われわれの「ソーシャル・ゲームの詐欺まがい広告を告発する」キャンペーンはこのあたりでどうやら一段落のようだ。この間、Zynga、RockYou、それにMySpaceまでユーザー保護のために力を入れる方針をいち早く打ち出したのは驚きだった。シリーズの締めくくりとして、著名なインサイダーに業界の長期的な発展のためのロードマップを語ってもらうことにした。この問題の背景については、この記事を参照。(記事末のアップデートに関連記事へのリンクがある)。
この記事はオンライン・ソーシャル広告代理店、TrialPayのCEO、 Alex Rampell の寄稿。TrialPayは社員80名、企業のオンラインでのPRと関連する支払いを処理する代理店で、Skype、McAfee、Match.com、Photobucket、Kmart、1800Flowers、Playfishなどの有名企業をクライアントにしている。われわれはこの問題を調査するため多数の業界関係者にインタビューしたが、誰もが一致して「もっとも公正な方針を貫いている代理店」としてTrialPayを上げた。そこでわれわれはAlexに寄稿を依頼した。
〔日本版編集部: 原文の後半、Social Gaming Today以降を翻訳しています。前半については原文を参照してください〕
ソーシャル・ゲームの現状:「お知らせ」広告の現状はひどい―しかし希望も?
さて、ここからはソーシャル・ネットワークが普及した現在のわれわれの状態を見ていこう。以前大いに流行った「何々すれば無料でiPodをプレゼントします」式の広告に代わって「何々すれば無料でゲーム(バーチャル)通貨をプレゼントします」という「お知らせ広告」が蔓延している。これがやがて業界全体にどういう影響を与えるのか考えてみよう。実は一見するより実情はずっと悪い。一般ユーザーが企業の「お知らせ」に応じて登録を繰り返していくにつれて、そのユーザーのリード〔見込み顧客〕としての質は低下する。ユーザーがそうした申し出に登録するのが100回目だとしたら、小売店(Gap、BestBuyその他)から実際に何かを購入する見込みは極小だ。バーチャル通貨を得るためにNetflixとBlockbusterの双方に登録するユーザーが良い顧客になる可能性も低い。「誰もが損をする悲劇」がここでも繰り返される。結果として得られるリードの質などお構いなしに、ユーザーが100回でも「お知らせ広告」に応募できるようなネットワーク(あるはアプリのデベロッパー)は、無制限の応募を良心的に制限するネットワークより手っとり早く金を稼ぐ。こうして悪貨が良貨を駆逐することになり、これは長期的に見た場合、業界に重大な悪影響を与える。
ちゃんとした広告主は、「インチキ広告がもっとも儲かる」という事態に愛想をつかして支出を減らしたり、まったく止めたりし始めている。ゲームやアプリのデベロッパーもインチキ広告を載せたくはないのだが、ライバルとの競争に負けないためにはインチキ広告を載せるしかないという苦しい状況に置かれている。
ユーザーの苦情はどこへ行く?
一般ユーザーと広告主企業の間には、何層もの「目くらまし」が入るのが普通だ。
お知らせ広告代理店というのはOfferpal、SuperRewards、DoubleDing、Gambit、Firecue、GratisPayなどの企業だ。私が経営するTrialPayも、部分的にはこの範疇に入る。一方、Adteractive、CPAStorm、SearchCactus、GratisInternet、ClickBooth、Affiliate.comなどがネットワーク広告代理店だアプリのデベロッパーはお知らせ広告代理店をたびたび変更する。お知らせ広告代理店もネットワーク広告代理店をたびたび変更する。そのため、同じサイトに掲載される同じ企業のお知らせ広告であっても途中の経路が同一とは限らない。そのためお知らせ広告代理点は応募したユーザーの正確な名寄せができず、悪質なユーザーが広告主を騙す(一度限りのお知らせに何度も応募するなど)ことが簡単にできるようになってしまう。またゲーム・サイト自身が知らないうちに詐欺まがいの悪質なお知らせが繰り返し現われる土壌にもなる。これらはいずれも短期的に収入を最大限にしようとうする近視眼的な競争が生む欠陥だ。
さらに問題なことに、ユーザーの苦情は直接に広告主に向かうことが多い。お知らせ広告代理店もネットワーク広告代理店も一般ユーザーの目にはつきにくいからだ。そこで実際には「詐欺まがいだ」として司法省やFTC、ネットの掲示板などに何万という苦情が来ているにもかかわらず、ゲーム・サイトやお知らせ広告代理店が「苦情は来ていない」と言い張るようなことが起きる。こうした目くらましの層を挟んでおくのは、ユーザーの追求をかわすには巧妙な手段かもしれないが、長い目で見ればゲーム・サイトにとっては好ましいことではない。第1に、ユーザーが詐欺まがい広告に引っ掛かれば、それだけゲーム・サイトで直接使う資金が減る。そしてゲーム・サイトに対する悪感情が残ることになる。
ダメージの拡大を防ぐために、これだけは必要だ
そういうことにならないために、どうすればよいのか? 消費者にインセンティブを提供するお知らせマーケティングにはいくらでも公正な手法がある。しかしユーザーに広告主を100回騙させたり、広告主にユーザーを数回騙させる方が代理店にとっては短期的に手っ取り早く金になるのだ。(数回、というのはいかにお人よしのユーザーでもそう何度も同じ手では騙されないからだ)。こうした事情はわれわれの会社にとっては辛いところである―皆と同じインチキをやって金を儲けるのではなく、公正な方法で品質の高いリードを提供して長期間維持可能なビジネスモデルを確立しようというのがわれわれの方針だからだ。ただし、われわれがそういう方針を維持できるのは、ソーシャル・ゲームからの売上がTrialPayの総売上の比較的小部分を占めるに過ぎないからだ。われわれはソーシャル・ゲーム部門で手段を選ばず収入を増やそうと狂奔する必要がない。しかし私はソーシャル・ゲーム業界が自壊への道をたどるのを見たくはない。
