DEMO Spring 2011は昨日(米国時間3/2)Palm Springsで幕を閉じ、シリコンバレーの動向を反映してかこのカンファレンスの2日目は、ソーシャル方面のテクノロジを軸とするスタートアップたちの’特集’になった。ソーシャルなCRMプラットホーム、写真共有、ソーシャルネットワークアグリゲーションと読者参加のためのツール、ソーシャルビデオ、グループチャットなどなど、これらのスタートアップたちは、”ソーシャルな”Webに対する関心が、今後もまだまだホットであり続けるという感触を濃厚に示していた。
以下、今後を注目すべきと思われる興味深いスタートアップを5社、順不同で見ていこう:
■Marginize: Marginizeは、Webサイトに注記を書き込んだり、コメントを残せるブラウザアドオンで、つまり、どんなサイトを訪れてもそこにソーシャルな層を加える。既存のWebサイトに、そのサイトの余白層(margin layer)というものが勝手に作られる。ユーザは新たに余白層を加えたり、既存の余白層に参加してほかの人たちがこのサイトについて何を言っているかを閲覧したりできる。またもちろん、ユーザ自身のコメントも残せる。
そのウィジェットは前からあるコメントプラットホーム*(たとえばDisqus)に似ているが、Marginizeの場合は発言をWebサイトのオーナーがコントロールするのでなく、対話やコメントを個々のユーザが掌握する。ある意味でMarginizeは、Yelp用の非公開のTwitterフィードに近い。というのも、そのウィジェットは各Webサイトの横に”margin”(余白)というタブを作り、そこにいろんなユーザが、そのサイトに関する補足的な情報を提供したり、リビューを書いたり、サイトの質について議論したりできるのだ。〔*: commenting platforms, コメント機能のないサイトに勝手にコメント機能を設けるサービス。〕
同社の立ち上げは半年前だが(本誌にDon Dodgeが記事を書いたこともある)、昨日のDEMOでは方針の修正を発表し、サイトのパブリッシャーやクリエイターもこの”余白ゲーム”に参加できるようにした。つまり”パブリッシャーウィジェット”というものが新たに加わり、それを使ってパブリッシャーは自分のサイトにシームレスに新機能を加え、そのタブはパブリッシャーとユーザの両方が見られる。こういう考え方は必ずしも新しくはないが、Marginizeの使い勝手とインタフェイスは、それまでのものと一線を画している。
■Gut Check: 今日(こんにち)のようなデジタル世界では、従来的なやり方の市場調査があまりにも面倒で、費用がかかり、労力の浪費につながるものになっている。今回のDEMOで”来場者人気賞”(賞金100万ドル)を獲得したGut Checkは、Web上でグルイン(グループインタビュー, a.k.a.フォーカスグループ)などの定性的な調査をDIY(do-it-yourself)できるというツールだ。
ユーザには大量のカテゴリーを列挙したリストが提供されるので、そこからオーディエンスのタイプを選ぶ。するとGut Checkが、同社が集めた500万人の調査参加者の中からそのタイプに該当するターゲットグループを選び出す。ユーザは、Gut Checkのポータルから個々の調査参加者に、画像を見せたり、質問をするなど、対話的にインタビューできる。
料金はワンセッション40ドルだが、製品やサービスの更新を比較的頻繁に行う大小さまざまな企業にとって、ターゲットとする消費者からほぼリアルタイムで、しかも頻繁に、フィードバックが得られるのは魅力だ。製品やサービスの変更を「日」とか「週」のペースで行うような企業にとっては、まさに、Webの(インターネットの)威力様々(さまさま)だろう…これまでの調査技法では、まずできない。
■Enterproid: QualcommのQPrize賞を獲得したEnterproidのDivideは、忙しいプロフェッショナルたちが、自分の個人的な電話を使ってセキュアに仕事をできる、というソフトウェアだ。今携帯電話などで使えるWeb 2.0のツールは、企業のIT部門が利用を公認できないものが多い。たとえばセキュリティの規格が緩いので、仕事では使えないアプリや機能が多い。この問題を解決するために、Enterproidはユーザの携帯電話上に隔離されたエンタプライズセクションを設け、メール、カレンダー、コンタクト(アドレス帳)、暗号化されたメッセージングアプリやブラウザなどに、セキュアにアクセスできるようにする。会社の重要データでも、安心だ。
Enterproidのアプリはホーム画面も別のものを提供するが、従来の個人用ホームとつねに対話しているので、エンタプライズセクションにいるときでも、個人的なメールが来たときの通知を受け取れる。またEnterproidは、企業のIT部門からのアクセスに関して一連のルールを提供し、それによりセキュリティに不安があるときは特定のアプリへのアクセスを不許可にする、といった措置ができる。VMWareも、Android携帯上の仮想化プラットホームにより、ユーザが2つのプロフィールを持てる、という機能を計画中だが、Enterproidのプラットホームはそれに比べると簡単で安上がりなので、とくに小企業には魅力だろう。そもそも、仕事に社員個人の情報機器を–セキュアに–利用できること自体が、小企業のITコスト対策として価値がある。
■eLive.pro: テレビは元々ソーシャルな性質を持っていて、友だちや家族などの仲間で楽しむことが多い。しかし、いわゆるソーシャルテレビの技術は、おおむね不成功だった。平均的なテレビ視聴者が、そういうものに対して、心の準備ができていないのだ。eLive Entertainmentは、Webにそんなソーシャルな技術を適用し、無料サイトでYouTubeなどなどからのビデオをユーザの友だちに見せて、見ているものを軸とする対話やコメントなどをうながす。この後半の部分が、ソーシャルテレビ的な技術なのだ。
