日本の携帯ウェブ市場は超先進的―でも世界的なモデルとするのは難しい?
by Serkan Toto on 2008年8月11日

昨年、世界で10億台の携帯電話機が販売されたが、アメリカとヨーロッパでは携帯からのインターネット利用は遅々としてあまり進んでいない。それどころか、携帯ウェブには将来があるかなどという議論が最近もブロゴスフィアを賑わせたぐらいだ。

しかし、世界のある地域ではこんな疑問は全く出されていない―日本ではすでに2006年に携帯からウェブにアクセスするユーザー数がパソコンからのユーザー数を超えている。それでは、世界の他の国でも同様の現象が起きるとみてよいだろうか?

必ずしもそうとはいえない。(私の住む)日本で、携帯ウェブが成功した原因として5つの要因が考えられる。同時にこれらの要因は、他の国でなぜ携帯ウェブが離陸していないかも説明できると思う。

  • 高機能な携帯端末の普及と膨大な携帯専用サービスの提供
  • 携帯で初めてウェブにアクセスするようになったテクノロジー好きなユーザー
  • 信頼性の高いテクノロジーのインフラ
  • 携帯キャリヤとコンテンツ提供者の共生的関係
  • 政府の比較的健全な育成政策

成長のきっかけを作った3つの触媒―高機能携帯電話機、大量コンテンツ、要求水準の高いユーザー
携帯テクノロジーのマーケットにおける世界でもっとも進歩した実験室という日本のイメージは間違っていない。現在日本では、驚くべきことに、9千万台もの3G携帯電話機が利用されている。人口1億2700万人のこの国で、70%以上の人々が携帯のウェブ・データ契約を結んでいる。ちなみに3G携帯の普及率を他の地域と比較すると、アメリカ、323.8%(利用されている3G携帯の総数は5200万)、ヨーロッパ、11.1%だ。アメリカで携帯からウェブにアクセスできる契約を結んでいるのは携帯ユーザーの15.6%に過ぎない。

日本の3大携帯キャリヤ(SoftBankKDDI au、それに首位のNTT Docomo)は、毎年100機種以上の3G携帯電話機をリリースしている。どの機種も鳴り物入りで派手な機能を競い合っている。(iPhoneが日本で発売されたのはほんの先月に過ぎない)。日本の<ケータイ>には、店での買物の支払い(「お財布携帯」)に、公共交通機関の支払いに、2Dバーコードリーダーに、健康管理ターミナルに、辞書に、カラオケ・プレイヤーに、デジタルTVに、音楽プレイヤーに、eブックに、と盛りだくさんなサービスが用意されている。

一部の機種は、ブルーレイ・レコーダーからのビデオ転送機能、最寄りの警察に通報できる防犯ブザー、音声テキスト変換機能まで備えている。6月にDocomoは、Wi-Fi機能を備えた携帯ユーザー向けに、家庭内の無線LANを通じて最大54Mbpsで携帯用ウェブサイトにアクセスできるホーム・サービスを開始した

先端的機能を満載した携帯が手に入ることが、日本のユーザーの多くがパソコンを所有せずもっぱら携帯だけでウェブを利用する最大の理由だ。これは一時的流行ではない。日本のユーザーはほとんどSMSを使わない。代りに親指テキスト入力で、絵文字やエモーティコン、ギャル語、顔文字その他の流行の表記を利用している。飛行機のチケット予約、洋服の注文、中古品のオークション出品、ゲーム、直接引き落としで映画の切符を購入、といった機能は何年も前から日本の携帯で提供されてきた。

非常によくできたテクノロジー―ただし半分閉鎖された空間
日本企業は携帯電話市場に通常のインターネットのモデルを再現して持ち込もうとはしなかった。その代りに携帯電話専用のサイトとビジネスモデルを構築した。Docomoのi-modeが1999年にローンチしてブームに火が付いたといってよい。ただちにライバル各社がそれぞれ独自のウェブシステムを構築して後を追った。

今日では、日本の携帯ウェブは高速で洗練されており、技術的にも安定した使いやすいサービスとなっている。携帯電話の専用ボタンを1回押すだけで、数秒以内にオンラインにアクセスできる。通常はキャリヤが設定した専用のトップページが表示され、そこから容易にナビゲーションを始めることができる。あるいはユーザーは携帯ウェブサイトの直接URLを入力して所望のページを訪問することもできる。この場合、1キーのショートカットを使って簡便にブラウズが可能だ。

