Unity Biotechnology
Longevity Fund
Laura Deming

23歳のバイオVCに投資戦略を聞く――老化防止ファンドのローラ・デミングは14歳でMITに入学した天才

次の記事

今年のウェアラブル市場は17%成長、販売数3.1億台、売上305億ドルの見込み――Gartner予測

ローラ・デミングはありきたりのベンチャーキャピタリストではない。いや、デミング自身がいろいろな意味でありきたりの人間ではない。

現在23歳のローラ・デミングはニュージーランドで生まれて家庭で教育を受けた後、数学と科学、とくに老化を防止するテクノロジーに強い興味を抱くようになった。デミングは11歳のときに老化防止の研究で著名な分子生物学者、Cynthia Kenyonにメールし、「家族とアメリカ旅行する機会にサンフランシスコの研究室を見学できないだろうか?」と尋ねた。Kenyonは見学を承諾しただけでなく、デミングの訪問の後、この研究室で働きたいという希望にもイエスと答えた。

ローラの希望をかなえるためデミング家はアメリカに引っ越した。結局家族もこの異例の決断を後悔してはいないだろう。ローラ・デミングは14歳の若さでMITに入学し、2年後、つまり16歳で大学をドロップアウトした。それはピーター・ティールのThiel Fellowshipプログラムに参加するためだった。さまざまな面で論議を巻き起こすベンチャー・キャピタリストのティールがその前年にスタートしたのは、大学をドロップアウトして「新しい事業を始める」20歳未満の若者に10万ドルの資金を供与するというプログラムだった。

「新しい事業」というのは始めてみてから何度も方向を変えることがある。しかしデミングの場合はそうではなかった。デミングの関心は徹底してアンチエイジングだった。デミングはいくつかのスタートアップの起業を経てベンチャーキャピタリストに転じ、老化防止の研究、開発を行うスタートアップを支援するLongevity Fundを設立した。このアーリーステージ・ファンドが2200万ドルに上る2回目の組成を完了したの機にTechCrunchではローラ・デミングにインタビューを試みた。

TC: あなたのキャリヤがカリフォルニア大学サンフランシスコ校の教授への1通のメールで始まったというのは驚くべきことですね。

LD: [Cynthia Kenyon] はすばらしい人です。今まで会った人の中で最高。

TC: 彼女の研究室ではどんなことをしたのですか?

LD: 私たちは小さい透明な虫を実験に使いました。実験用のゼリーの上に置くと透けてみえるので何が起きているかわかるのです。遺伝子を操作するとその結果が分かります。寿命を延ばしたのか縮めてしまったのか? 栄養供給を減らすと虫の寿命が伸びました。その状態である遺伝子をノックアウトして取り除くとどうなるか? 私はまったくの初心者でしたが、一番寿命の長い虫を作り出そうとする熱意に燃えていました〔笑〕

TC: MITではどんなことを?

LD: 私は物理を専攻しましたが同時にいくつかのラボでの研究も続けていました。そのひとつがLenny Guarente [寿命延長の研究で知られる生物学者]のラボです。とてもおもしろかった。私は科学者になるつもりでしたが、ティール・プログラムのこと知っている院生がいて応募してみたらと勧めてくれました。そこで応募してみたのですが、最近ティール・プログラムのディレクターの一人と話す機会があって、彼は私が失敗するだろうと思っていたそうです。もちろん当時彼は熱心に手助けしてくれましたが。私が最初のファンドの組成を完了したとき、彼は「ここまでやるとは思っていなかったよ」と言ってました。

TC: なぜでしょう?

LD: ひとつには、ほんの少し前まで、ほとんどのベンチャーキャピタリストは老化防止研究になにかビジネスチャンスがあると思っていなかったということがあります。アンチエイジングという分野は非常に若いテクノロジーなので普通のVCたちは何も知らなかったのでしょう。しかし私は小さいころからずっとこの分野に強い興味があり、研究を続けてきました。ビジネスチャンスについての見通しとは別に、知識は豊富でした。老化防止というのは[多くの有力バイオテック企業が]ガンの研究をするのと似たところがあります。ガンの研究に将来性があるならアンチエイジングにも同じくらい将来性があるはずだと私は考えました。

TC: 1号ファンドの額はどれほどでしか?

