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サービス開始から約1年でエグジット、マーケ支援のベーシックがフォーム作成サービス「formrun」を買収

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ライトウェイトなCRM機能が付いたフォーム作成サービス「formrun(フォームラン)」。同サービスを提供するmixtapeは12月15日、マーケティング支援ツールなどを展開するベーシックに全持分を譲渡し、同社の完全子会社となることを発表した。買収金額は非公開だ。formrunのサービスローンチは2016年12月。ローンチからエグジットまで、わずか1年という“スピード婚”となった。

写真左より、ベーシック代表取締役の秋山勝氏、mixtape共同創業者の堀辺憲氏

サービスローンチ当初からTechCrunch Japanでも紹介してきた「formrun」は、専門知識がなくてもWebサイト上に設置するフォームを作成できるサービスだ。フォーム作成サービスというとGoogle Formsが思い浮かぶ読者が多いと思うが、formrunの特徴は、ユーザーがフォームに入力した顧客情報を管理するCRMツールとしての側面も持つことだ。

Trelloを彷彿とさせる“かんばん方式”が特徴のCRM機能では、「対応中」や「至急対応」などのステータスごとに顧客を管理できるだけでなく、社員が入力したメモやメール履歴などを会社全体で共有することができる。formrunは、例えばSalesforce.comのようなリッチなツールまでは必要ないが、顧客情報は活用したいという中小事業者を中心に受け入れられ、リリースから1年で2700社の企業ユーザーを獲得した。

formrunのCRM機能

使いやすく、拡張性も高いツールを

一方、mixtapeを買収したベーシックは、オールインワン型マーケティングツールの「ferret One(フェレットワン)」などを提供しているほか、マーケティングメディアの「ferret(フェレット)」なども運営している。今回の買収に至った経緯について、ベーシック代表取締役の秋山勝氏は以下のように語る:

「ferret Oneはオールインワン型のマーケティングツールだが、顧客獲得とCRMの分野については十分な機能を提供できていなかった。じつは、UI/UXが優れているformrunを目標に、ferret Oneのフォーム作成機能とCRM機能を『formrun化しよう』と社内で話していたこともある。だから、mixtapeから事業売却の話を頂いたとき、買収の判断は即決だった。両社がともに共通の世界観を持っていたことも大きい」(秋山氏)

では、その共通の世界観とは何か。秋山氏によれば、ferret Oneが目指すのは巨大なマーケティングプラットフォーマーと中小企業の間にあるギャップを埋めることだという。「マーケティングツールを利用している中小企業が抱える問題には大きく分けて2つある。ツールを使いこなせる人材が不足しているという“人の問題”と、各ツールがシームレスにつながっていないという“環境の問題”だ」(秋山氏)

だからこそベーシックは、それぞれのツール群はライトウェイトで扱いやすいように工夫しながらも、それぞれをシームレスにつなぐことができ、必要に応じて機能を拡張できるferret Oneを開発した。この「ライトウェイトで扱いやすいツールを提供する」というのが、ベーシックとferretがともに目指すゴールだった。

一風変わったスタートアップ

いま思えば、mixtapeの起業スタイルそれ自体も“ライトウェイト”なものだった。mixtapeは共同創業者の多田雅斗氏と堀辺憲氏の2人が2016年1月に創業した。formrunはこの2人にエンジニアを加えた3人で運営している。そして何より驚きなのは、創業から現在まで、メンバー全員がパラレルキャリアであり、企業運営はすべて自己資金だけで賄ってきたという点だ。TechCrunch Japanではシリコンバレー型のVCモデルを取り上げることが多いから、ある意味mixtapeは僕にとっても異色の存在だった。

今回の買収について、堀辺氏はこう振り返る:

「サービスが順調に成長していくにつれ、私たち3人だけでは成長に追いつけなくなり、mixtapeの今後について選択をしなければならなくなった。外部調達をして自分たちで大きくしていくか、それとも事業を売却して他社の傘下で事業を加速していくのか。最終的に、共通の目標をもつベーシックの傘下に入る方がビジョンへの到達スピードが早くなると考え、事業を売却することにした」(堀辺氏)

と、ここまでがmixtapeの創業からエグジットまでの一風変わったストーリーだ。

個人的にはこの起業のカタチがあってもいいと思っている。もちろん、すべてを投げうってイチから事業を立ち上げ、カップラーメンをすすりながらも成功を収めるというスタートアップ物語はカッコいい。その方がリターンも大きいし、社会に与えるインパクトも大きいだろう。普段TechCrunch Japanが追いかけているのも、このタイプのストーリーである。

でも、mixtapeが2700社から必要とされるサービスを生み出したことは紛れもない事実だ。もしかするとmixtapeが事業譲渡によって得た金額は少ないのかもしれない。しかし、「起業のアイデアはあるけど、踏み出せない」という読者にとってmixtapeの起業物語は参考になるストーリーだろう。