新世代プログラミング学習サービス「Progate」が1億円を追加調達して国際化を加速

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東大生が在学中に創業したプログラミング学習サービスの「Progate」(プロゲイト)が1億円の追加資金調達を実施したと発表した。フリークアウトグループDeNA、エンジェル投資家が引受先として第三者割当増資に応じた。2014年7月創業以来、同社はこれまでプレシードやエンジェル投資などで合計5000万円ほど資金調達をしており、累計資金調達額は約1億5000万円となっている。East Venturesが2014年11月に1500万円を投資しているほか、エンジェル投資家として、ロンドンブーツの田村淳氏やメルカリ創業者の山田進太郎氏が名を連ねている。共同創業者の加藤將倫CEO(上の写真右)はTechCrunch Japanの取材に対して、追加資金により国際化に注力すると話している。

「スライド+コード表示+実行環境」の学習スタイルを確立

プログラミング学習サイトは日本語でも英語でも数多くあるが、これまでのプログラミングサイトとProgateが違うのはスライドを中心とした初中級者向けの学習コンテンツを、うまく実行環境と組み合わせることで、ブラウザだけで学習が完結すること。これは初中級ではメリットのあることだと思う。

書籍の延長である電子書籍やHTMLをのぞくと、プログラミング学習コンテンツとしては動画が多かった。講義形式の動画やスクリーンキャストと呼ばれる動画コンテンツが多数存在している。MOOCsの代名詞ともなったCourseraは基本的に教科書を読み、講義を聴講するスタイルだ。日本でベネッセとも提携しているUdemyも映像講座を基本コンテンツとしている。

実際にコードが書けるようになるには実践が必要だ。これはスポーツや楽器と同じ。講義スタイルのオンラインコースでも、たいていは課題やノルマのような提出物があったりするが、「講義→コーディング」というところに不連続面がある。ここでクセモノなのが「分かった気になって手を動かさずに済ませてしまうこと」と「実行環境を用意すること」の2つだ。

実際に課題をやってみると必ず詰まる。すると、自分がたいして分かっていなかったことが分かる。そして講義や教科書に戻る。そしてまた課題をやる、というのが正攻法。ただ問題なのは、「講義と課題」を行き来して最後までたどり着ける人は、実は少ないのではないかということだ。ぼくはUdemyの「実践Pythonデータサイエンス」を受講したものの課題はほとんどやっていない。講義は素晴らしい。Pythonもすばらしい。しかし、すべての学習者がすばらしいわけじゃない。裏付けとなる客観データは持っていないけど、これはぼくだけの問題とは信じたくない。こう言うと必ずその筋のプロが憤然としてぼくに諭してくる。「課題やんないと意味ないよ」「分かった気になっても駄目だよ」。口を酸っぱくして経験者が言わなければならないのは、それだけぼくのような課題スキップによる落伍者が多い証なんだと思う。

講義と実践が分離している場合のもう1つの問題は、実行環境を用意する手間が大きいこと。

「最初に学ぶ言語」としてHTMLの学習を多くの人が推奨するのは、何の準備も要らず、しかも結果がすぐに表示されるからだ。しかし、UdemyでPythonを学ぼうと思うと自分でPythonの実行環境をダウンロードして用意する必要がある。実行環境を用意することを「環境構築」と呼んだりするが、これはこれで骨が折れることだったりする。

多くのプログラミング言語の教科書の1章目は「環境構築」の話だし、周辺ツールも含めたモダンな開発環境となると数冊の本を読まないと、その筋のプロが「快適」という状態にはならないことすらある。なぜそうなっているかというと、プログラミング言語はプロだけのものだったからだ。プロはUnixのコマンドラインの使い方を当然知っているし、生活の場ともいえる「シェル」や「IDE」の設定にハマった経験もあるのが普通だ。秘伝の設定スクリプトを先輩から譲り受けたりしてもしている。環境構築とういうのは、やりこむと盆栽のように楽しい面がある。でも作りたいものがあるからプログラミングを学びたいと考える初心者にはハードルでしかない。

そんなわけで、ブラウザに向かってコードを書ける環境というのが生まれてきた。その場で実行できて、どんどん学べるサービスとして2011年に話題をさらったのがCodecademyだった。ブラウザ上にコード実行環境があるという意味ではTopcoderやAtCoderといった「競技プログラミング」や、プログラミングの課題を解くことでゲームを進めるCheckIOといったサイトもある。日本だとPaizaというサービスを何度かTechCrunch Japanでも紹介している。

と、ここまでオンラインのプログラミング学習サービスの流れを書いて、やっとProgateのことが書けるのだけど、Progateは学習コンテンツであるスライドを見ながら、そのまま実行環境でコードを書いて試せる学習サービスだ。Progateで実際に少しコースをやってみて感じるのは、既存書籍の電子化やスクリーンキャストによる講義形式は、まだネットネイティブとは言えなかったのかなということだ。Codecademyと比べたときProgateがよく出来てるなと思うのは、コードを書いていて分からなかったら、またすぐに関連スライドを全画面ポップアップで呼び出せることだ。コーディング中にスライドを一括検索する機能もある。