どうしたらこの憂うべき現状を変えられるだろうか? シナリオは(希望的観測も混じるが)いくつかある。
- 自然な市場の競争原理: 量より質が問題だ。やがて、正当なインセンティブのお知らせ(Gap、BestBuyなどでの購入) etc)だけが掲載され、正当なユーザーのみが応募できるような仕組みが、ユーザーを騙したり、広告主を騙したりする仕組みよりも着実に利益を上げるようになるかもしれない。正当な仕組みによるアプローチは広告主により大きな売り上げをもたらせば、広告主はそれに応じてより多くの広告費を支払うだろう。たとえばパフォーマンス広告の分野のトップ代理店、QuinStreetがここ10年間、ライバルとの競争に勝ってきたのは、同社が常に質の高いリード(見込み顧客)を提供することに注力していることが大きい。
- 規制: Facebookは先ごろアプリのデベロッパーに対し、いわばムチを鳴らして「スパムをしないよう」警告を発した。良心的なデベロッパーはこれを歓迎したと思う。好んでスパムをしたくないデベロッパーも、ライバルがやっている以上、対抗せざるを得ない状況に追い込まれていた。
今日やらねばならぬこと
実際には上の2つの要素はどちらも必要だろう。Facebookのデベロッパーへの警告は、ユーザーが広告主を騙すというもうひとつの重大な問題の解決にはまったく役に立たない。実際、われわれはMcAfeeやSkypeのマーケティングをする際、リードの品質を正しく測定するために全力を上げている。われわれは多くの場合、(ネットワーク広告代理店を通さず)直接広告主と契約しているので、広告主がソーシャル・ゲーム・サイトでのお知らせ(インセンティブ)・マーケティングのあまりの効果の低さに嫌気が差して、ことわざに言う「たらいの湯といっしょに赤ん坊を捨ててしまう」ような決定をするのを見てきたからだ。
この問題は検索エンジンにおけるクリック詐欺と構造がよく似ている。そこで解決法も似たものとなるはずだ。
広告主との間で正確な情報交換を行う: お知らせ代理店は広告主との間で直接に正確な情報を交換すべきだ。われわれの場合は、ほとんどの場合、広告主と直接契約を結び、詳しい情報交換(無料トライアルに登録した後すぐにキャンセルしたユーザーの情報など)を行っている。こうすれば広告主を騙す悪質ユーザーの排除などができるようになり、リードの質を改善することができる。もちろん悪質なトラフィックを100%排除することはできない。しかしわれわれは膨大な手間をかけて悪貨の発見と排除に努めてきた。結局、そうすることが関係者全員にとって長期的な利益になるからだ。良心的なアプリ・デベロッパーは、自らの短期的利益した考えない怪しげなお知らせ代理店を挟まず、直接広告主と契約を結ぶことを考えてもいいだろう。
お知らせ広告利用の方法を厳格化:ユーザーがお知らせ広告を利用する方法を厳密に制限することは効果的だ。別にそういう規則がなくても、長期的利益のためにそうせざるを得ないことは自明だろう。たとえば、われわれが取り扱うこの種の広告の例をあげると、ユーザーがFTDで花を買うと、McAfeeのアンチ・ウィルス・ソフトが無料でもらえる、というのがある。このようにインセンティブを有効化するための方法が1つに限定された方式であれば(ユーザーによる不正な利用が困難であり)、広告の効果が高められる。広告の効果が高ければ広告主(この場合はFTD)はわれわれにより多く支払い、われわれはMcAfeeに対してより多く支払える。検索エンジン広告の場合と同様、広告主は不正利用の可能性が低く、リードの品質が高いことを理解すれば、それに応じた料金を支払うものだ。複数利用(異なるの店での購入を一括してインセンティブにした契約など)方式が必ずも悪いわけではないが、品質の高いリードを得るのははるかに難しくなる。
ゲーム・サイトは長期的提携を重視すべきだ: ゲーム・サイトは広告主との間に長期的な安定した関係を確立することを重視すべだ。(そのためには、ゲーム・サイトはお知らせ広告代理店をひんぱんに変更すべきではないし、お知らせ広告代理店はネットワーク広告代理店をひんぱんに変更すべきではない)。焼畑農業のような場当たりな関係よりも、広告主と長期的な関係を築くことで、より高品質のリードが提供できるようになり、結果的に広告主の支払う金額も大きくなる。
ソーシャル・ゲームにおける適切なインセンティブ(お知らせ)広告の例
適切な例のスクリーンショットを2つほど上げておこう。 誰でもAmazon.comの「1回$25以上注文すれば送料無料」という仕組みを知っているだろう。オンライン・ゲームの場合、送料というものはないが、Playfishの人気ゲーム、RestaurantCity(月間アクティブ・ユーザーは1700万以上)では、$39.99のバーチャル通貨を購入したユーザー全員に映画のチケットを1枚プレゼントしている。

次の例はPlayfish最大のゲーム 、PetSociety(月間アクティブ・ユーザー、2100万)のもの。ユーザーがバレンタインデー用にFTDから花を購入すると8千ポイントのバーチャル通貨がプレゼントされる。

われわれはソーシャル・ゲーム業界が全体として陥っている悲劇的状況を改善できるはずだ。現在バーチャル通貨は数百億ドル規模のビジネスになり、なお驚くべき速さで成長を続けている。一部関係者の無思慮で近視眼的振る舞いが巨大な将来の果実を危うくするようなことがあってはならない。
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(翻訳:滑川海彦/namekawa01)




