旅の魅力を引き立てる“物語”をポケットに、音声ガイドアプリ「Pokke」提供元が数千万円を調達

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旅行で有名な観光スポットへ行くと、いわゆる「音声ガイド」を目にすることがたまにある。スポットの見どころや背景などを音声で紹介してくれるあの機械だ。

僕は割と現地のことを事前に調べてから行く派なのだけど、それでも音声ガイドを聞けば初めて知ることもあり、旅の満足感がさらに上がる。そんな体験を昨年とある鍾乳洞へ行った時にもしたばかりだ。もちろん機械ではなく、人間のガイドを雇って現地の案内をお願いすることが多いという人もいるだろう。

ガイドで紹介されるような土地の背景やエピソードを、常にポケットに入れて持ち運ぶことができたら、もっと多くの人が旅を楽しめるのではないか。そんな思いから生まれたのが、多言語トラベル音声ガイドアプリ「Pokke」だ。

30都市、400以上の音声ガイドコンテンツを提供

Pokkeはヴェネツィアやパリ、鎌倉といった観光都市の物語を音声で楽しめるサービス。自分専用のガイドをいつでもどこでも持ち運べ、テキストや動画アプリとは違ってハンズフリー。手だけでなく目も画面に奪われることなく、訪れた場所を見ながら自分のペースでガイドを聞ける。

音声ガイドはスポットごとに作られていて、見所ごとに複数のチャプターに分かれている。長さは平均で30分ほど、ガイドによって20分〜60分と幅が広いという。料金はひとつのガイドあたり数百円(240円〜600円)のものが多く、無料コンテンツもある。

現地で実際に行われているガイドと同レベルの情報を、事実を淡々と紹介するのではなく、より興味を抱きやすいような“物語”として届けるというのがPokkeのチャレンジであり特徴だ。

現在は世界30都市、合計で400以上のコンテンツを配信。日本語を含む10ヵ国語に対応しているので「旅行先で、母国語のガイドが雇えない問題も解決できる」(Pokke提供元であるMEBUKU代表取締役の入江田翔太氏)という。

GPS連動によって現在位置と音声ガイドの位置を地図上で確認できる機能を備えるなど、基本的には現地で「旅ナカ」に使われることを想定。ただPokkeのガイドを参考に旅行の日程を組んだり見どころを調べたりなど、旅マエに使うこともできそうだ。

物語を知ることで旅がもっと楽しくなる

MEBUKUは代表の入江田氏を含む5人のメンバーが集まって、2015年の7月に創業したスタートアップ。同社は本日ANRIとノーマディックを引受先とした第三者割当増資により、数千万円を調達したことを明らかにしている。

具体的なプロダクトのアイデアが固まっていない状態で起業したそうだが、同年秋にPokkeの構想が生まれ、2016年3月にAndroid版をリリースした。きっかけとなったのは、あるメンバーが旅先のアルカトラズ刑務所で音声ガイドを聞いた時の体験だという。

「一見何もないような空間でも『スプーンで掘って逃げようとした』という物語を聞いたことで、心を揺さぶられて旅の体験が変わった。自分自身もアウシュビッツで音声ガイドを聞いた際に同じ経験をしたので、普通に旅するだけでは気づけない各所の物語や歴史、秘密を提供することで、もっと旅を楽しいものにできるのではと考えた」(入江田氏)

当初は事実をシンプルに紹介するという割とオーソドックスな形式でコンテンツを作っていたが、より多くの人に楽しんでもらうために構成や演出を変えた。

「(当初のコンテンツを)自分たちで聞いていても、あまり面白くないと感じた。同じ情報でも演出や見せ方次第で大きく変わる。問いかけを入れるなど構成を変えたり、臨場感を作るために効果音やBGM、『住職の生の声』を入れるなどしている。音声ガイドももっと進化していかないといけない」(入江田氏)

新たな切り口のガイドや、訪日外国人向けコンテンツも強化

新たな取り組みとして、ひとつのスポットを複数の切り口で紹介することもはじめている。たとえばPokkeでは台湾の九份に関して“DJがラジオ番組風に紹介した”特別版のガイドを提供。今後はこのような見せ方のガイド制作に加えて、ユーザーへのパーソナライズやグループで楽しめる機能、ゲーミフィケーションの活用といった機能開発に取り組む方針だ。

また現在は8〜9割が海外のガイドとなっているが、訪日外国人向けに日本国内のガイドも増やしていくという。

現代では「個人での旅行」「現地により深く没入する体験的な旅行」を求める人も少なくない。スマートフォンを1人1台所有する時代だからこそ、持ち運べる音声ガイドアプリを通じて普通に旅するだけでは気づけない発見や、物語を提供していきたいという。

「(土地や作品の背景にある物語などを)知らないがゆえに十分楽しめなかった、というのはもったいない。知らない土地に旅行に行ったり、知らない作品を目にすることは多いと思うので、そこをどう埋めていけるか。Pokkeを通じて取り組んでいきたい」(入江田氏)