MicrosoftのMeshは未来にイェス
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by ゲスト ライター on 2008年4月29日 append.gif この記事をBuzzurlにブックマークする

【日本語版編集部から 以下の記事はゲストのSteve Gillmorの寄稿です。】

昔、ビッグなソフトウェア会社はビッグな仕事をしていたものだ。小さい会社はプラットフォームを作っているビッグ企業の回りをしのび足で歩き、チャンスとみれば加速して離陸、やがて買収されるまで十分な注目を集める間生き残れればそれでよかった。30年代、40年代のハリウッドのビッグな映画スタジオと同じで、80年代、90年代のテクノロジーのスタジオはスターを生産して、やがて寿命が来て衰えるまで使ったものだった。

そういう具合にゲイツは見たところ難攻不落のMicrosoftというマシンを作り上げ、製品を世界中に飽和するまで送りこむことに成功した。われわれはGoogleを新たな勝者だというふうに見がちだが、実際はMicrosoftはおおむね自分に負けたといっていい。戦いに負けて没落したのではなく、燃料切れを起こしたようなものだ。そもそもMicrosoft帝国を作るもととなったユーザーに提供する製品がなくなってしまったのだ。

全てはネットで変わった。プラットフォーム戦争、ブラウザ戦争、ウィジェット戦争。すべては生きて息をして動めく群れであるウェブをつかまえるための苦闘だ。MicrosoftのOfficeは死んだかなんていうジョークがとうとうカンファレンスにまでなってしまった。それどころかさらにオライリーのP2Pなウェブ、Web 2.0という主張のクローンがいたるところに広がり、最初はインターネットの中だけの話だったのが電波にも広がり、以前はクライアントの中だけにあったものが今はどこだか知らないがクラウドの中から来ることになっている。

私はカンファレンスを取り上げたがそれは簡単な的だからだ。先週サンフランシスコで開かれたWeb 2.0 Expoのような偉ぶった大きな催しから、8月のデンバーでタバコの煙がもうもうとした小部屋で開かれるかもしれない名もない会議までいろいろあるが、データポータビリティーを論じるセッションがたくさんあるのにパネリストにdataportability.orgの代表がいない、といったナンセンスさでは共通している。MicrosoftとIBMが昔ウェブ・サービス戦争で試みたように、闇の中で標準化を取り決めようとするときのうさんくささが相変わらず漂っている。

そこでわれわれは大企業にも出版社にもインターネットというとらえどころのない存在の要所要所に立ってコミッションを取っているい門番のような存在にもたいしたことは期待できないと考えるくらいには成長したことになる。Googleの成長はあまりに速かったのでわれわれはGoogleがフリーウェアでMicrosoftを攻撃していないという笑うべき考えに陥っていた。これは事後の「大企業プレイ」に見える。現在でも自称「エンタープライズ」の預言者によっておもちゃとして笑いとばされているが、ただし現任者にとっては自滅の引き金を引かずには真似ができないような協同的なものだ。

その代わりに、大企業プレイがいくつかバーチャル化されたルートから出てくるのを見ることになった。Amazonのサービス、ソーシャル・メディアのクラウド、いつまでも繰り返し続く「小さい」会社の不安定なダンス、ベンチャーキャピタルの愚行、シリコンバレーのメディアの炭酸化など。すべては〔『小鼠ニューヨークを侵略』の〕フェンウィック大公国の物語の世界で、メディアの嵐がTwitterとかFriendfeedとかTwhirlといった名前を転がしながら丘を駆け下っていく。

私はこういう会社を「マイクロビッグ」と呼びたい。なぜならメディアはこういう会社を「失うものはなく得るものばかりの大企業」のように扱うからだ。マイクロビッグはFacebookのように超然して見えることもあるし、ブユも同様何千と湧き出てきて、同じくらい短命なスタートアップ、約束されながら決して実現しなった製品の群れもある。しかし一方で非常に大きな影響をもたらす可能性が凝縮されたサービスという点ではTwitterの右に出るものはないだろう。

Twitterはマイクロビッグのロールシャッハテストだ。私はこれがマイクロビッグ時代のもっとも重要なエンタープライズ的事件だと思う。「ソーシャルメディアというくだらない流行」と片付けたがる向きもある。どちらもそれなりに理由がある見方だ。しかしレールに耳を押しつけてみよう。遠くから特急列車が近づいてくる響きが聞こえyるはずだ。これはLive Meshだ。Microsoftの支配の時代が終わったと安心した矢先に…? ビッグ企業が復活するのか? それともオープンソース運動をさらに強化しなければいけないのか? この戦争では誰を権威として頼ればいいのか?

