検索市場に競争は必須だ
by Michael Arrington on 2008年5月26日

Microsoftが検索市場で競争を挑み、自らを広告企業に転身させようとするビジョンも所詮は昔同様「お山の大将」になりたいという願望の現れに過ぎないのか? Microsoftもヤフーもその他全員、検索市場を放棄して、すべて後はGoogleに任せるべきなのか? Tim O’Reillyの今日(米国時間5/25)のブログ記事によるとそういうことになるらしい 。私にはこれ以上間違った意見は考えられない。

O’ReillyはMicrosoftは同社が長年目指してきた「会社のすべてのデスクとすべての家庭にコンピュータを」という夢が実現してしまった後、目標を見失ったのだという。彼によるとMicrosoftは漂流しており、目標というのはやみくもにナンバーワンになろうとする欲望だけだなのだという。Googleの弁当を横取りして食べようとするのもこの兆候なのだそうだ。Googleは早くから「世界中のすべての情報を組織化する」という任務を自らに課し、それに成功したか、ほとんど成功したといってかまわないぐらいのところに来ている。だからMicrosoftは何か別の勝ち目のある分野に移るべきだ、という。

そこでO’ReillyのMicrosoftに対するアドバイスは検索をGoogleに外注して別の何かに注力すべきだ―たとえばウェブOSのようなものを開発すべきだ、というもの。

Microsoftがウェブ・サービスのインフラとソフトにもっと注力すべきか否かについてTimと議論しようとは思わない。それはそれで良い考えかもしれないと思う。しかし私が理解できないのは、なぜTimがMicrosoftはそのために検索市場を放棄しなければならないと主張するのか、だ。私は彼の提案しているもの―検索市場の絶対的な独占―がインターネット全体にとって災厄以外のなにものでもないと信じる。

検索分野の技術革新は今始まったばかり

インターネットの商用化が始まってわずか10年少々しか経っていないのに、Tim O’Reillyともあろうものが、インターネットの検索戦争は終わったなどとどうして言えるのか理解できない。親友のJohn BattelleのGoogleの誕生を描いたノンフィクション、ザ・サーチを読んでいないのだろうか? しかし、「検索戦争は終わった」と主張する専門家はTimだけではない。先週のGillmor GangでもDanny Sullivanが同じようなことを論じた。しかし私には現状が検索技術の発達の行き止まりであるなどとは信じられない。。

検索分野で解決を迫られている分野は山積している。セマンティック検索、自然言語/AI検索、ディープ・ウェブ、メディア検索などなど。今日、検索は基本的にウェブ文書を返してくる。しかし私が欲しいのは私の代わりに検索を最後までやってくれるようなサービスだ。そういったサービスの実現には未だはるかに遠い。

われわれはやっと検索というビジネスを始めたばかりだ。今日、検索がすでに頂点を極めたなどと考えるのは、第一次世界大戦の前に飛行機が発達の頂点を迎えたと考えるようなものだ。当時からたった1社だけが航空機の製造を任されていたとすると、われわれは今でもジェット機で世界中どこへでも、こんなに気軽に旅行ができるようにはなっていないだろう。

イノベーションは競争がなければ急速には起きない。もしGoogleなりが独占的に検索分野をコントロールしてしまったら、検索テクノロジーや検索ビジネスモデルに中期的に何らかの革新が起きる可能性は非常に低い。

たしかに、あれこれ何社かのスタートアップが生まれて、新しい試みに挑戦しようとしている。しかし検索ビジネスは巨大なインフラを必要とする。ウェブ全体をインデックスづけし、すでにGoogleが存在している市場でビジネスを確立するためのコストとノウハウはとうてい普通のスタートアップの手に負えるような種類の問題ではない。マーケットが成熟していけば新たな参入はさらに困難にになっていく。独占を打破するために政府の介入が必要なのも、ここに理由がある。市場の力ではひとたび確立した独占を排除することは一般的には困難なのだ。

