「悪魔は細部に宿る」といわれるが、Yahoo/Googleの検索広告に関する契約の文言を詳細に検討すると、最近のYahooの絶望的、というか神経症的な精神状態が浮き彫りになってくる。一言で要約すれば、これは実質的に、(1) Jerry Yang、Sue Deckerと現在の取締役を地位にとどめておく、 (2)他に道がなくなってMicrosoftに買収されることを可能なかぎり―あるいは可能な限度を超えて―遅らせるようGoogleに介入してもらうためにYahooが金を払う、という趣旨だとわかる。契約の内容からみると、私にはGoogleがこの契約を結びたがっていたかどうかもはっきりしない。GoogleはYahooに泣きつかれて恩を売った―少なくともMicrosoftの手に落ちないよう手を貸してやっただけに思える。
Yahooは今になってなぜMicrosoftの買収の申し入れを受諾しなかったのかと後悔しているのではないかと私は推測している。Microsoftの申し入れが行われたのは、YahooがMicrosoft対Googleの闘いにおける主要なコマであり、Yahooの最良の人材が大挙脱出を始める前のことだった。いわば$15B(150億ドル)も前のことだ。申し入れはとうに無効となっている。
以下、さらに詳しく検討していくが、この契約には基本的に拘束力がない点に加えて、破棄条件が非常に複雑なこと、破棄に伴う違約金をGoogleに支払う条項が存在することなどを考えると、この契約はGoogleがYahooの依頼に応じて恩を売り―そして応分の手間賃を請求するものとしか見えない。また、さらにいろいろ奇妙な条件がついているのは、両社とも一部の政治家がこの契約を攻撃して点数を稼ごうとするのではないかという強い懸念を抱いているせいだろう。連邦司法省はこの契約が反トラスト法に違反していないかを審査することになるが、業界(Microsoft)からも議会(再選を目指す下院議員)からもきわめて大きな圧力を受けるはずだ。
半ダースほどにも上るプレスリリースや、リークされた内部メモ やブログ記事その他関係するあらゆる陣営が公表してきたいろいろな資料をいちいち引用することは避ける。YahooとGoogleはなぜこの契約に合意したのか、これからどういう事態が起きそうなのか、私が知りたいことはYahooとGoogleとの合意文書の文言そのものから全て読み取れる。
Microsoftの最後の提案
MicrosoftがYahooに提示した最後の提案は、事情を知る情報源によると、株式と資産と業務提携の各分野にまたがるもので、要約するとおおむね以下のとおりだった。
- MicrosoftはYahooの発行済み株式の16%を取得する。価格は$8B(80億ドル)、あるいは1株当たり$35。
- MicrosoftはYahooの検索および検索関連マーケティングの資産全て、すなわちサーバー、プログラム、広告主、サードパーティーの広告掲載者、知的所有権、従事する社員(およそ3千人)、を$1B(10億ドル)のキャッシュで買収する。またYahooが自ら運営した場合よりも高いCPC単価を保証する。
- Yahooはこれにより現在得ているより高い広告収入を得ると同時に検索業務にかかる運営経費と人員を削減することができる。
- Yahooは今後検索及び検索関連マーケティングの分野にいっさい関わらないことを保証する。Yahooの検索事業はMicrosoftがすべて管理する。
私に言わせればだいぶ虫のいい内容だ。いってみれば、MicrosoftはYahooを妊娠させたが結婚しようとはしない―居心地のいいマンションをあてがってやって、他の男とデートしてはならんと命じたというところか。
しかし何にせよ、Microsoftはまだ申し入れが有効だということを示唆したかったのだろう。Yahooとしては合理的に行動するなら、この申し入れの全部または一部を受け入れることを考えねばならないだろう。
Googleとの提携
“Yahooの競争上の立場を強化する“ (Yahooのプレスリリース)とか“公正な競争を保証するために良い“(Googleのブログ記事)といった美辞麗句は忘れることだ。なぜならどちらも真っ赤な大嘘だからだ。この提携は検索広告市場における競争を実質的に壊滅させる、そしてYahooの検索と検索連動広告をゾンビー化するものでしかない。
この契約によると、Yahooは自らの広告の横に並べてGoogleからの広告を掲載することになる。これによって広告収入を増やすことができるというのだが、Googleはもっとも収入の多い検索キーワードについて有利な条件の広告を掲載できる(おそらく広告売り上げの80%ぐらいを占める力があるだろう)。Yahooは細かいロングテール部分の広告では優位に立てると考えているようだ。しかし問題は、もちろん、Googleがもっとも有利な広告キーワードを独占している―そして広告主はこれらのキーワードを購入するためにYahooを捨ててGoogleのプラットフォームに赴くという点にある。これによってYahooの検索ビジネスの中心が空洞化することになる。
4年(Yahooが10年に延長することができる)の契約は一見有利なものに思える。非独占的契約で、しかもYahooは何ら広告を掲載する義務を負わない。
しかしGoogleと検索広告で競争できる相手というのは存在しないのだから、非独占的というのはまったく見かけだけのことだ。またYahoo側には掲載すべき広告の量について何ら義務がないとはいえ、もしYahooが4ヶ月ごとに$83M(8300万ドル)の広告収入をGoogleにもたらさない場合、Googleは自由に契約を打ち切れる。
そしてさらに問題の極端に複雑な条件が設定された$250M(2億5千万ドル)に上る(ただしGoogleが実際に受け取った広告掲載料金を差し引く)違約金の問題がある。これはYahooが第三者と合併した場合に発動される条項で、特にTime Warner、News Corp.、Microsoftとの合併の場合はさらに発動の敷居が低くなっている。Yahooがいかなるサードパーティーと合併した場合でもGoogleは契約を破棄した上、Yahooに対して$250Mの支払いを要求することができる、Time Warner、News Corp、Microsoftの場合、わずか35%の株式を取得しただけでこの条項が適用される。
が、このあたりから話がノイローゼ気味になってくる。もしMicrosoftが15%以上、35%未満のYahoo株を取得した場合、Googleは契約を破棄できるが、$250Mを要求することはできない。35%以上の株が取得されたときに限って違約金を取れるのだ。
私に言わせれば、これは「もし株主や政府がこの契約をつぶしにかかったら、そうなる可能性が高いが、そのときは仕方がないからMicrosoftとの話を蒸し返して、Googleに金は払わないよ 」条項に見える。
読者が契約の文言を自身であたってみたいのであれば、要約はここにある。
結局のところ損益は
Yahooは株主を大コケにしたあげく株主総会を控えている―いつまでも現実を無視しつづけることはできない情勢だ。現実はYahooの未来は暗いと告げている。Yahooは依然として市場占有率を失い続けている。優秀な人材が深刻な割合で流出しており、社内の士気はかつてなく低い。
Microsoftの検索部門を買収するという申し入れを受け入れれば、Yahooの将来は永久的にMicrosoftの支配下に置かれる。私はYahooがこれを嫌った理由がわかる。そうなるとGoogleとの提携が現時点で唯一の代替策だ。Yahooはいつなりと契約を打ち切ることができる―単にGoogleの検索広告を掲載しなければよい。しかし契約が生きているかぎり、Yahooは自社の検索プラットフォームの顧客がGoogleに流れていくのを見ていなければならない。しかもサードパーティーと合併したときには巨額の違約金を払わねばならない。.
株主の反乱ないし政府の介入によってYahooの狂気の沙汰にストップがかかった場合、唯一の可能な代替案として、Microsoftは依然としてYahooの全体ないし、少なくともその一部を手に入れられる可能性がある。あるいはそいうことにはならず、その場合はGoogleは十分な時間をかけてYahooの広告主を全員自社のプラットフォームに取り込んでしまおうとするだろう。さらにGoogleはYahooが誰かに買収された場合には多額の違約金を受け取ることができる。
どちらにせよ、Googleは勝つ。Microsoftも勝てる可能性がなくはない。
しかしYahooは敗北した。.
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(翻訳:Namekawa, U)




