不可能を可能に:大学のイノベーションを商品化する法
by Vivek Wadhwa on 2009年10月1日

moon11-19-02b【編集部より:本稿は、起業家出身の学者、Vivek Wadhwaによる寄稿である。同氏は現在UCバークレー客員教授、ハーバード法科大学院上級研究員、およびデューク大学常任理事を務めている。Twitterアカウントは@vwadhwa。】

前回、イノベーションの鉱脈は、大学や研究施設の棚に積まれた特許と発見の中に眠っているということを書いた。次のiPhoneアプリを作ろうと、先を争うシリコンバレーの起業家たちは、次のインターネットや、画期的なメモリーデバイスや、あるいは伝染病の治療法に繋がるかもしれない初期段階の大発見を無視している。大学では研究者たちが、膨大な数の世界を変えるブレークスルーを発見している。しかし、その実績の殆どは陽の目を見ることがない。助成金の付いた基礎研究の中で、商用ベンチャーになったものは0.1%にも満たない。

経済発展のためには、このギャップを埋めて、大学の研究を商用化するシステムを改善する必要がある。解決策を求めて取り組んでいる人はたくさんいる。残念ながら学界の動きは遅く、そんな解決策はよくて数年遅れだ。一方これは、大志ある起業家にとって、一部の賢明なVCと同じように、この金脈を堀り当てるチャンスでもあるのだ。

指針を作るにあたり、デューク大学の同僚であるBarry Myersとブレーンストーミングを行った。Myersは、大学教授とベンチャーキャピタリストというジキルとハイドを演じている人物だ。彼に代わって免責事項を書いておく。Barryは、読者に大学のシステムを回避するようにと言うことは(飲まない限り)決してないが、ここにわれわれの作った宝探しの地図がある。

まず、自分が本当に興味のある分野を一つ選び、その科学の本質を時間をかけて学びとる。学校に戻ったように思えるかもしれない。違うのは、学んでいることの重要性を知っていることだ。

次に、何を探しているかを、はっきりさせよう。学界には多くのアイディアがあることに気付くだろうが、欲しいのは「独自のアイディア」、それはVCが「独占獲得候補」のカテゴリーに分類するものだ。それは、他に誰も気付いていない(かつ他に誰も名乗りを上げていない)発明である。そんな金塊を見つけたかどうかは、自分で判断するしかない。こう自問してみよう。「このテクノロジーが使えたとして、その技術的能力は市場に存在する何よりも優れているだろうか?」 答えがイエスなら、それに賭けて突っ走ろう。ただし、確実に独占権を得ること。通常それは、実際の製造段階に関連する材料や、バイオ特許や、製法特許を意味する。

それでは金鉱を掘りに行こう。まずは正面扉をノックする。研究目的の大学には必ず、研究の商用化業務を担当している技術移管部門がある。そこですべての特許を管理して、ライセンス契約の交渉も行っている。こうした部署の中には実に有能で、一連の新発見の分析を手助けしてくれるところもある。時間を惜しまず発明の価値を説明して、こちらが考えをまとめるのを手伝ってくれる。発明者本人に紹介したり、時には他の起業家や出資者候補と引き合わせてくれるかもしれない。

しかし、それは童話の世界だ。残念ながらそんな技術移管部門はめったにない。殆どの場合、契約相手から少しでも多くライセンス料絞り出しつつ、万が一安く売りすぎたテクノロジーが大成功したときに備えて自分を守ることが人生の目的、という弁護士と官僚とで固められている。

そういうわけで、裏口から入る必要があるかもしれない。大学には「センター」と名の付く、起業や研究の商用化など特定分野の研究を目的とする施設(システムを整備しようとしている部門)がある。例えば、われわれのいるデューク大学には、研究商用化・起業センター(Barryが責任者で私も所属している)があり、バークレーには、Iklaq Sidhu率いる起業・テクノロジーセンター、スタンフォードにはTom Byersのスタンフォード・テクノロジー・ベンチャー・プログラムがある。これらの施設では定期講演会の開催や、メーリングリストの発行などを一般向けに行っている。学者が自身の研究について話すのを聞くのは、恐ろしく退屈かもしれないが(それが研究者というものだ)、その場に行くだけでも、学部の重要人物に会って、今その分野で何が起きているかを聞くことができる。しかも、多くの場合、その種の人間でそこにいるのは、あなた一人だけだ(その種の人でそこに座っていられるだけの知性または時間のある人は、そういない)。

もしすばらしいアイディアに出会ったら、コーヒーでも飲みながらもっと詳しい話を聞かしてくれるよう、教授に頼んでみるといい。基礎研究畑の学者の殆どは、自分の話を一般人に話す機会などないので、喜んで話してくれるだろう。準備は怠りなく。教授たちの書いた論文には残らず目を通して、自分を賢く見せること。大学のスタッフと会うようになったら、誰か大学全体に通じていて、面倒を見てくれる人がいないか聞いてみよう。どの大学にも、そんな人物が2~3人はいるものだ。大抵は「ライン」外の管理職という役職の人がいる(副学部長、研究担当学務部長代理、等)。そんな人たちを見つけて、コーヒーでもご馳走すればもう出入り自由だ。

大学の学生たちも、起業クラブやビジネスプランコンテストなどのイベントを主催している。コンテストは全くの無駄である。この手のイベントに優勝したことのある実在企業は聞いたことがない(みんながAkamiの名前を挙げるが、実はMITのコンテストで負けている)。しかし、学生たち、特にPhDの研究生たちは学内出来事の内常に通じていることが多い。私はUCバークレーに来てすぐにEli Chaitと会って、大学の研究人脈と繋がりのある教授や学生のグループを紹介してもらった。Eliは大学3年生だが、Alsop Loue Partnersでアルバイトをしながら、起業家グループのStartup @ Berkeley(startup.berkeley.edu)のリーダーを務めている。

金脈を探り当てたら、そこからが困難の始まりだ。技術移管部門との契約交渉は苦痛だ。無茶な条件を言ってくるだろうが、この世に交渉できないものはない、ということを覚えておこう。目標達成報酬、ロイヤリティー、前払金、特許料等々。いずれも交渉次第だが特許料だけは例外で(通常1万~5万ドル。早い方が安い)、これは別の財布に入って今後の特許基金となるからだ。株式の要求は通常0~5%で、ロイヤリティーは2.5~5%程度だ。後期段階のテクノロジーで市場性のあるものだと、10%を要求されることもあるが、早期段開の新技術であれば、恐らく1%ほどで済むだろう。

価値ある発明を見つけることができたら、直接学部とライセンスの交渉をしよう。学部の人たちは交渉に応じてくれるはずだ。決して技術移管部門を通すように仕向けてはいけない ― 大量の訴訟や支払い遅延のリスクを負うことになる。正直に隠しごとなく接すれば、教授陣も正直で隠しごとなく話してくれるだろう。知的財産権に関しては保護的な態度を見せるかもしれないが、それは当然である。彼らは自分たちの仕事の潜在価値を誰よりも理解しているのだから。彼らの利益を守り、システム(技術移管部門、条件規定書、企業評価、ストックオプション、権利行使等)を回避するよう誘導しよう。

これを舵取りできれば、後は彼らが世界を変えてくれる。そして、このミッションに成功しても失敗しても、今よりずっと賢くなることはまちがいない。何もかもがうまくいけば、世界を変えられるかもしれない。さあどうする。つまらないiPhoneアプリをまた一つ増やすのか、それとも不可能を可能にするのか。私はそう思った。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi)

  • http://maclalalalink.wordpress.com/2009/10/02/%ef%bc%92%ef%bc%90%ef%bc%90%ef%bc%99%e5%b9%b4%ef%bc%91%ef%bc%90%e6%9c%88%ef%bc%90%ef%bc%92%e6%97%a5%ef%bc%88%e9%87%91%ef%bc%89/ 2009年10月02日(金) « maclalala:link

    [...] 不可能を可能に:大学のイノベーションを商品化する法 | TechCrunch Japan [...]