検索市場の独占とインターネットの健全性は互いに相容れない

検索は重要だ。なぜならインターネット上のあらゆる商業的な動きはすべて検索から始まるからだ。先週私が書いたように、オンラインでの商品購入の68%は検索エンジンかショッピング比較サイトから始まる。これにともなって巨額の金が動く。オンライン広告の総売り上げ$40B(400億ドル)の約40%、すなわち$16B(160億ドル)は検索から生じている。またこの$16B(160億ドル)の80%はオンライン販売関係の検索から生じている。

オンライン広告市場は依然急速に成長している。2010年には全世界で$80B(800億ドル)に拡大するという予測もある。もしGoogleが引き続き検索市場での優位を保つなら、ここ数年のうちに売り上げでMicrosoftを抜くかもしれない。利益では間違いなく抜くだろう。Microsoftがデスクトップ・アプリケーションの販売の高い利益率にいつまでも依存していられそうにないという見通しはさらに事態を悪化させる。

オンライン検索とオンライン広告は互いに鏡像のような関係にある。検索マーケットに1社しか存在しなくてもかまわないというのは、実質的に、広告マーケットに1社しか存在しなくてもかまわないというのと同じだ。

われわれは検索マーケットに支配的な企業が存在した場合、どういうことが起きるかすでに知っている。イノベーションにはさして力が注がれず、システムの改善を図る企業が現れてもそこへ十分な売り上げが回らないことになる。全エコシステムが危機に瀕するのだ。

たとえば、CPC(クリック単価)モデルには根本的な欠陥がある。しかしGoogleにとってクリック詐欺は利益になるので、対策を手ぬるいままに放置してしてきた。これに対して広告主は検索エンジンのレベルでは対策しようにも打つ手がないのだ。CPA(成果単価)のほうがずっと良いモデルだが、Googleはテストしてみる以上のことをしようとしない。現在のシステムはGoogleにとって有利で、広告主にとっては不利である。しかし広告主にとっては実質的にGoogle以外の選択肢がない。Googleが60+%の検索市場(そしておそらく90%くらいの検索売り上げ)を独占しているので、我慢して付き合っていくしかないのだ。Microsoftの最近のLive Searchキャッシュバックプログラムは競争こそがより効率的なシステムを作ることを改めて実証した。

サイト運営者の側から見ると、状況はさらに悪い。Googleは広告料金のうちから掲載者に対してはしみったれた割合しか分配しようとしない。Googleをまずまず正直にさせるのはYahooとMicrosoftが時折サイト運営者のところに来て競争をしかけるときだけだ。もしそれさえなくなってしまえば、Googleはサイトから上がる広告収入のほとんどを独り占めしてしまうだろう。(Googleの競争相手はそうなると検索以外の〔バナーなどの〕広告となるが、これははるかに低い収入しかもたらさない)。こういったことはすべて、インターネットの健全性という見地からした場合、最悪である。

オンライン広告市場はあまりに巨大で重要なのでMicrosoftはとうてい無視することができない。われわれインターネット・ユーザーはMicrosoftとYahooの努力を応援しなければならない。もし彼らが興味を失ってしまえばインターネットは重大な悪影響を被るからだ。競争こそがイノベーションを生む。競争こそが価格の引き下げを生む。競争を放棄せよと説くのは無責任以外のなにものでもない。

アップデート: Timがビデオでコメントしてくれたので下に貼っておく。彼のこの問題に関するフォローアップはここに

[原文へ]

(翻訳:Namekawa, U)

  • http://primetime.jp//news/story.php?id=958 PrimeTime.jp

    検索市場に競争は必須だ – TechCrunch Japanese…

    【PrimeTime】果たして、検索市場に関して、米Googleによる独占市場でよいのだろうか?! TechCrunchのMichael Arrington氏コメントに対して、ティム・オライリー氏が意見述べている・・・・。…

  • http://jp.techcrunch.com/archives/20080527paglo-launches-its-search-engine-for-it/ TechCrunch Japanese アーカイブ » PagloのIT資源管理用検索エンジン登場

    [...] 検索技術の進歩について議論するとき、ファイアウォールの向こう側での新規の技術を見過ごし、オープンな部分にのみ注目してしまいがちだ。一般の利用者が直接的に利益を受けることはないにしても、背景に生じた技術の進化について、その時々に触れておくのも良いだろう。 [...]

