画期的なアイディアより地道な作り込みが成功への近道
by Sarah Lacy on 2009年6月28日 append.gif この記事をBuzzurlにブックマークする

数年前、PayPalとSlideのファウンダーとして名高いMax Levchinが私にこう語ったことがある。「シリコンバレーには2種類の起業家がいる。一方は明確なビジョンをもって未来を見通し、画期的なアイデイアで新しい市場を創造するタイプ。もう一方はひたすら努力して製品の作り込みの改良を続けるのが得意なタイプだ」。そしてLevchinは自分自身を後者のタイプに分類した。なるほど、Slideの成功の要因は、RockYouのようなライバルから良いアイディアをいただいて、巧みに改良を加えたところにあったかもしれない。LevchinはBloggerとTwitterのファウンダー、Evan Williamsを真のビジョンを持つ起業家だと言った。当時Twitterは一部のギークだけが注目する小さなサービスに過ぎなかった。しかしLevchinは、多くのWeb2.0スタートアップの中で、Twitterだけが今まで試されたことのない画期的なサービスだと見抜いていた。

Twitterが今日これほどもてはやされていることを考えると、もし「成功のために重要なのはビジョンか作り込みか?」というアンケートをしたら、ほとんどの回答者がビジョンと答えるような気がする。しかしLevchinがその話をしたときにはっきりと認識していたように、実はビジョン派はシリコンバレーではひどい目に遭う可能性の方が高い。

音楽産業を根本的に変えたのはNapsterだった。しかしそれによって儲けたのはiTunesだ。Googleはドットコム・バブル破裂期に検索エンジンを構築しようとした多数の会社の最後の1社だった。そのため創立期には多くのベンチャーキャピタルからけんもほろろの扱いを受けるという苦労をした。Blackberryではなく、本当はPalmがスマートフォンのパイオニアだ。同様にソーシャル・ネットワークのパイオニアはFriendsterだ。Friendsterが創立された頃、FacebookのMark Zuckerbergは大学に入ってさえいなかった。

それじゃAppleはどうか? なるほどコンピュータ・メーカーとしてはビジョン派といえるだろう。しかしAppleが企業として成功を収めたのはiPodとiPhoneの成功による―どちらも本質的にはよくできたMP3プレイヤー、よくできたスマートフォンだ。この傾向はエンタープライズ向けソフトウェアの分野でも同様だ。i2、PeopleSoft、Siebelなどが開発した革命的なソフトウェアは市場に君臨することに成功しただろうか? 残念ながらそうはなっていない。エンタープライズ・ソフトのトップ企業はSAPだ。この会社のテクノロジーは平凡だが、アプリケーションは優秀だ。それに反して、たとえば、Siebelを買収したOracleは技術は優秀だが、アプリケーションの質はさっぱりだ。

それにまたTiVo〔インターネットサービスとハードウェアを組み合わせたTV番組のデジタル録画サービス〕という例を忘れるわけにはいかない。Tivoはテレビ視聴のスタイルに文字通り革命をもたらした。さらに全国ネットワークであれ、ケーブルであれ、広告主であれ、テレビに関係するほとんどすべてのビジネスモデルに大きな影響を与えた。その結果は? アイディアをそっくり真似したライバルがハードウェアを無料で配るようになってTivoの経営は苦しくなっている。今でも人々は“TiVo”と口にするが、もはやTiVoという企業のサービスを指してはいない。

TiVoのCEO、Tom Rogersが珍しくテレビのインタビューに応じてNBCのPress:Hereに出演したとき、彼は明るい展望を繰り広げてみせた。まず財務内容だが、昨年ついに純利益ベースで$100(1億ドル)という立派な黒字化を達成した。株価については昨年11月16日の$4.60という底値から$11にまで持ち直した、等々。しかし、大きな疑問は、TiVoに今後も成長の余地があるのかという点だ。現在、TiVoのようなサービスが必要な消費者はすでに全員が加入しているのではないか?

Rogersによれば、TiVoの将来は3つの分野が期待できるという。単に電波なりケーブルなりで放送されるよりもはるかに多くのコンテンツを提供すること。ユーザーが現在どの番組を視聴しているか秒単位で把握し、たとえばCM早送りに対して広告主にCM視聴率を高める解決策を提示するなどインターネットを生かしたマーケティング・リサーチを行うこと。こうした課題を解決するにあたって難しいのは、技術革新というよりむしろ実施の方法だ。もちろんTiVoぐらいの企業になれば買主はいつでもいるだろう。しかし株式市場の低迷が続く中、TiVoとしては当面会社の売却は考えていないだろうと思う。

TiVoの将来戦略がコンテンツの強化とTV局や広告主との提携にあるのは、Rogersがギークではなく、テレビ界の出身であることを考えると当然かもしれない。彼は長年にわたってNBCの幹部であり、CNBCとMSNBCの共同ファウンダーでもある。「TiVoのHD化はなぜあれほど遅れたのか?」と私が質問したのを巧みに受け流しているところをご覧いただきたい。(ちなみにこのイタビューの全体はベイエリアでは日曜の朝にNBCで放映されるが、オンラインではここで公開されている)。

[原文へ]

(翻訳:Namekawa, U)

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