第一に、Microsoftは「ビッグ企業」だろうか? もちろんそうだが、一枚岩の巨大な利害集団なのか、自己修復的なネットワークによって調整される急速に変化するマイクロビッグの群体なのか? 前者をAグループとすると、Office部隊がそこに属する。企業相手のビジネスで安定した収入が確保されているものの、一時の精気を次第に失いつつある。後者をBグループとすると、代表はSilverlightだ。透明性の高さによってクロス・プラットフォームで1億クライアントを獲得し、来るべきNBCのオリンピック中継のエンジンとして採用されるというラッキーなオマケがついている。

ところが見かけの安泰さと裏腹にこのどちらの極も奇妙に身動きがとれずにいる。Officeはサイズが巨大すぎ、ウェブ時代以前からの歴史的経緯に絡めとられている。そして今のSilverlightは何も再生する中身のないバーチャルiPodみたいなものだ。それからメディアだ。同じように型にはまった考えに身動きできなくなっている。唯一の道は2つを一つにしてOfficeをWeb化することだという。問題はこうしたアプローチはマイクロビッグのものではなく、伝統的なビッグ企業のものだという点だ。

そこにMeshが登場する。 一見するとビッグ企業の典型的なビッグ・プロジェクトの一つにみえる。人材としてMicrosoftの新しいエリートグループ、いわばレッドモンドの「ベスト&ブライテスト」が配置され、発端ははるか過去のGrooveにさかのぼり、将来はテレコムとハードウェアをも視野に入れている。しかし、われわれはポッドキャストの「The Gillmor Gang」で興味ある思考実験を行ってみた。つまりMeshの開発責任者David Treadwellさまざまなマイクロビッグ的シナリオをぶつけてみて、反応を探ったのだ。すると驚いたことには答えは「イェス」と出た。

序の口はまずごくありきたりの質問。Mac版はどうなっている? 「2ヶ月後に出荷する」。 MeshとFolderShareの違いは?  「FolderShareなんかそもそも誰も使わないんだから比べても仕方がない」。 ではSharepoint? それからGrooveは? この方面ではMicrosoft懐疑派が増えるのは仕方がない。現在Microsoftのネット進出を目指すさまざまな試みが不振なうえに、数多くの製品が別々のチャンネルばらばらにりりーすされて互いに競合している。

それからいよいよ本当の質問タイムが始まった。「SilverlightはとMeshを合わせてネットワークOSに仕立てていくつもりなのか?」 答え:イェス。TreadwellはSliverlightとMeshの関係を「互いに直交する補完的な関係」と説明した。うん、なかなかマイクロビッグな言い方だ。「MeshはTwitterのストリームをサポートするのか? この場合、Silverlightを利用して企業の間、デスクトップとモバイルの間、異なるOSの間などのギャップを親和性によるユーザー・アイデテンティティーの利用とデバイスの抽象化によって統合することができるのか?」 答え:イェス。しかもしれだけなく、はるかに多くのことができる。イェス、しかし私はWindowsについては尋ねていない。Q&Aは「OK、イェス」、「では、いつ頃?」というように進んだ。

Microsoftはビッグ企業的プレイをマイクロビッグのスピードで実行に移しつつある。答えはいつも「イェス、そして…」であり「イェス、しかし…」でなかった。

Gillmor: そうすると、MeshはAmazonのウェブ・サービスのようなレベルの上で作動するサービスということか?

Treadwell: まったくそのとおりだ。

Gillmor: するとこの2つを結びつけることもできる? つまりAmazonのサービスを利用しながら、その上でMeshサービスを動かして同期やその他の機能を利用できるのだろうか?

Treadwell: それは間違いなく可能だ。誰かがやがてMeshのオープンなプロトコルを使ってS3を一つのデバイスのタイプと見なして利用するプログラムを書くだろう。現在のところではまだわれわれはサポートしていないが、オープンなプロトコルの本質からして誰かがそういうデバイスを開発することは全く可能だ。

Gardner: Meshのユーザーが、仮に自分のコンテンツをプラットフォームの外に持ち出されたくないと考えたら、これをブロックするのは容易なのか?

Treadwell: 単にフォルダをマップしないように設定すればよい。それが質問の趣旨だったろうか?

