オンラインで音楽ストリーミングを行うスタートアップは非常に辛い立場を強いられている。オンデマンドのストリーミングでは、1曲配信するたびに0.4セントないし1セントを徴収される。これは利用者が曲を再生するたびにレーベルに対して支払われる額だ。ネットワーク帯域を確保したり、ストレージの確保ももちろん行わなければならない。これら諸費用は、オンデマンド音楽配信を行うスタートアップにとって負担の軽いものではない。ここでの金の流れはベンチャーファンドからスタートアップへ、そして音楽レーベルへという流れになる。アーティストに還元される額はごくわずかなものであり、また広告収入で経費を賄うことなど全く遠い話だ。
音楽レーベルにとっては、スタートアップが儲けようが損をしようが、あるいはサービスを停止することになろうが、どうでも良い話だ。音楽レーベルにとっては完全降伏の日を可能な限り先送りするための資金を稼ぎ出すことのみが問題なのだ。この完全降伏の日までは、音楽業界にインターネットのもたらす決定的な経済システムがもたらされることはない。厳しい法律が作成されて、ファイル共有罪によって利用者を監獄に送ったりするようなことがない限り、この完全降伏の日は必ずやってくる。おそらくは法律によってもこの流れを留めることはできないだろう。
ともかく、現状の気違いじみた経済システムによって、音楽系スタートアップの振る舞いは臆病なものとなってしまっている。この分野で最大のプレイヤーはMySpace Musicだろう。このMySpace Musicの発表によれば、同サービスは1週間に10億曲のストリーミングを行っている。これはつまり1週間に200万ドル以上を音楽レーベルに支払っているということになる。MySpaceのストリーミング費用は業界内最安に設定されているだろうが、それでも1曲あたり0.4セントを下回ることはあるまい。広告収入でこの費用を賄うことなどできているはずがない。
配信サービスを行う側としては、ダウンロードや販売、製品販売や着メロに期待するしかないということだ。しかしそれら収益源からの収入が大幅に増加しているという話は聞かない。
つまりはスタートアップにとってみれば、音楽レーベル側がストリーミングされる毎に課金しているストリーミング費を大幅に下げるまではチャンスなどないということだ。あるいはこれまでと完全に異なるビジネスモデルを構築してレーベル側と協調していくことが必要となる。しかしそういったことは直ちに起こり得るものでもなさそうだ。
さらに現状の経済システムは、スタートアップ企業の行動形態にも影響を及ぼしている。たとえばあるスタートアップに対してメールを出した。そのサービスは最近パートナーとの契約に失敗はしたが、それによってトラフィックが大幅に減少することはなかった。その点に関し、うまい具合に事が運んでいる様子をTechCrunchで記事にしないかと提案してみたわけだ。しかしスタートアップ側の返答は頑なな拒否だった。当該スタートアップにしてみれば、音楽レーベル側との話し合いに影響を及ぼしかねないリリース記事など出したくないというわけだ。サービス側としてはむしろ状況の苦しさをアピールしたいということのようだ。
送られてきたメールを見てみよう:音楽配信を手がけるスタートアップとしては、サービス利用者を増やしたくなどないのです。利用者が増えるたびにお金を失うことになっています。多くの利用者を得て成功を収めていると見られると、音楽レーベル側との費用引き下げ交渉に悪影響を及ぼしもするのです。
先日はimeemの関係者複数人と、同社を巡る噂について話をする機会があった。その噂とは音楽レーベルに対し莫大な負債を抱えて支払うことができず、資金調達にもサービスの売却にも失敗してしまったというものだ。3000万ドルという額は大げさに過ぎるということ以外、詳しい話を聞くことはできなかった。VentureBeatに掲載された話によれば、imeemが負っているのは千万ドル単位ではなく百万ドル単位だとのこと。
負っている額が3000万ドルだろうが100万ドルだろうが、ともかくビジネスモデルがうまく機能しておらず、音楽レーベル側が条件を変更しない限りこれからもうまくいくことはないということだ。もちろん音楽レーベル側が速やかに条件の変更を行うこともない。
大手音楽会社はストリーミングサービスを嫌っている
音楽配信がCD売上げの減少を賄ってくれるわけではなく、大手音楽レーベルはストリーミングサービスに対して好感情を抱いてはいない。またストリーミングがダウンロードに繋がるものではないことも明らかになりつつある。噂によれば音楽レーベル側はストリーミングサービスになど消え去って欲しいと考えているようだ。そうすればダウンロード販売に注力することができ、それはすなわち完全降伏の日を先送りすることにも繋がる。
このような状況の中、レーベル側が音楽スタートアップのためにストリーミング費用の再交渉を行うという話については眉に唾した方が良い。ストリーミング1回あたりの費用を1セントから0.4セントにしても、スタートアップ側にとっては効果の薄い延命策にしかならないのだ。結局のところはサービスから撤退していくこととなる。ベンチャーファーム側も、ストリーミングサービスに資金を投入することには飽いてしまっているのだ。
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(翻訳:Maeda, H)




