書評:ケン・オーレッタの近刊、Googled― 「Googleは1千億ドルのメディア企業を目指す」
by Erick Schonfeld on 2009年10月6日

もしGoogleを舞台にした連続TVコメディーがあったら、オープニング・シーンは共同ファウンダーのSergey Brinがローラーブレイドを履き、Tシャツ、短パン、汗まみれで息を切らしながら会議に遅れて入ってくるところになるに違いない。このBrinの姿はあまりにも有名になって、Googleについて書かれたほとんどあらゆる主要文献に取り上げられている。Ken Aulettaの最新刊、Googled: The End Of The World As We Know Itにもちゃんとこのエピソードが出てくる。〔ケン・オーレッタは『パーフェクト・カンパニー』、『巨大メディアの攻防―アメリカTV界に何が起きているか』などで日本でも著名なノンフィクション作家〕

最初のシーンは2003年にGoogleキャンパスでMel Karmazin(当時のViacomのCEO)が、汗臭いBrinともう1人のGoogleの共同ファウンダー、LarryPage、そしてCEOのEric Schmidtと会議しているところだ。この訪問の最後に、Karmazinは「Googleがタブーを破ってメディア事業をめちゃくちゃにしている」ことに戦慄したと告げる。「キミらは広告主にどの広告が効果があってどの広告が効果がなかったかを教えちまっている!」

Aulettaは長年にわたってNew Yorkerのスター記者であり、メディア業界に非常に詳しい。彼はBrinやPage、Schmidtにも長時間インタビューしているが、この本でいちばん面白い部分は、上で引用したように、Aulettaが親しく付き合ってきたメディア界の大物たちから聞いた話だ。この本は、既存のメディア企業がインターネット、なかでもことにGoogleに脅威を感じ始めた時期に、Googleがメディア企業として急成長していく姿を追っている。

Googledはまだ出版されていないが、私は幸運にもゲラ刷りに目を通すことができた。Aulettaが聞き出し、この本の中で何度も繰り返す驚くべき発言はこれだ。

2007年に、Eric Schmidtは私に「いつかGoogleは1千億ドル級のメディア企業になる」と語った。これはTime Warner、WaltDisney、News Corp.などの2倍以上の規模だ。

本書の後の方で、Schmidtはこの発言を補足する。Shcmidtは1千億ドル企業となるためにGoogleが参入して大きな成功を収めるベき巨大ビジネスのリストに、テレビ、エンタープライズ、YouTubeなどすでに手をつけているビジネスの収益化などを挙げた。単なる仮定の話であり、理屈では、これらのビジネスでの売上を合計すれば、Googleが1千億ドルのメディア企業になることは可能だというのだ。

しかし仮定であろうとなかろうと、1千億ドルというのはなみなみならぬ数字だ。Aulettaは彼一流の巧みさでGoogleの話を自分の得意分野、つまりメディアの世界に溶け込ませ、いかにしてGoogleがその世界を震撼させたかを描く。

しかしAulettaは「1千億ドル」の件に関しては2007年のSchmidt発言を繰り返さざるを得ない。というのは現在ではGoogleは既存メディア業界を無用に刺激することを避けようとしているからだ。Googleは新聞社、出版社からテレビ局、ハリウッドの映画会社に至るまであらゆるメディア企業から恐れ嫌われる存在になっている。そのためSchmidt自身、このごろはあまり勇ましいことを言わず、低姿勢になっている。

Aulettaが「メディア」という言葉で意味するのは広告であり、コンテンツの生成ではない。Googleはコンテンツの生成は喜んで誰か他のものに任せるつもりでいる。Aulettaがメディアをめぐる現代最大の事件、Googleを描く手法の例としてこの部分を引用しよう。

しかし私に語ったところではPageはGoogleをコンテンツ企業とは考えていない。「Googleのコンピュータはコンテンツを整理する。われわれはコンテンツを処理して、ランク付けしたり、その他いろいろ有用なことをする。われわれはたくさんの人が簡単にコンテンツを生成できるような仕組みを作った。それがわれわれの本当の強みだ」。Googleの強みは、ユーザーを既存メディアから新しいインターネット・メディアへ移行させる橋渡しをするシステムを作ったところにある。これは一方ではある種の摩擦を生んでいる。しかし旧メディアを含めて誰も彼も満足させることがGoogleの目標ではない、とPageは言う。「われわれの目標はユーザーを満足させることだ。われわれは無論、世の中や人々にダメージを与えるような無理なやり方はしない。しかし、進歩は必要だ。進歩があれば不利益をこうむる人々も出てくる場合がある」。こうした信念に支えられて、PageとGoogleの技術者は、事実、多くのメディア企業に深刻な不利益をもたらしてきた。

Googleの巨大な野心は他のインターネット起業家、たとえばMarc Andreesenにさえ、その動機に疑念を抱かせる。Andreessenの言葉は傑作だ。

“連中の計画は「何もかも全部やる」というものだ。GoogleはAndy Kaufman(80年代に活躍したアメリカのコメディアン)に似ている。Andy Kaufmanの面白かったところは冗談か本気か分からないところだった。Googleは真面目な顔で「ボクたちはただの検索エンジンです」と言う。「ボクたちは他の業界の皆さん、広告代理店や電話会社の皆さんの邪魔にはなりません。新聞社、出版社、ハリウッド、誰の邪魔もしません」だとさ。冗談だろ。

Andy Kaufmanはインライン・スケートを履いたことがあっただろうか?

今までの引用でも分かるとおり、この本はGoogleを、成長しつつあるメディア企業であると同時に既存のメディア業界を破壊する者として描いている。AulettaはGoogleとそのライバルのメディア企業から得た内輪話や逸話を綴りあわせて素晴らしい物語を作りだしている。ただし、Aulettaが描くGoogleはあくまでGoogleの一つの側面に過ぎない。Googled はAulettaの長年のメディア業界取材経験を反映したGoogle像になっている。しかし、そのようなAulettaの視点こそ彼の本をベストセラーにしている理由だろう。膨大な取材と調査に基づくディテールも魅力的だ。著者の視点に多少のバイアスがあっても、思いがけない方角から照明されてGoogleの新しい姿が浮かび上がったのは収穫だ。

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(翻訳:滑川海彦/namekawa01