Gardner: 必ずしも個人ユーザーではなくて、たとえば、大量のコンテンツを所有する大企業のような場合だが。

Treadwell: ああ、なるほど。わかった。その点はわれわれがMeshの機能として特に力を入れていかねばならないと考えている部分だ。企業のIT部門が使いやすくて、しかもMeshにどういったデータを格納するか、あるいは格納を禁止するかといった面でも完全なコントロールができなくてはならない。これに加えて、われわれはIT部門が独自のクラウド・ストレージ環境をもてるようにしたい―長期的にはこれも実現したいと考えている。たとえば、一部の大企業は、所有する独自データが自社内のサーバだけに保管され、一切外部のクラウド上には出ないようにしたいと望むかもしれない。Microsoftに一切データを預けることなく、すべて自社ないで完全にコントロールができなるようにしていきたい。

GillmorGang 04.25.08

つまり答えは? イェスだ。さっきGoogleは「マイクロビッグ」な企業だと言っただろうか? 私はMicrosoftには同じ質問をしなかったが、それでも結論は同じだ。イェスである。結局のところ、Microsoftは答えがイェスでないかぎりMeshにユーザーを集めることは不可能なのだ。

MeshはMicrosoftが定義するような意味での成功を収めるかどうかに関わりなく、それ自体で興味深い存在だ。もちろんMicrosoftはデスクトップを支配し、ゲームや携帯ででシェアを伸ばし、これから現れてくる企業向けサービスの市場でもトップシェアを取りたいと考えている。Meshを単にデバイス間のデータの同期ツールだと考えると、その他の豊富な機能、アイデンティティやパーミッション機能のバーチャル化、情報の集約、リアルタイム・フィードバック、その他ソーシャルメディアのもろもろを見逃すことになる。たとえば、GTalk/Twitteに対抗するTwitter-Mesh-Silverlightのゲートウェイといった可能性だ。

たとえば、次のようなシナリオ(現実性が十分ある)を想像してみよう。テキスト、リッチメディア、カレンダー、コミュニケーション、トランザクション、ソーシャルグラフ内におけるグループメンバーの位置情報等々すべてを傘下に置いた情報バスをユーザーが統合的に行動(ジェスチャー)でコントロールできるようになったらどうだろう? これをGoogleがやろうとしたらそのためのアーキテクチャーづくりの困難さははかりしれない。Windowsを通じてあらゆるハードウェアにアクセス可能なMidrosoftはこの面で圧倒的なリードを有しているのだ。

当面、この分野におけるGoogleの答えはノーにしかならない。Googleには今すぐMeshに直接攻撃をかける必要はない。ユーザーの信頼と広告分野でのリードを維持しながらOfficeの経済的基盤を掘り崩す活動を続けていくだけでよい。しかしMicrosoftは、Googleとその他のマイクロビッグ企業のウェブ・サービスをMeshによってデスクトップとハイブリッド化して、エンタープライズ・レベルで必要な信頼性とセキュリティーを確保したマルチストリーム(バーチャル・デバイスをサポートした)の情報バスを効果的に構築することができるはずだ。

こういうソーシャル・メディア的機能をただの流行だと否定する論者は次のような点に注意を払うべきだ。そもそもMeshやSilverlightなしでも、それらが大きなインストール・ベースを獲得して上に述べたような拡張Twitterネットワークを大規模化することに成功する前でも、われわれはすでに複数のサービスをその場で組み合わせることによって非常に有力な成果を出せるところまできているのだ。たとえば、金曜日のGillmor Gangショーは、Daly Cityの私のスタジオからのUstreamのビデオ・フィードとロサンゼルスの Jerry Schumanのカンフェレンス・コールからのグラフィックスをマッシュアップし、世界中の視聴者からのライブのQ&Aセッション、同時的なTwitterのストリーム、さらに今回はレギュラーのRobert Scobleがアンセル・アダムズの写真でおなじみのヨセミテ渓谷の奥から携帯で参加した。

こういう具合にすでにわれわれはこういった細かい編み目(mesh)の中に入りこもうとしている。しかしこの方向に進む以外われわれが進歩を勝ち取れる道はないという事実に直面する必要がある。われわれに誰と友達になれとSNSが強要してきたり、連座制でわれわれ望まない何か他のアイディアやサービスに巻き込まれたり、ネットの要所でわれわれの自由の前に立ちはだかる門番のような存在がいたりするわけだが、われわれは創意工夫によってこういう邪魔ものを迂回し、最終的には排除していかねばならない。今やわれわれ自身がマイクロビッグであるかのうように振る舞わねばならないのだ。そしてMicrosoftを見習って未来に向かってイェスと言おうではないか。

[原文へ]

(翻訳:Namekawa, U)

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