に魅力的な映画やテレビのキャラクターだったりするだろう。

しかし残念ながら、映画の場合は、若い女の子たちのために強くて独立し魅力的な職業選択肢を示してくれる女性が登場することがとても少ないために、あまり社会に良い影響を及ぼしているとは言えない。まして科学や数学に興味を持つ女の子たちに、キャリアパスを示す女性主人公となると、その数はほとんど無いようなものだ。

これこそが、私が映画「Hidden Figures」のリリースに興奮している理由の1つだ。この映画はアフリカ系アメリカ人の数学者であるキャサリン・ジョンソンと、彼女の同僚であるドロシー・ヴォーンとメアリー・ジャクソンについての実際の物語を描き出すものだ。この女性たちは、多くの同僚たちと共に、ロシアを相手にした宇宙開発競争の最中、NASAの配下であるラングレー研究センターの一部門、West Area Computersに隔離されながら働いていた。彼らの仕事は、ジョン・グレンが米国の宇宙飛行士として初めて地球の軌道上を3周したことに直接貢献した。

これまでに私が話すことを見たり聞いたりしたことがあるなら、メディアがハイテク業界のキャリアを描写する手法や、スマートな女性に対する社会の見方が、STEM関連分野でのキャリアを目指す女の子たちをとても少ないものにしているのだと、私が考えていることを知っているだろう。また私がテレビドラマ「Big Bang Theory 」の登場人物であるシェルドン・クーパーを、メディアによるSTEM職業人(特に技術職)への紋切り型の偏見(社会不適合で、パーカー(もしくはみすぼらしい服)を着た、白人男性たちによって占められている)の例として、呆れるくらいしつこく取り上げていることも知られているだろう。

ということで、私たちのボランティアたちや関わっている女の子たちが、Hidden Figuresの試写会に招かれたときには、私は少々緊張していた。私は、女性たちがその知性とSTEMに関連した貢献によって、重要な歴史上の人物として取り上げられる長編映画の登場を熱望していた。しかし、私はまた前述のシェルドン・クーパー役を演じていたジム・パーソンズが、映画の中に登場することにも気が付いた。ああ、この映画もまた、社会の共通の誤解に迎合することによって、その隠された強いメッセージを発信する、もう1つのハリウッド映画であることを運命付けられているのか?

映画やテレビ番組に、より多くの科学、技術、そして数学の女性リーダーを登場させることで、観ている女の子たちが自分自身の姿をその光の中に見出すことができるだろうか?

だが私は、映画がまさに待ち望んでいたものであったことを報告できることがとても嬉しい。これは本当に見る価値のある、魅力的なフィルムだ。映画の途中で、自発的な拍手で大いに盛り上がる観客たちの1人になれる経験など滅多にあるものではない!

そしてより深いレベルでも、描写は充実している。この映画の中で彼女たちは、華麗で活動的な母親、友人、そして同僚たちとして描かれている。重要なのは、当初彼らがその人種や性別故に、どれほど軽んじられていたかを描くことを躊躇していないところだ。しかしまた、宇宙に人間を送り出すという大きな目標が、こうした女性たちの能力に対する先入観を打ち砕いていく様子も描き出している。

私たちのグループは、参加する女の子たち、その母親たち、そしてボランティアで構成されているが、全員がこの映画の虜になった。彼らは、巨大な挑戦を乗り越えるために、女性たちがエンジニアや数学者としての能力を発揮し、その役割にスポットライトが当てられたこの映画を観ることを通じて、登場した女性たちの物語を知り、とても興奮した。以下に挙げるのは、映画を観た後の洞察に満ちた感想の一部だ:

「これは私の話です。それを信じて、同じようになるために、あなたもこの映画を観て下さい」。

「この映画は、エンジニアになりたいと願っている私の娘に、より一層の努力を決意させました」。

私は熱心な映画ファンとして、過去数年間で、強い女性主人公の数が増えているのは知っていた。しかしHidden Figuresで描かれたようなタイプの女性はまだ珍しい。私自身の考えや、女の子たちからの反応は脇に置くとしても、映画やテレビ番組に、より多くの科学、技術、そして数学の女性リーダーを登場させることで、観ている女の子たちが自分自身の姿をその光の中に見出すことができるだろうか?

2006年には女優のジーナ・デイビスが、この問いかけに正確に答えるために、Geena Davis Institute on Gender in Media(メディアにおけるジェンダーを考えるジーナ・デイビス研究所)を設立した。同研究所は、テレビや映画における女性キャラクターの差別的扱いにスポットライトを当て、その研究を後援している。2012年には、男女の役割や職業の描写を調べるために、映画、プライムタイムのテレビ番組、そしていくつかの子供番組の分析を行った。研究によって示されたのは、メデイア全体を通じてSTEMキャリアの描写は控えめであり、しばしばその他の分野に比べて物理学に重みがかけられているということだった。そしてスクリーン上でSTEMキャリアが描写されるとき、実世界の男女比に比べて圧倒的に高い比率で男性がその役に割当てられるのだ。研究全体の報告はここで読むことができる。

冒頭に挙げた私たちの格言に戻ろう。「あなたは見ているものになる」。Hidden Figuresは重要で啓発的な映画だが、これ1つだけで終わらせるわけにはいかない。このようなプロジェクトをもっと沢山実現していくことが大切だ。なぜならこれは若い女の子たちをSTEM関連のキャリアへと誘う強力な手段の1つなのだから。もし女の子たちのために、新しい針路を示したいのなら、ジーナ・デイビス研究所の研究で見つかった傾向を逆転させなければならない。

私はHidden Figuresが、業界の中で人びとが待ち望んでいた「目覚めの合図」となることを願うばかりだ。女の子たちに対するこの映画の影響を追跡することから始めよう。「ハンガー・ゲーム」と「メリダとおそろしの森」が世に出て以降、女性のアーチェリーに対する関心が高まっていることとの相関関係を研究した報告がある。どちらの映画も主人公は弓の使い手だ。研究によってわかったのは全国アーチェリー競技会への参加者数が前年に比べて倍増していることだ。きっとHidden Figuresの影響で、2018年に行われる調査までには、プログラミングコースを選択するアフリカ系アメリカ人の少女たちの、そして恐らく少女たち全般の数が劇的に増加するだろうと、私は確信している。

とはいえ、ボールを転がし続けるためにはどうすべきなのだろうか?エンターテイメントの中で強い女性のSTEM主人公の役割を、どうすれば増やしていけるかのアイデアを、共に考えて欲しい。ジョン・グレンは、キャサリン・ジョンソンを彼のチームの一員として信頼していた。彼は彼女がアフリカ系アメリカ人であることを全く気にしなかった。その仕事に最もふさわしいのが彼女だったというだけの話だ。これこそが、私たちが広く伝えなければならないメッセージだ。そうして行くことで、私たちは女性のコンピュータ科学者は例外ではなく普通のことなのだという認識に、社会を変えて行くことができる。ジョンソンの上司のアル・ハリスが言ったように。「私たちは皆でそこを目指すのだ、そうしなければ誰もそこには手が届かない」。

【訳注「Hidden Figures」という言葉には「隠されていた数字」(主人公たちが隔離された場所で数値計算の仕事をしていたことから)という意味の他に、「知られていなかった重要人物たち」という意味もある】

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(翻訳:Sako)