【続報】主導権をもって世界を獲りに行きたい―、KDDIによる買収をソラコム玉川氏が決めたワケ

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日経新聞が第一報を報じたKDDIによるソラコムの買収について、KDDIから午後3時に公式な発表があった。KDDIの発表によれば、2014年11月設立のIoT/通信系スタートアップのソラコムの発行済株式の過半をKDDIが8月内に取得して子会社化する(全株取得は誤報)。取得額は明らかにされていない。ただ、これまでソラコムはシリーズAで約7億円、シリーズBで約30億円を資金調達していることから、企業評価額は200〜300億円程度ではないかと考えられる。

TechCrunch Japan編集部は、今回の買収の背景と狙いをソラコム共同創業者でCEOの玉川憲氏に聞いたのでお伝えいしたい。

現在ソラコムが提供中のサービスについては全て継続する。SORACOMというブランド名も開発チームも変わらない。二子玉川(駅を挟んで楽天の反対側だ)にある開発拠点と赤坂(中央省庁にも近い)にある拠点もそのままとなる。2016年夏頃からソラコムはKDDIと協業を進めてきたが、今後もその関係性でサービスや事業を作っていく。

今回の買収ニュースに対する業界内の反応はさまざまだ。3年弱での大型M&Aはスピード感があるものの、もっと事業規模や企業価値を大きくしてからのエグジットもできたのではないか、IPOという選択肢もあったのではないかという声がある。ユニコーンになれたのではないか、ということだ。また、これまでMVNOとしてNTTドコモ回線を使うなど通信キャリアに対して中立でもあったバランスが変わるという見方もある。

これに対してソラコムの玉川CEOは「当初からIPOもM&Aも含めて選択肢は検討してきて、いろいろ考えた上での結論」として次のように話す。

「当初から日本発のグローバルプラットフォームを作りたいと思いで創業しています。これまではMVNOというある意味ではトリッキーなやり方でやってきました。立ち上げタイミングや日本の制度の中でスイートスポットをつかめたからうまくやってこれたと思っています」

「一方、今後IoT通信プラットフォームをやろうと思うと、5GのIoT向けサービスを、いかに早く市場投入できるかというのが勝負。1つのキャリアと組むのがベストだと判断しました」

ソラコムのコアネットワークのアーキテクチャーは最初から5G寄りで設計されていて、そういう意味でも特定の通信キャリアに入って、その中の深い部分から市場を獲りに行くのが理にかなうという。

日本国内で「思った以上にスムーズに立ち上がった」(玉川CEO)一方で、海外は想像以上にスタートアップ企業に荷が重いということもあるようだ。

「日本だとすでに7000以上の顧客、パートナー数もが350社となっていて事業的にも成長しています。海外は昨年アメリカ、今年はヨーロッパで展開していて、こちらもすでに800アカウントとなっています。でも、まだ日本の10分の1。いちばんネックになっているのは安いデータ料金、つまり海外キャリアとの交渉力です。ここに関してもKDDIグループに入ることで、大きな交渉力が得られると考えています」

TechCrunch Japanでもお伝えしているが玉川氏は元々Amazonクラウド、AWSの元エバンジェリストで国内でクラウド普及に尽力したことでも知られている。世界を狙うならAmazon傘下に入る選択肢もあったのではないだろうか?

「今回のM&Aを決めるにあたって、KDDI以外のキャリアやクラウドベンダーも検討しました。Amazonのことは良く分かっていますし、ソラコムがAmazonに買収されれば、Amazon Simple Connectivityというような名前になる未来も想像が付きます(笑) でもAmazonはグローバル企業です。おそらくチームは解散となるでしょう」

「ITの世界では日本からプラットフォームと呼べるものはこれまで1つも出てきていません。日本発のグローバルプラットフォームを作り出したいんです。ぼくらが主導権をもって世界を獲りに行きたいんです、そのためにはKDDIと組むのがベストという結論だったのです」

テクノロジーをコアとするスタートアップ企業で、3年弱という短期に3桁億円以上の企業価値を作り出し、大手企業へM&Aというエグジットを決めた事例は日本ではめずらしい。約40人の社員は、ほぼ全員がストックオプションを手にしており、この意味でもスタートアップ業界にとっては模範となるような成功事例と言えるだろう。世界を獲るプラットフォームの創出を目的として考えると、5Gの本格立ち上がりのこれからがソラコムのとって本当のチャレンジとなりそう。プラットフォーム創出という点でも大手企業によるスタートアップの買収というオープンイノベーションという文脈でも、今後も多いに注目だ。