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左が解説部でスライド呼び出しボタンが付いている。中央がコード編集、右が実行結果

 

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  2. progate03

  3. progate04

まとめると、こういうことだと思う。

かつてプログラミングの勉強は、多くの人は書籍で行っていた。講義も受けていたかもしれない。そしてコード実行環境のパソコンがあった。これらは独立して順番に電子化されてネットにやってきた。Progateは理論と実践の両方を1枚のブラウザ画面に入れてあって、いい感じにその2つを行き来できる工夫がしてある。この辺は、Progateの加藤CEOが自らが初心者としてプログラミングの勉強をしていた経験から考え付いた機能だそうだ。後発であることと、プログラミングというスキルの民主化から来る要請が背景にあると思うのだけど、Progateは新世代のプログラミング学習サービスと言っていいと思う。

実際、Progateの継続率や有料会員へのコンバージョンは高い。初級編を終わらせる人は全体の3〜4割だが、初級編を終わらせた人に限ると、その9割が中級編へと進むのだという。「ちゃんとやった人は続けてやってもらえる。中級編に進むところで有料会員になる人は約25%です」(加藤CEO)

法人需要に手応えを感じつつも、国際化にフォーカス

今のところProgateでは10言語で合計約50のレッスンを用意してある。提供コンテンツは、HTML、JavaScript、Ruby、PHP、Java、Pythonなど(これは人気順)だが、Gitやコマンドラインの使い方といったプログラミング言語以外のコンテンツもある。

レッスンは1つあたり3、4時間で消化できるサイズに区切っているという。2014年に起業して以来、6人ほどでコンテンツを作ってきた。徐々に知名度があがって現在ユーザー数は12万人、有料会員は5000人弱。すでに採算分岐点を超えつつあるそうだ。有料会員は月額980円で全レッスンが使える「プラス会員」と、チャットによるエンジニアのサポートが受けられる月額2980円の「プレミアム会員」がある。

法人向けの「Progate for Team」(1人あたり月額約4000円でボリュームディスカウトあり)や、中学・高校向けの「Progate for School」も展開している。「学校教師の方が使ってくれていて、ご意見箱から授業で使えないかと要望があったんです」(加藤CEO)というのが提供の背景で、学校向けでは約10の高校で授業教材として活用されるているという。また法人向けも問い合わせから要望のあった「一括支払い」に応えた形で、現在10社ほどで導入され、社内研修などに利用されているという。法人向けは進捗管理画面などもある。

積極的に法人営業をやれば事業の伸びは見えているように思える。加藤CEOによれば、すでにProgateで提供しているコンテンツ以外にも、自社でコンテンツを作ってProgateの枠組みで提供したいというプラットフォーム利用のニーズもあるという。日本のSIerなんかは自社フレームワークやレガシーシステムも多いだろうから、社内研修向けコンテンツの受託ニーズはありそうだ。

ただ、加藤CEOが注力するのは国際化。特に英語市場への進出だと言い切る。「国際化か法人向けかで悩んでいましたが、(メルカリCEOの)進太郎さんに国際化をやるしかないと言われて踏ん切りがつきました」という。3年ほど先行するCodeacademyは3000万ユーザーと桁が2つも違うが、「将来的にはCodeacademyと戦って行きたい」と加藤CEOは話す。今回の資金調達ラウンドで投資家として入っているフリークアウトが東南アジアに拠点を持つことから、東南アジアも視野に入れているそう。「小さく出してみて、どこの国で伸びるか、何が人気になるかを見ながらやっていく」(加藤CEO)。

現在は海外経験のある加藤CEOが英語化を進めているが、コンテンツの国際化を担当するチームメンバーを探しているところという。

初心者から「作れる人」を生み出す

プログラミング学習サービスや、コンテンツは非常に多く、従来からある書籍市場とも重なるところがある。では、どういう方面を目指すのか? 現在は初中級者向けに見えるが、もっとプロ向けコンテンツへも拡充していくのだろうか?

「初心者という入り口で終わるつもりは全くありません。ただ、ターゲットは圧倒的に初心者です。いちばんのKPIは「作れる人」が出ることなんです。起業したり、実際の開発をやる人が生まれること。実際、Progateで学習した人がその後にエンジニアとして就職したという話も出てきています」(加藤CEO)

プログラミング学習サービスは、その特性を考えると、プログラミング関連書籍市場のように「一人勝ち」のような状態にはならないのかもしれない。実際、Progateユーザーであっても、より中級以上のコンテンツが多いドットインストールを併用するユーザーもいるという。

Progate代表の加藤氏は2014年9月に東京大学を休学。2017年3月末に退学している。インターンを入れて現在はチームメンバーは15人。加藤氏と同じく退学したメンバーもいれば、卒業したメンバーもいるそうだ。

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