GoogleがH.264に関する同社の立場を説明, Webビデオの未来の鍵をFlashに渡す気だ
by MG Siegler on 2011年1月15日

今週初めにGoogleは、あまり目立たないChromiumのブログの、しかもとても短い記事で、重要な変更事項を発表した: ChromeからH.264コーデックのサポートを外すというのだ。淡々と簡潔に実務的に発表するつもりだったのだろうが、この記事は、その意に反して天をも揺るがす大騒動を巻き起こした。まるで、人間なら誰もが、一人残らず、その決定に賛否を投じなければならない、的な騒ぎだ(本誌なんか、二回も賛否しちゃった)。

意外な結果に驚いたGoogleは今日(米国時間1/14)、最初の3段落の記事を補足する10段落の記事を書いて、今回の決定の意図を説明している。それは、たしかに最初の記事よりは分かりやすいが、それでもまだ、読後感は全然すっきりしない。

Googleも言ってるように、話題の主人公はあくまでもHTMLの<video>タグだ。この検索巨人は、HTML5によるWebビデオにどのコーデックを使うかで悩んだ。SafariとIEはH.264で行く。しかしMozillaとOperaはそれを拒否し、Ogg Theoraを選んだ。そこでGoogleはWebMを構想し、MozillaとOperaの参加を求めた。でも残念ながら、それで問題は解決しなかった。SafariとIEがWebM同盟に参加するかどうかが、まったく不透明だからだ。

H.264とWebMをめぐって複数のメジャー勢力のあいだに分裂があることが、今回の問題の核心だ。Googleは今日の新しい記事で自分たちのビジョンは明快に説明しているが、そんなものは問題解決の助けにならない。厳しい現実としてGoogleは、H.264から一抜けたことにより、今後数年間はHTML5ではなくFlashを、ビデオのデファクトスタンダードとして護持することになる。

どうしてそうなるのか? Googleの主張はこうだ:

まず第一に、H.264にはライセンス要件があるためにFirefoxとOperaはサポートしていない。両者は、WebMとOgg Theoraをサポートしている。したがって、HTMLの<video>タグを使うパブリッシャーやデベロッパは、この二つのブラウザを使っているデスクトップやモバイルWebという相当大きなユーザ人口を、サポートしないと決断しないかぎり、いずれにせよH.264以外のフォーマットをサポートせざるをえない。

でも、これとまったく同じ理屈をIE/Safari勢力も言える。IEとSafariはWebMをサポートしない。それにIEとSafariのデスクトップとモバイルWebにおけるユーザ人口は、Googleが挙げているFirefox/Opera人口よりずっと多い。だから要するにGoogleは、メジャーな勢力ではなくマイナーな勢力の側についているのだ。

それはそれでもよいが、でも分からないのは、今回の決定によって何かが変わると、なぜGoogleには信じられるのか? それはまるで、Googleは大穴の馬券を買ったけれど、それを的中させる方法がない、という状況に似ている。Googleのこのような根性は、言うまでもなく、過去に何度も失敗に終わっている。今回も、ぼくなら、また失敗するほうに賭けるね。

良くない副作用として、WebビデオにおけるFlashの支配が続いてしまう。Googleはその理由も、おおむね述べている:

H.264はビデオにおいて重要な役割を担っており、今日のWeb上のH.264によるビデオのほとんどが、 FlashやSilverlightなどのプラグインをを使って視られている。Chromeはそういうプラグインを、今後もサポートする。ただし弊社の今回の発表はあくまでも、<video>タグに関連しており、それは今後のHTMLプラットホームの一部だ。HTMLによるビデオ、というプラットホームには大きな将来性があるが、今現在はほとんどのサイトがそれを使っていないので、Chromeの<video>タグサポートに関する今回の弊社の決定によってただちに影響を受けるユーザもほとんど存在しない。

この”ただちに”は、”今後とも”であるべきではないのか。

Appleの製品は、個人の好き嫌いとは関係なく、とくにそのモバイル製品は無視できない巨大なユーザ人口を有している。そしてAppleがWebMをサポートしないのなら、パブリッシャーはサイトのH.264バージョンとWebMバージョンの両方を毎回作るか、またはH.264だけに対応してGoogle製品やFirefox、Operaの上ではFlashを使わせるという選択になる。

でも、この綱引きにWebMが勝つというシナリオは、どう考えても見えてこない。それに、Google抜きではH.264にも勝機はない。HTML5のビデオは落としどころを失い、結局Flashが勝者になる。

H.264に関しては、ライセンスが問題になっている。でもGoogleは、買収によって得たWebMコーデックに、既存のパテントに触れる部分がない、そのことを精査により確認した、とはまだ言っていない。ただ、”ないと信ずる”と言っているだけだ。信ずる、ではお話にならない。WebMが大きく普及したら、大量のパテントトロルたちの餌食になるだけだ。そしてその危機を切り抜けることが、難事業になる。