携帯版ではない通常のウェブサイトの閲覧も可能だ。たとえばDocomoの場合、独自の改変を加えたhtmlとi-modeのみサポートするプロトコルのミックスを用いている。つまり、auのEZwebの契約者はDocomoのウェブ環境にはアクセスできない(その逆もまた真)ことを意味する。ちなみに、WAPは日本ではほとんど普及していない。

しかしさすがの日本の携帯ウェブ産業もすべてがバラ色というわけではない。不適切なCSS、クッキーが利用できない、スクリプトがサポートされていないなど、デベロッパーはキャリヤの提供する環境が不十分なことに悩まされている。最近デベロッパーが特に大きなダメージを被ったのは日本政府とキャリヤによるコンテンツ規制―子供に有害なコンテンツを排除するための規制だった。

強力なトリオ―政治家、キャリヤ、コンテンツ・プロバイダがいずれも前向きに取り組んでいる
日本の携帯ウェブ・プロバイダはエンドユーザーから料金を得る料金の他に、デフォr-ルト・メニューの目立つ位置にコンテンツを掲載することでコンテンツ・プロバイダから多額の料金を徴収している。携帯キャリヤはまた各種の支払いを一括管理する役割を果たし、携帯上での取引をきわめて容易にしている。たとえば、ユーザーがi-modeサイトからゲームをダウンロードした場合、Docomoは手数料として約10%を徴収し、コンテンツ・プロバイダに残りを支払う。ユーザーは月々の携帯電話料金に合算された額を一括して支払えばよい。

つまり、日本の携帯ビジネスでは、キャリヤとコンテンツ・プロバイダの協力の上に3本柱のキオスク・モデルが打ち立てられている。

携帯キャリヤは、

  • 安定した通信環境と技術的インフラを提供する。
  • 迅速かつ確実は支払いシステムを提供する。(エンドユーザーとコンテンツ・プロバイダ向け)
  • 収入の折半を受け入れる

このフレームワークに基づいて、コンテンツ・プロバイダは、

  • 魅力あるコンテンツを開発する。
  • 自身のサービスをマーケティングする。
  • 売り上げの一定割合をキャリヤに支払う。

携帯ウェブ・マーケットは日本政府の強力な支援のもとに発達した。つまり、日本政府が政策的判断により3G携帯の導入を図ったため、携帯キャリヤは新たな帯域のために1円も支払う必要がなかった。これに比べて、2000年に英国、2001年にドイツが3G携帯を導入した際には、それぞれ$58B(580億ドル)、$78(780億ドル)をライセンス料としてキャリヤから徴収している。日本では国庫の収入を図らず、マーケットの立ち上げを重視する政策が採用された。これが成功を収めた。

日本の総務省によると、2007年の日本の携帯電話の売り上げは$106B(1千60億ドル) (2006年に比べて23%アップ)、携帯通販は$67B(670億ドル)、携帯コンテンツは$39B(390億ドル)に上る。ひとつだけ例を上げよう。携帯電話を通じた音楽ダウンロードの売り上げは$10.2(102億ドル)で、2006年から42%のアップとなっている。

日本は急速に超携帯社会へと変貌を遂げつつある。他の地域でこれを真似するのは、少なくとも同じようなペースで実行するのは相当難しいだろう。注目すべきは、アメリカその他の社会が、携帯ウェブの構築にあたって、よりオープンな標準を採用し、閉ざされた空間となることを避けることによって急速な発展を遂げ、日本を追い越せるかどうかだ。この点の成否については将来に待つほかない。

一方で、日本はいかにも日本らしく、すでに次世代の環境づくりに邁進している。次世代携帯ネットワークだ。今年3月にDocomoはスーパー3Gシステムの実験で、パケットを250Mbpsの速度で送信することに成功し、2009年中のローンチに向けて準備を急いでいる。

(写真:Matsuyuki

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(翻訳:Namekawa, U)

  • http://welcome-board.asia/20080811/final-fantasy-remix/ FINAL FANTASY REMIX | welcome-board

    [...] 日本の携帯ウェブ市場は超先進的―でも世界的なモデルとするのは難しい… [...]