ユーザはビデオを’上映’し、それに対して声や落書き、あるいはダイアログボックス中に書くテキストでコメントする。ビデオをスローにして、そういう注記を書き込んでもよい。そしてそのリンクを、共有、オンデマンドに保存、ほかのビデオと同時に見る、などができる。ソーシャルテレビの普及はまだ先のようだが、Web上のビデオなら対話的でソーシャルな視聴が今から可能だから、eLiveはおもしろいアイデアでもある。
■Heystaks: テク業界でもその外でも、検索の現状への幻滅感が広がりつつある。コンテンツファームが迷惑なリンクをごみのようにまき散らし、Googleが最初にWebに登場したときのような、検索に大きな改革をもたらす勢力はほとんど見あたらない。新人の検索スタートアップHeystaksは、検索をソーシャルにすることによって検索を進化させようとする。それは単に、すでにほかがやっているような、ツイートや写真といったソーシャルなデータを探すのではなくて、ソーシャルなコミュニティを利用してより良い結果を取り出すのだ。
HeyStaksはバックエンドの相当大がかりなソーシャル検索アルゴリズムにより、コミュニティによってフィルタされた適切性の高いリコメンデーションを作り出す。それはアイルランドの科学者集団が長年かけて編み出した考え方で、今彼らが元Yahoo!の合併買収担当VPだったJonathan Dillonの指揮下でチームを作った。DillonはYahoo時代にDeliciousの買収に携(たずさ)わったが、Deliciousは2005年という早い時期にHeystackの小型版のようなものを提供していた、とも言える(あまり成功しなかったが)。Deliciousがうまくいかなかった理由の一部は、Dillonによると、ソーシャルグラフとソーシャルネットワークが今ほど普及していなかったことだ。
HeyStaksは今日の、より成熟したソーシャルグラフとコラボレーション技術を活用し、自分自身が検索エンジンになるのでなく、GoogleやBingの検索結果をコミュニティ起源のコンテンツでより充実させることを目指す。良質な検索結果を望むユーザは、特定のトピックのユーザグループに入って、そのトピックに関する最良のWebページの集まり、”search staks”(検索スタック)というものを作る。それらのスタックは、メールやTwitterなどで友人や同僚に公開してもよいし、招待制で非公開にしてもよい。Heystaksは現在、iPhoneアプリケーションとFirefoxのプラグイン、およびChromeのエクステンションを提供し、まだアルファである。ぼく自身は懐疑的だが、でも、DEMOのプレゼンには心惹かれた。詳細は、ここで見られる。
□□Facebookのソーシャルグラフの影響が広がっているので、今回のDEMOでも、このソーシャルネットワーク(Facebook)の機能を個人的な、あるいは仕事上の、サークルに持たせるという作品がいくつかある。家庭と職場でFacebookの拡張機能のような経験を提供しようとする、2つのスタートアップが印象に残った。それを以下に紹介しよう:
■FetchFansはソーシャルメディアをデザインするためのエンジンで、企業が自己ブランドのFacebookページやTwitterの背景画面などを作る手助けをする。支社支店など複数の事業所を持つ企業が主なターゲットで、たとえば不動産業などは、特定の支店支社の地域市場とか、特定の(年齢別等)消費者層をターゲットにした販促をしなければならない場合に、こんなカスタムページが役に立つだろう。FetchFansはユーザ企業にFacebookページのテンプレートを10種類提供するので、それらを元にローカル版のテンプレートを作っておけば、各支店の人などが自分用を簡単に作れるだろう。eコマースをソーシャルにして、そこにチャット、写真、ビデオ、リアルタイムの見込み客生成などの機能を加えられるから、これまでソーシャルネットワーク上でじみーであまりぱっとしなかった企業のプロフィールが、生き生きとしたものに生まれ変わるだろう。
■Pixable Photofeedは、Facebookの写真をiPad上で見るための無料アプリケーション。このアプリは、個人化された写真のストリーム、たとえば”今日の好評写真集”などを提供し、それらをワンタッチでスワイプスルーできるような形で、フルサイズで表示する。同社はデモのとき、Facebook上には600億の写真があり、毎日50億ずつ増えている、それらを整理して必要なものを見つけるのはたいへんである、と語った。
PixableのWonderRankテクノロジは、PandoraのMusic Genomeに似ていて、フレンドの写真にアクセスして写真のメタデータ(”いいね!”の数やコメントなど)を分析する。その分析結果に基づいて写真をカテゴリーに分類し、ランク付けや写真の発見を容易にする。またこのアプリケーションによりユーザは、写真を”いいね!”したり、コメントやタグを付け、フレンドをフォローし、彼らが写真をアップロードしたら通知をもらう、といったことができる。Facebookの成功(とその進化)に写真は大きく貢献しているから、PixableをFacebookが買収するかもしれない、とも思った。
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写真クレジット: Rodrigo Pena
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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))



