自動仕訳で特許侵害なし、マネーフォワードがfreeeに勝訴

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会計の仕訳項目を機械的に判定するアルゴリズムを巡ってfreeeとマネーフォワードの間で争われた特許訴訟が9カ月という比較的短期で終結した。東京地裁が先ほど(7月27日午後に)出した判決は、freee側の請求を棄却するもので、特許侵害は認められないという結論だった。

訴えは、2016年10月にfreeeが東京地方裁判所に提訴した「MFクラウド会計」の差止請求裁判だ。TechCrunch Japanでも同年12月に記事にしている。今回の判決を端的にいうと、やっていることは「自動仕訳」と同じでも、それを実現している方式が違うのでfreeeが持つ特許をマネーフォワードが侵害しているとは言えない、ということだ。

freeeの会計クラウドでは取引情報に「JR」「日本交通」などとあれば、これを「旅費交通費」として計上する自動仕訳機能がある。このときの仕訳はキーワードと勘定科目を並べた「対応テーブル」によって判別する。さらに、複数キーワードが含まれる場合には、どのキーワードを優先して判別すべきかを定める「優先ルール」もある。この自動判別方式をfreeeは2013年10月に特許として出願。2014年3月に「会計処理装置、会計処理方法及び会計処理プログラム」として特許が成立している。

一方、訴訟の対象となったマネーフォワードの「MFクラウド会計」は、2016年8月に「機械学習を活用した勘定科目提案機能」を発表して、自動仕訳機能の提供を開始している。マネーフォワード側は、対応テーブル方式の場合、テーブルに設定されていないキーワードの取引は勘定科目を提案できないが、機械学習による自動生成アルゴリズムでは過去のデータに存在しなかった明細の取引でも勘定科目を提案できるという違いがあると主張。両方式の違いは明らかだというマネーフォワード側のこの主張が、今回の判決で認められた形だ。

追記と修正:7月27日23時53分】—————-
freeeのクラウド会計ソフトは機械学習を用いた自動仕訳機能を提供していて、その特許も成立しています(特許第5936284号、出願は2014年7月)。争点となった特許は「対応テーブル」方式について成立しているものであったものの、現行のクラウド会計ソフトfreeeは対応テーブルと機械学習の両方を使った実装になっています。このことはTechCrunch Japanでも2016年6月に記事にしています。したがって、freeeのクラウド会計ソフトが対応テーブル方式のままであるかのような上記段落の書き方は誤りでした。訂正して関係者にお詫び申し上げます。

一方、ではなぜ機械学習を用いた方式に関する特許ではなく、対応テーブル方式の特許による差止請求をしたのか、という疑問がわきます。この点については「マネーフォワードの機能を外形的に確認したところ、今回対象とした特許の方に侵害があるのではないかと判断した形です。今回対象としているものは機械学習とは関係していない機能となっています」(freee広報部)とのことです。
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特許訴訟のような知財裁判では、訴えられる側への配慮として「インカメラ手続き」が用意されている。非侵害の立証のためのに技術詳細を開示する必要がある場合、その情報を公にするのではなく、裁判所だけに見せることができる。詳細情報を一般に開示してしまって模倣されるのを防ぐためだ。今回の裁判ではインカメラ手続きも実施され、マネーフォワード側は当該技術の文書を裁判所へ提出している。ただ、裁判所はここでもマネーフォワード側の主張を認める形で、「秘密としての保護の程度が証拠としての有用性を上回る」ことから、freee側の文書提出命令の申し立てを却下している。

地裁における知的財産訴訟は平均して14カ月、約半数が1年以上の審理期間となっている。それに比べると今回の訴訟は9カ月と比較的早期に終結した形だ。freeeは2週間以内なら知財高裁に控訴できる。なお、知的財産訴訟の判決文は明日以降に裁判所のサイトに掲出される予定だ。TechCrunch Japanでは判決書の全文をマネーフォワード側から入手したので、審理と争点の詳細について気になる読者は、このリンクから見てみてほしい。

追記:freeeが判決後にプレスリリースを出した。発表文のなかでfreeeは、控訴などの必要な対応を今後検討するとし、特許の有効性が否定されたものではなくプロダクトへの影響もないとしている。