  • http://yoshy.wordpress.com/2008/08/12/links-for-2008-08-11-deliciouscom/ links for 2008-08-11 [delicious.com] « 個人的な雑記

    [...] TechCrunch Japanese アーカイブ » 日本の携帯ウェブ市場は超先進的―でも世界… (tags: business mobile) [...]

  • http://www.wimob.com wimobjapan

    日本を離れてみて、そして現在モバイル向けのサービスを提供する仕事をしてみて、日本の携帯電話文化がとても発達していて、特殊であることに気づかされました。
    定額制が一般的なので、料金を心配せずに利用できますし、コンテンツもとても充実していますよね。
    確かに、これからアメリカやヨーロッパで携帯向けのサービスをどのように展開させていくのかは大きな課題だと思います。
    私が現在携わっているアプリケーションは、Webから携帯へ直接コンテンツをダウンロードできるものです。ウェブサイト管理者が改めてモバイルサイトを作る必要がなく、Bluetooth、赤外線そしてUSB通信を通してダウンロードします。ユーザーが料金の心配をすることなく利用できるので、これから需要が増えていくのではと社員一同楽しみにしています。
    日本とは違った形であったとしても、モバイル文化が更に発展していくことは世界的な流れとして強いのではと思います。

  • http://jp.techcrunch.com/archives/20090518big-brother-in-japan-university-tracks-students-via-free-iphones/ [CG]ほら、気をつけて!無料iPhoneでビッグブラザーが見ているよ。

    [...] 基本的にはiPhoneは学生の管理に使われる。学生が学内にいるかどうかチェックして代返を防ぐのにも使えるわけだ。もちろん収録授業を見たり、宿題提出やミニテストにも使える。なにしろ日本は世界でもトップのケータイ国家なんだから・・・ [...]

  • http://jp.techcrunch.com/archives/20090709multi-platform-media-player-doubletwist-gains-hundreds-of-thousands-downloads-now-available-in-japan/ 人気のマルチプラットホーム対応メディア同期ソフト、doubleTwistが日本でも使えるようになった

    [...] ガジェットマニアの日本市場への参入 doubleTwistは英語圏諸国では実にうまくいっているが、今日同アプリケーションのローカライズ版が、携帯電話マニアの国日本に登場する(当面はWindows版のみ。デモビデオ)。JohansenとFrantzosが、最初の非英語圏市場に日本を選んだ主な理由を語ってくれた。 [...]

  • http://jp.techcrunch.com/archives/200911276-reasons-why-twitter-japans-subscription-model-might-work-in-japan/ Twitter Japanの有料コンテンツ制が成功する(と思われる)6つの理由

    [...] 日本のモバイルWebユーザはコンテンツにお金を払うことに慣れている。毎月の電話料金に課金額が含まれるという便利な方式なので、コンテンツの提供者は数セントから数ドル程度の料金を課金しやすい(日本のモバイルWeb事情)。Twitterのつぶやきも、まさしくコンテンツだ。 [...]

  • http://jp.techcrunch.com/archives/20100518photo-gallery-japans-softbank-shows-13-new-twitter-powered-cell-phones/ 日本のTwitterに強力な援軍―ソフトバンクモバイル、Twitterをプレインストールした携帯13機種発表

    [...] TwitterのCEO、Evan Williamsもソフトバンクのプレスカンファレンスにサンフランシスコから(Ustream経由で)加わり、「日本は携帯の高度な利用がもっとも普及している地域なので、携帯経由のTwitterのさらなる普及に大いに期待している」と語った(全Twitterユーザーの約37%のが携帯から利用している)。ここでソフトバンクの協力が得られたのは追い風だ。ソフトバンクモバイルには2200万の契約ユーザーがおり、ここ数年、健全な成長を遂げている。ソフトバンク・グループは全体としてアジア最大のテレコム企業であり、現在の株式時価総額は2兆4100億円($26B)だ。 [...]

  • http://blue-ray.wazzeka.com/?p=7 ブルーレイレコーダーについて語ってみました | ブルーレイレコーダー 比較 & ランキング

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    [...] ツイートを位置対応サービスに利用することは、必ずしも新しいアイデアではないが、コンテンツをこれだけの大きさのパートナーと、その先進的なモバイル市場(テスト市場?)に公式にライセンスすることは、Twitterにとって良いニュースだ。 [...]