Apple タブレット vs Amazon Kindle―未来はどっちだ?
by Paul Carr on 2010年1月5日

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〔日本版:TechCrunchのユーモア・コラムニスト、Paul Carrの例によってうがった観察。例によって長文のため後半のみ訳出しました〕

Appleのタブレット・コンピュータに関する大騒ぎで、ひとつ私には腑に落ちないことがある。われわれ未来評論家、Apple信者、Applrアンチは唾を飛ばして議論しながら発表を待ちわびている。Appleタブレットはコンピューティングのパラダイム、カテゴリー、コンテンツの流通、その他その他に革命を引き起こすはずなのだという。しかし実はそういう革命的製品はもうすでに存在しているのではないのか? 私のいうのはもちろんAmazon Kindleのことだ。

Kindleが2007年に登場すると、アナログ・テクノロジーの最後の砦だった書籍が突然デジタル時代へ移行し始めた。Kindle以前にもeブックリーダーはいくつか存在した。しかしそれはiPod以前にもMP3プレイヤーが存在したようなものだ。しかし世界最大のオンライン書店と無料のモバイル・ダウンロードのおかげで、ユーザーはアメリカ中(現在では世界中)どこにいても何万冊(これも今や何十万冊に増えているが)もの電子版の本から自由に選んで購入できるようになった。これによってAmazonはeブックのあり方を根本的に変えた。Kindleが出版界にどれほど大きなインパクトを与えたかは最近の統計を見るだけでいい。アメリカではAmazonではクリスマスの日に印刷版よりKindle版の本がより多く売れた。クリスマスの日には消費者は一般にあまり買い物に外出せず、オンライン・ショッピングが賑わう傾向があるといわれるものの、これまで存在しないに等しかったeブック市場がAmazonによって確立されたことは明らかだ。ライバルの動向を見ればそれがいっそうよく分かる。Kindleの成功によってBarnes& Nobleが大急ぎでNookを開発したし、Borders書店のチェーン店舗ではSony Readerのデモを見ずにすますことはできないくらいだ。さらに、出版社の対応を見るといい。従来のeブックに対する方針をあわてふためいて修正(あるは新たに策定)して、大規模な海賊行為や読者のeブックへの大挙移行に対処しようとしている。別に厳密な調査ではないが、GoogleでママのKindleと検索してみるだけでもその浸透ぶりは見当がつく。

しかし、これほどのインパクトを与えながらKindleに関しては誰も口から泡を飛ばして賞賛もしなかったし、偶像崇拝も起きなかった―画期的新製品にはそれがつきものなのだが。原因の一部はAmazonが物理的な店舗をまったく持っていないせいだったかもしれない。発売日に店の周りを取り囲む長蛇の列ができないから、テレビが絵にできず、したがって取り上げられなかった。それに本というのは携帯電話や音楽に比べてもともと地味な存在だ。しかし私の察するところ、最大の理由はAmazonのようなたかが通販屋風情がわれわれのコンテンツ消費のパラダイムを変えるような製品を開発するなど、口に出すだけでも笑止だという偏見にあるのではないか。逆にわれわれはAppleが次から次へと画期的な魔術的に魅力ある製品を作り出すのに目を奪われるあまり、画期的製品を作るのはAppleの専売特許ではないということを忘れがちになるのではないか。スティーブだけがそういうことができると思い込んでいるのだろう。スティーブがタブレットを発表するというので初めてタブレット・タイプのデバイスが大騒ぎの注目の的になった。スティーブ万歳。

しかし残念ながら、諸君の母上はスティーブのことなんか知っちゃいない。世の中のほとんどの人間がそうだ。一般消費者が知っているのはKindleをバッグに入れておくだけで何千冊もの本を毎日身近に持ち歩けるようになったということだけである。しかもKindleはノートパソコン(タブレットも同じだが)と違って長時間読んでも目が疲れない。さらに毎日の新聞を読む機能も加わった。すぐに雑誌もKindleで読む時代になるだろう。しかもKindleは従来と比べて消費者が持ち歩くために余計な負担をかけるわけではない。iPhoneは他の携帯を代替したより優れた製品だった。iPodは各種のダサいポータブル音楽プレイヤーを代替した。Kindleは? Kindleもやはりわれわれが従来から持ち歩いていたもの、つまり紙の印刷物を代替した。

私の見るところ、つまりここにAppleタブレットの問題がある。スティーブ・ジョブズに物理学の法則を書き換える力があるのでないかぎり、映画やウェブを表示させるためには目を痛めつける液晶モニタを使うしかない。つまりeブックリーダーとしてはeインク・モニタを使うKindleに取って代わることはできないのだ。一般消費者は選択を迫られることになる―外出時にKindle(あるいはSonyReaderやNook)を使い続けるか、ウェブやビデオも見られるが、本を読むには疲れるAppleタブレットに乗り換えるかだ。ところがAppleはここで自縄自縛に陥る。モバイル・デバイスとしてiPhoneがあまりによくできた製品なので、一部のマニアを除いて、消費者は本を読むにはKindleを使い、それ以外の用途にはiPhonesを使い続けるだろう。

Appleが本当にすばらしい画期的な新しいポータブル・デバイスを作りたいなら、マルチメディア用のタブレットではいけない。Appleが作るべきなのはKindleの欠点をすべて取り除いた理想のeブックリーダーだ。つまり、フルカラー表示、明るいところでも暗いところでも楽によめる低消費電力のモニタ、Apple伝統のクールなユーザーインタフェースなどだ。そしてベストセラーが$9.99ではなく$5で読めるように出版社と交渉してもらいたい。KindleのようにAmazon以外で買えないというのではなく、Macのように街中のあらゆるショップで買えるようにしてもらいた。柔軟性があって曲げられる筐体なら理想的だ。私はつまりAppleに昔のMP3プレイヤーに対するiPodのような画期的に改良されたブックリーダー製品を出してもらいたいと希望している。消費者がすでに使っている製品を大幅に改良するような製品を出してもらいたいのだ。

もっともフューチャリストとして私が不適な理由はこのあたりにある。未来評論家の仕事は(そんなことが仕事になればだが)、事実に基づいて未来を正しく予測することではない。未来がこうなってくれればよいというファンタジーを目に見えるように描き出すことだ。

私は元来シニカルで悲観的な傾向があるので、Appleタブレットについての今のところの感想は手放しで期待しているわれらがMG Sieglerとそんなものはいらいないとあえて憎まれ役を買って出たJoe Wilcoxの中間だ。私はAppleタブレットが「それだけを持って歩けばよい唯一のデバイス」になったらよいと心から願うものだが、Kindleの存在を考えると、どうしてもそういうことになりそうには思えないのだ。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦/namekawa01

  • http://comicandmanga.seesaa.net/article/137464800.html 漫画が教科書

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