LD: 総額で400万ドルでしたが、私は大いに満足しました。実際私はティール・プログラムの10万ドルは十分な額だと思っていました。サンフランシスコに来てみると、この額で起業し2年間やっていくことは十分可能でした。私が資金集めを始めたのは17歳のときで、実際若すぎて法律的には契約にサインできる年齢に達していませんでした。それ以前にお金の管理をした経験もありませんでいた。しかし私は投資家にアンチエイジングを説明し、投資を決意させることができました。さいわい何人かの重要な投資家を確保でき、私がこれぞと考えた5社に投資することができました。

TC: その重要投資家の一人はピーター・ティール?

LD: 私たちはLP(リミッテッド・パートナー)の具体的な名前は公開しないことにしています。

TC: 「わたしたち」ということですが、あなたはこのLongevity Fundの唯一のゼネラル・パートナーでは?

LD: そのとおりです。しかしこのファンドを運営するには大勢の人々によるオフィス運営が欠かせません。Longevityという組織はさまざまな分野のトップクラスの人材の協力によって成り立っています。ですから私がゼネラル・パートナーであっても業務のすべてを取り仕切きれるわけではありません。

TC: そうしたアドバイザーはいくぶんかのファンドの持ち分も取得する?

LD: そういう場合もあります。ただ若い層、特に院生クラスではキャッシュによる報酬を受けることを選ぶ場合も多いですね。私たちはそれぞれの場合に応じてベストのインセンティブを提供できるよう努力しています。

TC: あなたファンドの投資企業の一つはUnity Biotechnologyですね。 老化を逆転させる治療法を研究しているスタートアップですが、この会社は今週1億5100万ドルのシリーズBラウンドを実施していますね?

LD: そのとおりです。ただしLongevityのポートフォリオ企業はすべて [少なくとも]シリーズAのラウンドで3000万ドルかそれ以上を調達しています。

TC: そうした投資額から判断すると、SPV〔特別目的事業体〕を組成したのは一部の投資先が大ブレークすると考えてのことですね?

LD: 私たちの選んだ投資先にLPがフォロー投資してくれることを期待してます。双方に利益があるようできるかぎり努力中です。Unityの場合、私たちは最初期から最大の投資をしてきました。ファウンダーのNed Davisが驚くべき人物であり、彼のアンチエイジングの研究は必ず実を結ぶと信じたからです。

TC: 今回クローズした2回目のファンドはどのように投資する計画ですか?

LD: 8社から10社に投資していくつもりです。

TC: 最近、投資家が老化防止分野に突如関心を抱き始めたようです。これはあなたのファンドの運営を難しくしませんか?

LD: いいえ、そういうことにはならないと思います。最初のファンドを組成したとき、わたしたちは投資契約を結ぶ前に候補のスタートアップを最大6ヶ月にわたって観察してきました。スタートアップが実際に資金調達を始める前から調べていたわけです。LPがわれわれのファンドに利点を見出したのはそこです。Longevityがスタートアップについて詳細に知っているため、LPは投資する際にデューディリジェンスを細々とやり直す必要がない。どんな会社に投資するのか予めわかっているというのは有利です。わたしたちは会社のあらゆる面について調べ、[この分野で]ベストの会社だという確信を持ってからポートフォリオに加えてきました。

その上でいえば、これまで困難だったのは有望なスタートアップに新規の投資家を引き込むことでした。つまりアンチエイジングは有望なビジネスとなるということを納得させるのが大変だったのです。しかし今やそういう困難はありません。これはたいへんうれしいことです。わたしたちはポートフォリオ企業に適切な投資家を探し出すことに専念できます。老化防止が有力な市場に育ってきたのは素晴らしいことだと思います。

TC: あなたはアンチエイジング関係のテクノロジーについて豊富な知識があると思いますが、 若者の血を飲んで精気を維持するというバンバイアものはHBOの『シリコンバレー』のよい題材になりそうですか?

LD: [笑] 科学的に興味がないことはありませんが、メディアはいささかバンバイア・テーマを取り上げ過ぎる気がします。5歳児の血を飲んで若返る怪物についての記事なら数多くクリックされるが、老化の過程に関与する多様な遺伝子的要素を一つずつ検討することはあまり関心を呼びそうにないとメディアとしては考えるのでしょう。

〔日本版〕ビデオはTEDで講演するローラ・デミング(19歳当時)。デミングの経歴についてはティール・フェローシップ参加者を詳しく紹介した20 under 20(アレクサンドラ・ウルフ著、滑川・高橋訳)に詳しい。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+