想定範囲内の新製品、遅い買い替えサイクル、値下げ―、タブレット市場で今何が起きているのか

次の記事

YouTubeが[笑い]も自動キャプション―機械学習で3種の環境音を認識

過去一ヶ月の間にAppleSamsungの両方が、どちらにとっても2014年以来初となるフラッグシップタブレットのリニューアルを行った。2014年から今までの間に、タブレット市場ではさまざまな変化が起きたが、そのほとんどはタブレット市場全体の売上のように悪い方向への変化だった。IDCは昨年のQ4のタブレット出荷台数は前年比で20%減少したと報じ、Strategic Analyticsは9%減と伝えている。

どのくらい全体の出荷台数が落ち込んだか(そしてそもそも何をタブレットと考えるかについて)については議論の余地があるものの、少なくともタブレットがパソコン市場を食うという当初の予測は間違っていたということがわかる。タブレット市場の不振に関する理由はさまざまだが、ひとつには、メーカーが確信していたほどユーザーはタブレットを買い替えていないという事実がある。

「今でもiPad 2を使っている人がいます」とIDCでシニアアナリストを務めるJitesh Ubraniは語る。「(オリジナルの)iPad MiniやiPad Airもまだ使われていて、Appleも最近までサポートを行っていました。消費者はまだ古いモデルを使い続けていて、買った当初から何ら変わりなく使えていると感じているようです」

これにはいくつかの背景がある。まず、タブレットはスマートフォンと同じくらいのスピードで買い換えるものという認識をユーザーが持っていない。スマートフォンに関しては、キャリアのアップグレードサイクルを通して、パブロフの犬のように消費者に買い替えサイクルが刷り込まれていたのだ。

また、私たちはスマートフォン(さらにはノートパソコン)ほど、日常的にタブレットを使っていないという単純な背景もある。多くのユーザーは、タブレットを家に置いておいて、Netflixを見るときに使うくらいだ。

Strategy Analyticsでシニアアナリストを務めるEric Smithは、本日のiPadのニュースを例に挙げ、製品の機能改善スピードの遅さが、タブレット業界がいまいち盛り上がらない理由のひとつだとしており、「有機ELを使った柔軟性のあるスクリーンや、4Kディスプレイのような一大イノベーションが生まれない限り、過去数年のような頻度で買い替えは起きないと思います」と語っていた。

日々スマートフォンのディスプレイサイズが大きくなり、今や6インチのレンジの製品が市場に溢れているため、それよりも大きなデバイスの必要性が下がっているということも、タブレットの売上減少の一因だ。パソコンとの比較で言えば、Windows 10を搭載したコンバーチブル型ノートパソコンがタブレットのシェアを削るかたわら、かつてタブレットの一大ユースケースと考えられていた教育の世界では、Chrombookの利用が広がっている。

GartnerのMikako Kitagawaは、誕生時の盛り上がりが一段落して、タブレットの機能性には限界があるということに気付たユーザーのネガティブな感情が、売上減につながっていると考えている。「いざタブレットを使いはじめたときに、ユーザーはパソコンと比べて、タブレットでできることには限りがあると気付いたんです。携帯性という観点でも、タブレットはどこにでも持っていくには大きすぎますしね」と彼女は話す。

つまり、メーカーの考える買い替えサイクルにのらなくなったユーザーがいるだけでなく、もっと多くの消費者はそもそも既に持っている2つのデバイスで満足しており、3つ目はいらないと考えているのだ。そして携帯電話が大きくなり、パソコンがタブレットのような形になっていく中で、ふたつのデバイスのギャップは狭まっていく一方だ。

本日Appleが発表した値下げは、タブレット市場の不振に対する同社の反応だったのかもしれない。Appleは買い替えのインセンティブをさらに強め、迷っている消費者の背中を押して、そろそろ家にタブレットを2台置いておくにはいい時期じゃないのかとささやいているのだ。とは言っても、iPad Proの価格を昨年の9月に大幅に下げた後も、販売台数は減少していたのだが。

そしてこのAppleの動きは、プレミアムタブレット全体の今後の動きを示唆しているかもしれない。SamsungはTab S3を599ドルで販売すると先週発表したが、今週のiPadに関する発表を受けて、今後S3の価格を大幅に下げたとしても驚きではない。

これら全ては、プレミアムラインの価格が下がり、安価なタブレットを製造しているメーカーが、もうこの利益率ではやっていけないという状況にまで進む可能性がある業界全体の収束化の一部なのだ。そういう意味では、AmazonはFireタブレットをコンテンツの受け皿(=コンテンツビジネスの一部)と位置づけることで、価格を下げることができるため、タブレット業界の中では珍しく良いポジションにいる。一方でKitagawaは、子ども向けのタブレットの不調で、ローエンドタブレットも逆風を受けるかもしれないと指摘する。

いずれにしろ、ここしばらくはタブレットの売上が下がり続けそう、というのが今のところの共通認識のようだ。AppleとSamsungの二大メーカーから新商品がリリースされれば、いくぶんかは売上減少を軽減できるかもしれないが、大方の意見としてまだタブレット業界は窮地を脱せていない。

各メーカーが携帯電話や他のカテゴリーの製品にシフトしだしたのも当然のことだ。SamsungのTab T3の発表は、イベントの最後に行われた新しい携帯電話に関する発表までの場繋ぎのようにさえ感じられた。さらに今朝のiPadに関する発表は、Keynote風の大きなイベントではなく、ニュースリリースの体裁をとっていたことも記憶に新しい。

もちろんタブレット市場がこれで終わりというわけではなく、今でも何千万台というタブレットが四半期ごとに出荷されている。しかし新たな革命が起きるまでは、一旦気持ちを落ち着けよう。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter