一見したところ、Googleがこのほど発表したApp Inventor for Androidはたいしたものには見えない。まずデザインがださい。しかしGoogleのサービスはださいデザインの下に強力な機能を隠していることが多い。このApp InventorはAndroidアプリの開発者を爆発的に増やすかもしれない。あるいはAndroidネーティブ・アプリの開発コミュニティーを混乱に陥れるかもしれない。
今夜(米国時間7/11)のNew York Timesの記事によれば、App Inventorは基本的にWYSIWYGのAndroidアプリケーション開発ツール だ。いっさいプログラミング言語(Androidの場合はJava)の知識がなくても、App Inventorサービスを利用すれば、さまざまな汎用の機能部品をドラグ&ドロップで組み合わせていくだけでAndroid向けモバイル・アプリをゼロから開発することができる。
Googleは次のように説明している。
App Inventorを利用するにはプログラマーである必要はありません。まったくプログラミングの知識がなくてもApp Inventorを使えます。コードを書く必要はいっさいありません。必要とする機能を備えた部品を選び、ビジュアルに組み合わせいくだけでアプリが開発できます。
なかなか便利そうだ。New York Timesによると、Googleがテストしたところ小学校6年生の子供たちがApp Inventorですぐにアプリを作れたという。もちろん一般の大人も簡単にアプリを作れるようになる。しかしウェブ・デベロッパーならみな知っていることだが、HTMLのWYSIWYGエディタが登場したことが大量の粗製濫造のウェブサイトを生むきっかけとなった。
AdobeのDreamweaverや、その後登場したGeocitiesのようなオンラインWYSIWYG HTMLエディタのおかげで誰でもウェブサイトを作れるようになり、インターネットはあっという間にゴミのようなサイトで埋められてしまった。ありがたいことに、そこにGoogleが登場してPagerankアルゴリズムを持ち込み、ウェブサイトの相対的重要性を評価することに成功し、なんとか秩序らしきものが打ち立てられた。Googleの検索エンジンによってユーザーはゴミの山の中から価値のあるサイトを選び出すことができるようになった。
App InventorもAndroidの世界にゴミのようなアプリの山をもたらすのではないか?
おそらくそうだろう。しかし物事には両面がある。

このツールによってアプリを制作する人々の層が大きく広がる。モバイル・アプリケーションを開発するという考えが身近なものになる。これは大きな影響を与える可能性がある。 App Inventorで初歩的なアプリを作って遊んだ子供たちの一部はJavaを本式に学ぶようになるだろうし、その中の誰かがやがて次世代のキラーアプリを開発するかもしれない。
App InventorはAndroid開発コミュニティー拡大の呼び水になる可能性がある。
ソフトウェア・デベロッパーの多くはモバイル・アプリの大勢がデバイス固有のプラットフォームを利用したネーティブ・アプリに向かいつつあることに懸念を抱いている。今までのコンピュータ向けアプリに比べてオープンさ低いからだ。特にAppleのプラットフォームは閉鎖的だ。しかしAndroidは基本的にオープンなシステムであり、App Inventorのようなツールが提供されたことは多くの人々にモバイル・アプリを開発してみようかと思わせる効果があるだろう。
WYSIWYG HTMLエディタの登場でジャンク・ウェブサイトが洪水のように生まれたが、一方ではこうしたツールが登場しなければそもそもウェブサイトの開発に興味を抱かなかったはずの人々を惹きつけ、そうした新しいユーザーの一部はやがて本格的にHTMLを学習するようになった。App Inventorの場合も、他のこうしたツールの場合同様、プログラミング言語に対する深い理解なしに本当に優れたアプリケーションが開発できるものではない。新たに優れた開発者を得ることがGoogleの最終的な目的かもしれない。
それにしても当面はAndroidマーケットに今以上にジャンク・アプリが増えることは覚悟しなければなるまい。Googleは現在でもジャンク・アプリの山から優れたアプリを拾い出すのに苦労している。ジャンク・ウェブサイトの山から価値あるウェブサイトを選び出すことで現在の地位を築いたGoogleとしては皮肉なことだ。App Inventorに人気が出れば、状況はますます悪くなるかもしれない。
しかし私は用心しつつも楽観的だ。やはりこうしたツールが登場するのは基本的にはよいことだと思う。非常によいことかもしれない。Appleはきわめて真剣に注目する必要があるだろう。
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(翻訳:滑川海彦/namekawa01)
