ソフトバンク、小規模事業者向けローンプラットフォームKabbageに2.5億ドル投資

次の記事

顕微鏡で観察する‘微小ロボット’のモジュールが、形をさまざまに変えてたった一つの細胞を捉える

Kabbageは、種々のデータに基いた信用情報を使って小規模事業者や個人に少額の資金を自動で貸し出すプラットフォームを運営している。11万5000人の顧客と35億ドルのローン金額を誇る同社は、本日(現地時間8月3日)大型資金調達について発表した。

Kabbageはこの度開催されたシリーズFで、ソフトバンクから2億5000万ドルを調達。Kabbageの共同ファウンダーでCEOのRob Frohweinによれば、調達資金はアメリカ国内での事業拡大や各業種の状況にあったローンを提供するための分析ツールの開発、アジアをはじめとする新市場への進出、決済サービスのような新たなプロダクトを獲得するためのM&Aなどにあてられる計画だという。

これでKabbageの累計調達額は5億ドル(+35億ドル分の借入)に達し、同社の10億ドル超の評価額にもさらなるはずみがつくだろう。

Kabbageを知らない方のために説明すると、同社は2015年のシリーズEで1億3500万ドルを調達した際に、評価額が10億ドル超のいわゆる「ユニコーン」企業の仲間入りを果たした。今週本誌が行ったインタビューでは、CEOのFrohweinが具体的な評価額に触れることはなかったが、今回の資金調達が「有意義なアップラウンドだった」と彼は語っていることから、おそらく現在の評価額は12億5000万ドルから20億ドルの間といったところだろう。

アトランタで2009年に設立されたKabbageは、ビッグデータを使ったローンサービスを提供する企業の中では草分け的な存在だ。同社は企業や個人のソーシャルメディア上のプロフィールから、QuickBooks(会計ソフト)のアカウント情報、さらには大局的なマクロデータまで、何百という情報源から顧客のデータを入手し、貸出の可否やローン金額を決めている。

OnDeckCan Capitalをはじめとする小規模事業者向け貸出プラットフォームの疑わしいビジネスモデルが取り沙汰され、オンラインローン業界全体が揺れ動く中、Kabbageはそれをものともせずに成長を遂げた。Frohweinはビッグデータの活用をその理由に挙げ、150万以上のデータポイントをもとに借主の信用力を判断しているからこそKabbageのビジネスはうまくいっているのだと語った。

「少し前にオンラインローン業界が窮地に立たされたとき、Kabbageの社員はみんな不安な表情を浮かべていました。でも私はそこで『ようやくだな!』と言ったんです」とFrohweinは当時の状況を語る。「そのとき何が起きたかというと、自分たちのソリューションを差別化しようと努力していた企業とそうでない企業の間に明確なラインが引かれたんです。つまり、業界全体がむやみに持ち上げられる流行期を過ぎたということです。その結果、少数の優秀な企業だけが生き残ったと。Kabbageはその中に含まれると考えています」

また彼は、Kabbageのローン事業は黒字だが、プラットフォーム事業はまだ利益が出ていないと語った。後者は2015年にローンチされた新事業で、Kabbageを含むローン事業者にオンラインプラットフォームを提供するものだ(顧客にはKarrotと呼ばれる消費者向けローン事業を運営するKabbage自体に加え、ING、Santander、Scotiabankといった大手金融機関も含まれている)。「会社全体としては第4四半期にはGAAPベースで黒字になる計画です」とFrohweinは付け加えた。

Kabbage以外にもビッグデータ戦略を採用しているフィンテック企業が存在する。具体的にはKreditech(銀行のサービスを受けられない人に対してクレジットスコアを作る手助けをしており、Peter ThielとNaspersを株主に持つ)やFundbox(こちらもJeff Bezosを含む多くの面白い投資家を株主に持つ)、BlueVine(Citi Groupらの投資先)がその一例だ。しかしKabbageはデータの活用方法を次のレベルへ引き上げようとしている。

ひとつめの戦略が業種やビジネス形態に基づいたローン商品の開発だ。例えば建設業と飲食業では、キャッシュフローにかなり大きな違いがある。そこでKabbageは各企業の実態に合ったローンを提供し、不必要なデフォルトや障壁といった、借主に関する十分な情報があれば避けられるはずの問題を解消したいと考えているのだ。

また、Kabbageの顧客は他社に比べてロイヤルティが高いと同社は話す。Frohweinによれば、平均的なユーザーは3〜4年間に20回もKabaggeからローンを借りる一方、業界平均は2.2回だという。

調達資金の使途として挙げられた、M&Aや新プロダクトのローンチにも注目だ。Kabaggeが業界統合を狙ってOnDeckを買収するのではという話もあったが、情報筋によればこれは単なる憶測に過ぎず、M&Aの狙いは業界統合よりもプラットフォームに新たなサービスを追加することなのだという。

Frohweinから新プロダクトのローンチやM&Aに関して具体的な話はなかったが、彼は決済が現在興味を持っている分野であることは認めた。

「PayPalとSquareは単なる決済サービスから発展して、今では企業向けのローンサービスを提供しています」と彼は語る。「この2種類のサービスの間にはかなり深い関係がある、と考える企業が存在するのは間違いありません。そう考えると、私たちが決済事業を始めるのも全くの的はずれではありませんよね」

最近ソフトバンクは1000億ドル級の巨大な「ビジョン・ファンド」を通していくつかの大型投資を行っているが、今回のKabbageへの出資はソフトバンクグループが直接行ったものだ(不思議なことに1000億ドルと比較すると2億5000万ドルという額が大したことないように感じられてしまう)。将来的にはビジョン・ファンドとも関わるようになるかもしれないが、少なくとも今のところは、ソフトバンクによる投資がかなり面白いチャンスに繋がる可能性がある。

両者のコラボレーションは大きくふたつの形をとることになるだろう。ひとつめはKabbageのローン事業・プラットフォーム事業のさらなるアジア展開だ(現在アジアではホワイトラベルのプラットフォーム企業として営業している)。

ふたつめは、ソフトバンクグループの投資先との協業だ。この点に関してはまだ何も発表されていないが、ソフトバンクはSpring(多くの小規模事業者を顧客に持つ)、Lyftをはじめとするライドシェアリング企業各社(個人事業主という小規模事業者に依存)、SoFiなどさまざまな企業の株主を務めている。

そう考えると、Kabbgeへの出資は、ソフトバンクのネットワークを活かせそうな企業を狙った賢い投資だと言える。

「ソフトバンクは新しいテクノロジーやデータの力を使って、顧客体験を変え、市場を拡大しようとしているマーケットリーダーに投資しています」とソフトバンクグループで役員を務めるDavit Thevenonは声明の中で述べた。「Kabbageへの投資を決めた理由は、同社がオープンデータを利用したユニークな自動ローンプラットフォームを運営していること、そして世界中の小規模事業者を支える存在としてのポジションをうまく確立したことです」

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake