テックビューロがジャフコらから16億円調達、「VCとICOは共存する」

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テックビューロが、シリーズBラウンドで約16億円の資金を調達した。調達方法は第三者割当、引受先はジャフコが運用する投資事業組合が約15億円、インフォテリアが約1億円。調達した資金は同社の仮想通貨取引所Zaif、プライベートブロックチェーン技術mijinをはじめ事業の整備拡充に充てる。同社の今までの累計調達額は約25.4億円となる。

ご存じのようにジャフコは日本最大のベンチャーキャピタル(VC)で審査基準も厳しい。出資にあたり交渉や調査には数カ月をかけ、ジャフコ社長の豊貴伸一氏自身が検討に参加したとのことだ。また今回出資するインフォテリアは2016年4月に実施した資金調達にも参加しており、ブロックチェーン関係事業でのシナジーを狙う。

テックビューロでは調達した資金の使途として、下記の各項目を挙げている。

  • 経営基盤の拡充、人員増強
  • Zaif取引所のインフラとサービスの拡充
  • プライベートブロックチェーン技術mijinによるクラウド型BaaSサービスCloudChainの整備
  • mijinライセンスとCloudChainの販売体制を世界で拡充
  • 米国拠点の拡大、欧州、アジア拠点の設置。スイス、シンガポール、マレーシアなどを検討している。
  • 新規事業投資とM&A

リストの1番目には経営基盤、2番目に仮想通貨取引所Zaifの拡充が挙がっている。2017年4月から施行された仮想通貨法(改正資金決済法)の元では仮想通貨取引所Zaifの運営は金融庁の監督下に置かれることになるが、それに伴い財務基盤の強化が求められ、監査などの支出も増える模様だ。資金調達の背景の一つには取引所としての規制対応がある。

プライベートブロックチェーン技術mijinによるクラウド型BaaSサービスCloudChainは、商用クラウドサービスとしてmijinの機能を提供するものである。

COMSAは「自前」で資金を集める

調達資金の使途のリストに挙げられていないが、COMSAについて述べておく必要があるだろう(関連記事)。同社のプロダクト(Zaif、mijin)や経験をフル活用したシステムであり、直接の使途ではないが今回の資金調達とも深く関係する事案だからだ。

COMSAは同社が発表したICO(Initial Coin Offering、仮想通貨技術を応用したトークンの発行と販売による資金調達手段)プラットフォームである。COMSA自体のシステム開発やCOMSA対応のサービス拡張運営は、今回の資金調達とは別にCOMSA自体のICOにより調達するとしている。「会社はOSで、COMSAはアプリケーションのようなもの」とテックビューロ代表取締役の朝山貴生氏は説明する。テックビューロという会社組織とCOMSAでは資金も別々に管理することになる。

同社は9月5日、ICOプラットフォームCOMSAのプレセールに対して個人投資家の千葉功太郎氏が100万ドル相当のビットコインを直接投資したことを発表している。また、3社の機関投資家が出資することを表明している。第三者割当増資により調達した資金とは別勘定でCOMSAにも資金が蓄積されつつある。

「ICOはVCと競合しない、むしろ共存発展できる」

ICOはまだ世の中での理解が十分に進んでいない段階といえる。朝山氏は「ICOのメリットはネットワーク効果、そしてトークンエコノミーの効率の良さだ」と話す。ICOには仮想通貨を使い国境を越えて手軽に参加でき、機関投資家だけでなく個人でも参加が容易だ。ICOの参加者は、ICOで立ち上がったプロジェクトの初期利用者でもある。資金と顧客ネットワークの両方をロケットスタートで早い段階に揃えられることができる。これがICOの価値だ。

ICOが十分に発達するならVCは不人気になる、といった論調も一部にあるが、「VCとICOは、世間で思われているように競合するものではない。むしろ協働、共存できる」と朝山氏は説明する。実際、日本最大手のVCであるジャフコがCOMSAを推進するテックビューロに投資し、個人投資家の千葉功太郎氏がCOMSAに出資していることがその証拠だという訳だ。審査が厳しいVCが出資した株式会社の社会的信用は、ICO参加者にとってもプラスに働くといえる。

ICOの効率性は悪用される場合もある。人気が過熱し、詐欺的な案件も増えている。プロダクトがローンチされないままのICOプロジェクトも多い。プロジェクトの成功確率が低いことは必ずしも悪いことばかりではなく、冒険的なプロジェクトに挑戦できる可能性があるということでもあり、スタートアップの成功確率が小さいという話とも似ている。ただし、ICOの場合はプロダクトがない構想段階なのに数億円といった資金を手にできる場合があり、特にモラルハザードを起こしやすい構造がある。

ICOをめぐり、世界各国で最近多くの動きがあった。7月25日に米SEC(証券取引委員会)は、2016年のThe DAOを「有価証券にあたり規制対象となる」と位置づけ、類似するICOは規制する方向性を示した。シンガポールとカナダの規制当局も同様の方針を打ち出している。9月4日、中国の中央銀行である中国人民銀行は中国国内のICOを「大部分は詐欺」と断じて一律停止、過去の案件も調査のうえ場合によっては返金を命じるとの厳しい措置を打ち出した。同じ日、ロシア連邦中央銀行も、仮想通貨とICOは「高リスク」と警告する文書を公開している。ICO過熱への警戒から、各国の規制当局が動いている形だ。もっとも規制強化の話ばかりではなく、エストニアでは8月22日に政府公認のICO計画を公表している。

COMSAに話を戻すと、テックビューロは「実業」がある案件に絞ることで成功事例を作っていく立場だと説明している。COMSAではICO協議会を設置してICO案件を審査し、特に初期段階では成功確率が高い案件を主に実施する考えだ。米SEC基準で有価証券に相当しないトークン(例えばサービス利用時に利用料を割り引いてくれるトークンなど)を設計していく。

前述した海外での規制強化は、詐欺的な案件や有価証券に準じる性格のトークンを対象としたものだ。そうではない健全なICOには「むしろ良い動きだ」と朝山氏は説明している。

テックビューロは今までトークンエコノミーというキーワードで多くの試みをしてきた。トークン発行サービスZaica、タレントの卵を応援するトレーディングカード的なICOであるBitGirls、それにZaifの優良利用者に配布したZaifトークンなどだ。COMSAは、これらの試みから得られた知見を投入したプロジェクトといえる。

シリーズBを終えた同社の今後の活動により、ICOやトークンエコノミーの分野で経験と知見、そして成功事例が蓄積されていくことを期待したい。