テック業界
女性差別

なぜ今、テック業界は女性問題に力を入れるべきなのか――声をあげはじめた被害者たち

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テック業界における性差別はこれまで公然の秘密のように扱われてきたが、ここ数年の間に私たちは転換期を迎えたようで、声をあげる女性の数は増えつつある。

最近では、6人の女性がVCのJustin Caldbeckからセクハラを受けたと暴露した。そのうち3人は報復を恐れて名前を伏せたが、残りの3人は実名を公開しており、この傾向は強まりつつあるように見える。

彼女たちによれば、Caldbeckは女性の太ももをテーブルの下で掴んだり、プレゼンしていた女性に対して続きをホテルの部屋で行うように誘ったり、性的なメッセージを送ったりといったセクハラ行為におよんでいたという。さらに、彼の不適切な言動はBinary Capital(ファウンディング・マネージング・パートナーだった彼は、同社から「無期限の休職」を言い渡された)時代よりも前から続いていたようだ。

実名を公開した女性のひとりであるNiniane Wangは、Medium上のポストに「7年間ものあいだJustinの行為を暴露しようとしていた」が、Caldbeckが記者を脅していたため、この話をなかなか公にできなかったと記している。

それでは、なぜ最近セクハラ問題についてオープンに語る女性が現れはじめたのだろうか?

なぜ今なのか?

Susan FowlerはUberの文化を根底から変えたと言われている。彼女以前だと、Ellen Paoが女性差別を理由にKleiner Perkinsを訴えた。結果的に彼女は敗訴したが、この事件がテック業界の女性問題に関する議論に火をつけたと言われている。最近ではトランプ大統領やBill Cosbyの女性問題を受けて、世界中で500万人もの女性や支持者がウィメンズ・マーチに参加し、アメリカではベトナム戦争反対運動以来、最大規模のデモとなった。「女性の権利は人権」というメッセージを伝えるために行われたこのデモで、どれだけ多くの人がこの運動を支持しているかということが明らかになり、真実を伝えようとしている人たちにとっては大きな励みとなった。

上記のような出来事や、力を持った男性であればセクハラ行為も隠蔽できてしまう現状に嫌気がさした女性たちの存在を考えると、今や女性は声をあげるのを恐れなくなったばかりか、声をあげなければいけないと感じるようになったということがハッキリとわかる。

スターなら皆なんでもやらせてくれる

「股間を掴め」で終わるこの有名な言葉は、当時はまだ大統領候補だったドナルド・トランプのものだ。2005年のBilly Bushとの会話から抜き出されたこの言葉は、選挙活動中の民主・共和両党に大きな衝撃を与えた。これをロッカールームトーク(公の場では話せないような下品な内輪話)と片付ける人もいるが、未だにこの発言(やその他の問題発言)を受け入れられない人もいる。

インターネットは、女性を餌食にするような男性を人目にさらす上で有用なツールになりえる。Caldbeckの記事がそれを物語っている。Uberの件も、Fowlerが女性蔑視で男性中心の企業文化に関する暴露記事を公開したことで大きな問題となった。どうやらUberは以前から数々の問題(一連の訴訟や業績の傾き、海外市場での問題など)を抱えていたようだが、Fowlerが2月中旬に公開した「Uberでの極めて奇妙な1年間について」のポストがCEOのTravis Kalanickら幹部の失脚を含む、同社の大改革のきっかけとなった。

しかし未だに、女性が声をあげるにはかなりの勇気が必要だ。インターネット上では、声をあげた被害者が逆に非難されることもよくある。実名や顔を公開することで、発言の妥当性を疑うような質問や嫌がらせ(「そのとき何を着ていたんですか?」「そんな遅くに二人っきりにならなければよかったのに」等)を受ける可能性は高くなりさえする。

さらに、セクハラや性的暴行は立証しづらい問題だ。Bill Cosbyの裁判を見てみればその様子がよくわかる。30人もの女性が彼を同じ罪で訴え、Cosbyが暴行を繰り返していたことも公然の秘密であったにもかかわらず、評決不能で裁判はやり直しになった。

自分の不幸な経験について公に語るというだけでも十分に恐ろしいことなのだろう。Caldbeckの被害者3人も個人情報を明かしていない。真剣に取り合ってもらえないばかりか、投資や職業など自分の人生に関わる重要事項をコントロールできる立場にある人からひどい仕打ちを受けていると、女性たちも自分たちは重要ではないのだと思いこんでしまう。

しかし、テック業界にも望みはある。Cosbyやトランプは報いを受けなかったものの、シリコンバレーでもこれまでとは違う結果が出始めている(少なくともここ数か月では)。

まだまだ続く長い道のり

最近とあるVCのイベントに参加し、新しくそのVCに加わったパートナーのひとりに、直近の数か月でどのくらいの数のプレゼンを見たか尋ねた。「大体50件くらいですかね」と答えた彼に対し、他の人が「その中に女性は何人いますか」と続けて質問した。彼は少し考えてから、ひとりだと答えた。たったひとりだと!

その理由は「女性は起業家精神に欠ける」や「女性は素晴らしいアイディアを持っていない」といったことではない。女性が声を奪われ、ファウンダーではなくデート相手のように扱われることで、社会全体に不利益が生じている。女性への脅しが繰り返されていなければ、どれだけ素晴らしいビジネスが誕生していたかと考えると悲しい気持ちになる。

幸いなことに、今では女性が沈黙を破り「公然の秘密」について声をあげはじめた。しかし、女性が真実を伝えられるようになったからといって全てが解決するわけではない。

問題認識は改善のための第一ステップなのだ。Uberの取締役会も心から企業文化を変えなければならないと認めている。しかし、そこからアクションが生まれなければ何の意味もない。Uberは本当に変わることができるのだろうか? その答えはまだ見えないが、少なくとも彼らは企業文化の改革に向けた第一歩を踏み出したようだ。その一方で、UberやBinary Capitalの誰かだけが悪いわけではない。彼らは問題が明らかになっただけなのだ。つまり、本当に女性問題を解決するには、シリコンバレー全体が変わっていかなければならない。

では、なぜ今なのかというと、いつであろうと私たちは男性の支持者と共に(大きな)声をあげ続けなければいけないのだ。そうすれば、もしかしたら時代錯誤な男性も自分の行いが間違っていたことに気づき、彼らが人目にさらされるようになるかもしれない。

※もしもVCやテック業界で権力を持つ人からのセクハラ行為で悩んでいる人がいたら、sarah(ドット)buhr(アットマーク)techcrunch(ドット)comまで、もしくはSignalでご連絡ください。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter