Appleは、先週われわれが予告したWolfram AlphaのiPhoneアプリの承認に、殆ど時間をかけなかった。Appleは、アプリが提出されてからわずか数日で承認プロセスを終え、この速さにはWolfram Alphaのチームも驚いたようで、実は同社では承認前にテスターからフィードバックをもらうつもりだった。私もテスターの一人なのだが、Wolframにフィードバックする代わりに、ここに書くことにしよう。
Wolfram AlphaのiPhoneアプリには、重要なポイントが2つある。1) 非常によく出来ていてカッコいい。 2) これを$50で売るのは正気の沙汰ではない。
ここでは、主に2番目の点について語ろうと思う。なぜなら、Wolfram Alphaを使ったことのある人にとってこのアプリの説明は、同サービスの洗練されたインターフェースである、というだけで十分だからだ。Wolfram Apphaがアプリを$50で売る論理は理解したが、この論理には誤りがあると私は思う。彼らが言うには、
価格について ― $49.99という価格は、これと比較して機能の劣るグラフ機能付電卓の半分であり、そこからこの数字に行きつきました。あるいは、以前から言っているとおり、スターバックスのカフェラテ12杯分の値段でもあります・・・
どちらの指摘も当たっているのだが、App Storeは、例えばオフィス・デポにふらっと入ったり、グラフ電卓を買うのとは異なる経済的現実を作り上げてきた。アプリは安いほどよく売れる ― 無料または$0.99 ― ことは明白だ。Appleは最近この傾向を緩和すべく、App Storeに「トップセールス」セクションを追加した。これはよかったのだが、$90のNavigonというGPSナビソフトを除き、トップセールスアプリはすべて$10以下であり、かつその殆どは$3以下なのである。【訳注:日本ではトップセールス上位20に、1000円以上のアプリが10本以上入っている(09-10-19現在)】
現実はといえば、よく売れている$10以上のiPhoneアプリは両手で数えられるほどしかない。その中でも$20以上となると、恐らく片手で足りるだろう。さらにそこから、GPSナビソフトと医者向けの何本かのアプリを除くと、残るは2~3本だろう。
そして、申し訳ないがWolfram AlphaにはNavigonほどの影響力はないし、GPSナビのように高額が当たり前の分野に居るわけでもない。同社は「一般的なディスカウントやセールの計画がある」とは言っている。しかし、本気でこのアプリを売りたいなら、恐らく90%引きにする必要があるだろう。正直なところ、たとえ$10でも、このアプリを買う人が何人いるか、私には自信を持って言うことができない。
そしてこれは同社にとって非常に残念なことだ。繰り返しになるがこのアプリはよくできている、しかしこれがApp Storeの現実なのだ。Nintendo DSなどで$30のゲームは、iPhoneでは$3で売られている。家庭用ゲーム機で$60のゲームだって、iPhoneなら$10以下だ。グラフィックの美しさは同じとはいえないが、楽しみは変わらないと言ってもいい。もちろん、EAをはじめゲーム会社が$30で売ろうとしなかったわけではないが、無理だと気付いたのだ。
Wolfram Alphaがこの現実を理解するためには、痛い目にあう必要があるかもしれない。$100のグラフ電卓に取って代る、と言うのは結構だが、WiFiか3Gが必須だということをお忘れなく。しかもiPhoneにはすでに電卓があり、もっと高度なものもあってどちらも無料だ。さらにApp Storeには、たった$0.99のグラフ電卓アプリが山ほどある。
しかし、Wolfram Alphaは、グラフ電卓にはない興味深いデータを提供してくれる、と言いたいかもしれない。それもまた真実であり、例えばBig Macとフライドポテトとコーラのカロリーの詳細データを教えてくれる。しかし、このアプリをiPhoneやiPod touchで使えているということは、すでにそこではGoogleが使える上、もっと端的に言ってしまえば、Wolfram Alphaのモバイル版も、それも無料で使えるのだ。
この価格が議論を呼ぶことになろうということを、会社が予想していたのは間違いない。こう続けている。
Wolfram Alphaサイトの中核部分は今後もずっと無料です。このアプリは、当社が贈る「プレミアム」体験の一つです。ターゲットは、これを特に本気で使うユーザーであり、価格もそのように設定しました。もちろん、このアプリのエゴノミクスとスピードは、価格に見合ったものだと考えています。
「エルゴノミクス」と言いたかったのだろうと思うほかないが、このフロイト的失言はよしとしよう。
たしかにこのアプリは優れたエクスペリエンスを提供してくれる。そう、無料のウェブサイト以上の体験を。しかし、$50分の違いかとといえば、答えはノーだ。$10、かもしれない。$5、もう一息か。そしてこれが、何度も言うようにApp Store経済の現実なのである。
また以前にも書いたとおり、このiPhoneアプリは、Wolfram Alphaの最も重要な財産を拡張すること願って公開された新APIの最初の事例でもある。しかし、より多くの人たちにデータを利用してもらうためには、$50という値付けはナイスプレーとはいえない。まずは自分たちのデータにユーザーを引き付けておいて、いずれeユーザーがその価値に目覚めた頃に料金を取っていく方が得策だったのではないか。もちろんそれは、価値に目覚める時が来ればの話であり、Wolfram Alphaがそうなるかどうかは全く予想がつかない。
もう一つ面白いのは、Bingとの取引きが噂されていたにもかかわらず、Wolfram Alphaアプリの標準検索エンジンがGooggleだったことだ。BingとYahooはいずれもオプションで、使うためには設定を変更する必要がある。
Wolfram AlphaアプリはApp Storeのここにある。
[原文へ]
(翻訳:Nob Takahashi)