Googleは、H.264のライセンス料金はGoogle自身にとってはたいした額ではなくても、これからのビデオスタートアップたちにとっては障害になる、と言っている。それはごもっともだけど、実際にどの程度の障害なのか。つまり現時点では、分かっていないことが多すぎるのだ。

しかし今は、こういったことはすべて、本題ではない。より大きな問題は、H.264のサポートを外すことによってGoogleは、Webビデオの未来の鍵をFlashの手に渡して(戻して)いることだ。唯一の打開策は、YouTubeにWebMの使用を義務づけることではないだろうか。そして、YouTubeがAppleとの協定に基づいてサポートしているH.264のサポートを取り下げれば、Appleも譲歩してモバイルのSafariでWebMをサポートするかもしれない。でも、Appleは頑固だから、そういう事態になっても折れないかもしれない。しかもそんなことをしたら、”悪を為すなかれ”というGoogleの社是にも反してしまうだろう。

元々、Googleのこの動きは、”オープン(な)イノベーションの推進”という同社の目標に向けての動きだった。でも今日明らかになったのは、同社の言う”オープンイノベーション”が包括的でないことだ。たとえば同社は、Flashのような私企業規格の製品にブラウザ内の普遍的な位置づけを与えて平気でいる。HTMLに関しても、MP3やAACのサポートは外していないから、”オープンイノベーション”とは言えない。HTML5のビデオに関してのみ、”オープンイノベーション”なのだ。とても心の狭い”オープン”だね。

そこで、要点をひと言で言えば、「オエーッ」だ。

これも読んで: So Much For Standards, Google Says WebM Plugins Coming Soon For Safari And IE9(スタンダードが泣くよ,GoogleはSafariとIE9にWebMプラグインを提供)(未訳)

[写真: flickr/Bohman]

〔訳注: この記事自体はHTMLと従来からのWebビデオ(やWeb上のオーディオフォーマット等)との混同によって全体的に破綻しているので、原文のすぐれたコメントをいくつか読むことをおすすめします。〕
〔参考記事。〕

[原文へ]
[jpTechCrunch最新記事サムネイル集]
[米TechCrunch最新記事サムネイル集]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

  • http://twitter.com/dely13 dely

    原文のすぐれたコメント?「まるで2011年は2000年そっくりだな。アル・ゴア=H264,ジョージ・ブッシュ=FLASH、ラルフ・ネーダー=WebMだ」ってやつのこと?「全体的に破綻してます」って言うなら、どこが破綻してるのかちゃんと指摘したほうがいいと思うけどなー。http://techcrunch.com/2011/01/14/google-h264-flash/#comment-129190997

  • http://twitter.com/dely13 dely

    原文のすぐれたコメント?「まるで2011年は2000年そっくりだな。アル・ゴア=H264,ジョージ・ブッシュ=FLASH、ラルフ・ネーダー=WebMだ」ってやつのこと?「全体的に破綻してます」って言うなら、どこが破綻してるのかちゃんと指摘したほうがいいと思うけどなー。http://techcrunch.com/2011/01/14/google-h264-flash/#comment-129190997

  • おっさん

    「どうしてもGoogleを擁護したい」あるいは「自由でオープンと言ってるGoogleに嘘はない」と主張したい訳者なのです。

    記事の要点はずばり「Googleさんは言ってる事とやってる事が違うだろ!」ってこと。そしてのその矛盾をあげているだけ。

    この程度の文章の要点も掴めずに「TMLと従来からのWebビデオ(やWeb上のオーディオフォーマット等)との混同」がどうたらとか言っちゃってるところがたいへん痛いわけだ。

    Apple信者という揶揄をする人がいるけど、実際にはほんとに信者としての振る舞いをしている痛い人(オタクを含めて)が多いのはGoogleとマイクロソフト。そして、こういう人たちが最悪なのは「自分たちを知識人だと思い込んでいる」ところ。

    その知識なんて、単に重箱の隅をつついているだけだろうと。

  • 0000

    要約

    ChromeはVIDEOタグでのH264サポートを取りやめる。
    VIDEOタグではIE、SafariがWebMをサポートせず、Chrome、FireFox、OperaがH264をサポートしない。
    これにより、VIDEOタグのデファクトスタンダードは存在しなくなり、
    結果的に、ビデオはフラッシュが主流であり続けることになる。

    GoogleがよりオープンをもとめてH264を捨てWebMを選んだというのに、
    それによってむしろクローズドなフラッシュの寿命を大幅に伸ばしてしまうとはなんという皮肉。

  • http://twitter.com/papanda1234 ぱぱんだ/フヒヒヒww

    これは訳者の馬鹿さ加減に呆れる記事だな…

  • FT

    プラグインで動くのなら再生できない時にプラグインのURLに誘導すればいい。
    再生不能である事と再生できる手段がある事は大きく違うし、FLASHと同様の道程で再生できるのなら対応していると言っても差し支えない。
    これで「対応してない!」っていうのなら、Flashもchrome以外みんな対応していないということになる。
    しかし、ユーザーにプラグインのインストールの手間をかけさせないためにFlashを再生に使うサイトが増えそうなのはたしかだなあ。