  • http://jp.techcrunch.com/archives/20080528live-yang-decker-talk-yahoo-at-d6/ TechCrunch Japanese アーカイブ » ライブ:ヤフーのヤンとデッカー、D6で語る

    [...] Mossberg:ヤフーとマイクロソフトは検索市場シェアを減らし続けていて、Googleの独占になってしまう危機を迎えています(私の考えはこちらに)。 [...]

  • http://jp.techcrunch.com/archives/20080528jerry-yang-were-done/ TechCrunch Japanese アーカイブ » Jerry Yang:「おしまいです」

    [...] Yangは広報部の用意した美辞麗句を忠実に暗唱した。たとえばこんなことを言った、「マイクロソフトとの交渉の場から立ち去ったのは私たちではありません、むこうです」。またあるときには「Googleは好きです」とも。(彼はまだYahooの敵はGoogleであって、マイクロソフトではないということに気が付いていない)。将来について、ときには関係のない話を4つか5つ繋ぎあわせて、会社がいかに将来のために一つになって焦点を絞っているかを語った。また、外から見たYahooの認識が、実際に中で起きていることとは大きく違うとも言った(私が話をした幹部たちは、お金に関して外部の認識は間違っていないと言っているのだが)。 [...]

  • http://jp.techcrunch.com/archives/20080612googleyahoo-announcement-at-130-this-afternoon/ TechCrunch Japanese アーカイブ » GoogleとYahooが検索業務提携を本日午後1時半より発表か

    [...] 2社は検索提携の試験運用を行うことを今年4月に発表。物議を呼んだ提携は、国会その他の関心を引いたが、業務提携予備テストは成果良好(黒字)と報じられた。われわれはインターネットの健全のためにも検索分野には市場競争が必要だと主張してきた。 [...]

  • http://jp.techcrunch.com/archives/20080921why-the-google-yahoo-ad-deal-is-something-to-fea/ TechCrunch Japanese アーカイブ » Google – Yahooの広告契約を懸念する理由

    [...] そしてそれが、Strossが無視しているパズルの大きなピースだ。5月に私は、検索マーケティングのプロバイダーが一社になった場合に、インターネットエコシステム全体に与えるきわめて現実的な影響について書いた。各ネットワークの収益に関わることだ。 サイト運営者の側から見ると、状況はさらに悪い。Googleは広告料金のうちから掲載者に対してはしみったれた割合しか分配しようとしない。 Googleをまずまず正直にさせるのはYahooとMicrosoftが時折サイト運営者のところに来て競争をしかけるときだけだ。もしそれさえなくなってしまえば、Googleはサイトから上がる広告収入のほとんどを独り占めしてしまうだろう。(Googleの競争相手はそうなると検索以外の〔バナーなどの〕広告となるが、これははるかに低い収入しかもたらさない)。こういったことはすべて、インターネットの健全性という見地からした場合、最悪である。 [...]

  • http://jp.techcrunch.com/archives/20090601apparently-bing-is-something-of-a-hit/ Bingはかなりのヒットまちがいなし―ユーザーの声は圧倒的に好意的

    [...] 簡単に状況を要約しておこう。Microsoftが最終的に検索戦争に勝てるかどうかはさておき、検索分野で真剣な競争が行われるのはインターネット業界全体の利益にな…。Googleには(こういう迷惑な試みではなく)、イノベーションを迫る外部勢力はぜひとも必要だ。Googleがあまりに貪欲にならないためにも検索市場には競争がなくてはならない。インターネット業界としては、Microsoftが勝利する必要はないが、有力な検索エンジンが一つしかないという状態はぜひとも避けなければならない。Microsoftは、すくなくとも、この最後の点については目標を達成できる見込みが大いにある。 CrunchBase Information Microsoft Bing Information provided by CrunchBase [...]

  • http://jp.techcrunch.com/archives/20090605did-bing-just-leapfrog-yahoo-search/ Bing、検索シェアでYahooを追い抜いた?

    [...] われわれはいよいよ、最初の、本当の意味でのGoogleへの挑戦者の誕生を目の当たりにしているのだろうか? それともすぐに消え去る一過性のブームに過ぎないのかだろうか? [...]