もうすぐ2010年だ。そこで本誌界隈では、2009年、あるいは過去10年に出た製品で何がとくに良かったかが雑談の話題になる。
“革新的(innovative)”という言葉は、この世界ではとっくに死語だが、ここではあえて、この10年間でもっとも革新的だった製品をさぐってみよう。以下は、われわれ本誌編集部の選択だ。反対意見は、コメントでどうぞ!
優勝: Trek Thumbdrive
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2000年に、奇妙な事件が起きた。突然われわれは、データを持ち運ぶ方法を変えたのだ。1990年代には、最初はフロッピーディスクを使い、次はCDやZipドライブ、大量のデータを持ち運ぶことは、非常にかったるい作業だった。大学の新聞の毎号の全ページを1枚のZipディスクに収めて印刷屋へ運ぶ仕事を担当したぼくは、そのかったるさをイヤというほどよく知っている。
そして2000年に突然、世界初のUSBストレージデバイスTrek ThumbDriveが登場した。コンピュータに挿入し、ファイルをいくつかドラッグし、そして抜くだけだ。バッグにも服のポケットにも入るし、安いからなくしても惜しくない(秘密データでなければ)。Thumbdriveの2000年の最大容量は256Mbだったが、今や同じ小ささで32Gbだ。1997年の学生時代に使っていたコンピュータのハードディスクよりも、大容量だ。
なぜこれが2000年代を象徴する製品かというと、こういうフラッシュメモリの製品がその後大普及したからだ。MicroSDカードなんか、親指の爪ぐらいのサイズだ。名刺のように薄くて小さいMP3プレーヤーもある。フラッシュメモリは今ではどのメーカーも新製品開発時には大量に手配するから、人気がありすぎて品薄が慢性化している。その後のあらゆる新しい電子製品から、こわれやすい可動部品がなくなったのも、フラッシュメモリの功績だ。
いろいろ考えても、これほどまでに、われわれの仕事や遊びやコミュニケーションを変えてしまった製品はほかにない。大量のストレージが、気軽に使えるだけでなく、使い捨てもできるようになった。フラッシュメモリとその応用製品は、文字通り、世界を変えた。
準優勝
Danger Sidekick 2002年までは、フィーチャーフォン(feature phone)(Javaのゲームなどがある携帯電話機)、またはスマートフォン(smartphone)(アプリケーションを動かせる携帯電話機)のどちらかだった。2002年の10月にDangerがT-Mobile Sidekickを発売し、状況が変わった。この電話機ではメールやインスタントメッセージを送れるし、機能的にも価格的にも取っつきやすい、よくまとまった製品だった。それはある意味では最初の大衆向けのメジャーな路線を狙ったスマートフォンで、その後長年にわたって熱心なファン層が形成された。近年大きな問題があった後も、Sidekickは健在だ。 |
Gmail 無料のメールは前からある。メールを整理するおかしなやり方も、目新しくはない。Googleで新しいのは、そこらの花子さん太郎さんに与えるストレージの量だ。ほかの無料メールサービスも、従わざるをえない。無料Webメールの“特別有料アカウント”というものは消え去った…無料で1Gbも使えるんだから。Wikipedia(英語版)もこんなことを言っている:
〔*訳注: 今はもっと多い。〕 2Mbだって? Googleの前にはわれわれはどんな生き方をしてたんだろう? |
Sony Reader KindleやNookの前は、Sony Readerが唯一のeリーダーだった。あまり注目されなかったし、売れなかったが、新しい製品ジャンルを作ったし、Sony自身にこれではまだだめだと悟らせた。先駆者としての有利な立場を築けなかったことは、画期的な新製品を世に出すすべてのメーカー企業にとって教訓になる。 |
編集部雑談
Matt: Harmony Remoteも忘れたくないね。こういうインターネットに接続するリモコンの前には、汎用リモコンは小さな文字に苦労しながらユーザがややこしい設定をする必要があった。Logitechに買収されたあとも、あまり変わらなかったね。
Doug: T-Mobile Sidekickの準優勝は賛成。この製品には、個人的に大ドジの思い出もある。いちばん印象に残っているのは、当時としてはとても安かったことだ。たしか、ハードウェアが250ドルで、毎月の料金は電話が30ドル、データ(無制限)が20ドルだった。当時はWeb開発を大量にやっていて、クライアントのeメールシステムにSidekickを使って新規ユーザを加えたことをおぼえている。そのときは、全然別の空港に行ってしまった荷物が戻ってくるのを、ターミナルビルでじっと待ってたんだ。そんな場所でそんな作業ができるのが、すばらしかった。一般ユーザも、Sidekick以外の機種に浮気する人はいなかったね。あんなの、ほかにないからね。とくに、スライド式のスクリーンがいい。
Devin: この10年の最大の特記事項といえば、Gmailなどのクラウドアプリケーションだね。ぼく自身は使わないかもしれないけど、次世代のコンピューティングの主流の一つになることは確実だ。たしかに、フラッシュメモリはいろんな製品を生み出したけど、次の10年をリードするのはクラウドアプリケーションだよ。
Greg: ぼくは本誌のモバイル担当だから、モバイルの世界から何かを挙げるべきかもしれない。しらじらしくiPhoneを挙げて、コメントでいじめられるのもいいかもしれないが、でもそれはパス。ぼくがここで挙げたいのはSMSだ。つまり、テキストメッセージング。80年代に生まれた製品だけど、本格的に使われるようになったのは最近の9年だ。それまでの年間5億通弱が、一挙に800億通になった。合衆国だけでだよ。Facebookのアップデートも、Twitterのトウィートも、マイクロブログも、すべてSMSが下地を作ったのだ。誰も、長い手紙を書かなくなった。つまり、われわれふつうの人間の、コミュニケーションを変えてしまったんだ。
Nicholas: “革新的(innovative)”は、ぼくも完全に死語だと思うよ。この言葉を見るたびに、副腎が奇妙な毒液を分泌するんだ。どこでも使える、簡単な携帯型の浄水器を誰か発明したら教えてよ。ぼくの腎臓は助かるし、それに、それならまさに‘革新的’だね。
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