  • imo

    H.264はプラグインで動くと書いてないからプラグインはないんでしょう。
    どこかの会社が作れば別だけど、Google以外にあまりメリットは思いつかない。
    だいたいプラグイン作った会社がMPEG-LAに金を払わなければならないわけで、
    (そのロイヤルティーは安くないらしいし)
    違法プラグインによる勝手サポートのみになるのではないかと。
    世の中をFlashに戻す気かという個も記事の意見は鋭いのかもしれません。
    その他にGoogleがこの賭に大失敗するという線も想定できるわけですが、
    クランチにしては良い記事かと。訳者の方は本国より版より偏向してると思いますが。
    (署名のある記事に自分の意見を加えるときは、スクリーンネーム程度でも自分も
    記名するべきと思います)

    何よりも途中までサポートしておいて、自社規格のためにサポートやめると。
    その変節ぶりが非常に嫌なのですが、Googleファンの方々はどうお思いなんでしょうか。
    感情論かもしれませんが、Firefox見捨ててChrome作ったときと同じような
    嫌な感じがしました。

  • TERU

    そもそも、HTML5 Videoに過大な期待をしすぎ、コーデック以前にFlashと比べたらまったく実用性で劣る。

  • FT

    本文の「これも読んで」の先に、「Google Says WebM Plugins Coming Soon For Safari And IE9」とあるので、まもなくプラグイン対応が来るようです。

  • FT

    本文の「これも読んで」の先に、「Google Says WebM Plugins Coming Soon For Safari And IE9」とあるので、まもなくプラグイン対応が来るようです。

  • Isohidenori

    Webmが特許をめぐる訴訟に巻き込まれた場合はすべての責任をgoogleがとるとwebmのライセンスに付け加えるだけでappleとmsを悪役にできるね

  • imo

    読んでます。
    それは Safari And IE9に対するWebMプラグインであって、
    Chromeに対するH.264プラグインではないですよね。
    ChromeでH.264が再生できないことには変わりないです。
    実際には、ChromeでH.264に出くわしたときは、
    リンクをアップルのクイックタイムプレーヤーに渡す、とかして(^_^;)
    見れるんでしょうけど。Winは」詳しくないので想像ですけど。
    ちなみにリンク先の記事はプラグイン多用時代に戻ることには批判的なようですが。

  • imo

    Androidからこの問題に入ってきた方には意外かもしれませんが、
    AppleはMPEG-LAの内側から、MPEG4の課金を緩和させるために
    働いてきた功労者ですよ。
    現在の非商用ストリーミング無料など、Appleの提案がなければ
    あり得なかったのではないか・・・と思います。昔の記事ですが、
    http://itpro.nikkeibp.co.jp/members/ITPro/USURA/20020314/1/
    Googleは言っては悪いがその頃からあるOn2を買っただけ。

    MPEG-LAはメンバーを見てもビデオ業界そのもので、AppleやMSとイコールではないです。
    業界とハーモナイゼーションできなければ、GoogleもGoogleTVのように
    つまずきかねないと個人的には思います。

  • Alohaimage

    結局どこも大義名分を利用してるだけで協調するつもりはないんだよ。AdobeにはかなわないからAdobeを排除することでは協調してるけどね。いずれにせよ技術の進歩は早く、統一フォーマットが決まったころには、新しい技術が出てきてるよ。基本的に新技術で競合を出し抜く業界なのだから、今後も協調は無理だろう。そうした中で、時代に合わせて技術的変化を続けているFlashは現在の地位を獲得しただけのことはある。そして、きちんとユーザーに利便性を与えてビジネスを行おうとしているのもFlashすなわちAdobeだけのような気がする。

  • FT

    すみません、勘違いしてました。
    WebMのプラグインのことかと、、、;
    「H.264はプラグインで~」って書いてあるのに、、いやはや、、;

  • http://twitter.com/lordnoesis Lord Noesis

    まあ大義名分に反してはいる。動画サービスの運営者であるGoogleにとっては、Flashよりもライセンス料を要求するH.264の方が問題なんだろうから否定はしないけど。リッチコンテンツ全体がAdobeに支配されさえしなければ、VIDEO要素のひとつやふたつ……って考え方もできなくはない。

  • http://twitter.com/lordnoesis Lord Noesis

    まあ大義名分に反してはいる。動画サービスの運営者であるGoogleにとっては、Flashよりもライセンス料を要求するH.264の方が問題なんだろうから否定はしないけど。リッチコンテンツ全体がAdobeに支配されさえしなければ、VIDEO要素のひとつやふたつ……って考え方もできなくはない。

  • http://twitter.com/lordnoesis Lord Noesis

    まあ大義名分に反してはいる。動画サービスの運営者であるGoogleにとっては、Flashよりもライセンス料を要求するH.264の方が問題なんだろうから否定はしないけど。リッチコンテンツ全体がAdobeに支配されさえしなければ、VIDEO要素のひとつやふたつ……って考え方もできなくはない。