
今や私たちは、新しい時代の入り口におるのでございます*。うむ、”時代”というのは、ちと大げさかもしれん。モバイルの世界は変化が激しいからのぉ。しかし、事実は事実。クヮドコアのモバイルプロセッサが定着してきた。さらに、それに続くものも、現れ始めた。〔*: ここらは政治家の演説調をパロった文体。〕
本誌の読者には、プロセッサのコアが4つあることの利点をいちいち説明する必要もないだろう。でも中には、”でも、それがどうしたの?”、と思う方がおられるかもしれない。そこで私は業界の大物たち…Qualcomm、Nvidia、TI…に取材をして、なぜそれが重要なのかを説明してもらった。それによって、ふつうの携帯ユーザの日常が、どう変わるのか?
まず、いくつかの誤解をやっつけておこう。最大の誤解は、コアが2つになれば処理スピードも倍になる、というものだ。でも、それはない。シングルコアのCPUをデュアルコアにアップグレードしたら、性能は50%アップし、デュアルコアをクヮドコアにアップグレードしたら、わずかに25%アップする。これが定説だが、しかし完全に間違っている思いこみは、モバイルプロセッサはどれもほとんど同じだ、というもの。むしろモバイルプロセッサは、差別化の競争が激しいから、今では、どの製品にどこのどのプロセッサが載っているのかをエンドユーザが正確に知ることすら難しい。
しかしそれでも、あえて一般的に言えば、クヮドコアのCPUは二つのことが、とくに得意だ。まず、本体(OS)がマルチタスクをしたり、あるいはアプリケーションがマルチスレッドをやっていても、性能がそれほど落ちないこと。たとえばWebの閲覧(ブラウザの使用)はマルチスレッドな処理であり、高度なゲームアプリケーションもやはりそうだ。Androidも、自分自身でマルチスレッドをやっている。そしてクヮドコアの第二の特長は、電池寿命の延伸だ。今は、ふつうのCPUでも、日常の使用で電池寿命の約15%しか消費しないから、クヮドコアによる改善もそれほど大きなものではない。しかしそれでも、電池寿命は今のモバイル機器の大きな問題だから、わずかな改良にも価値があるのだ。
モバイルに初めてクヮドコアを持ち込んだのはNvidia、そのTegra 3 Kal-El SoCだった。4つのコアが一般的にもたらす利益に加え、Nvidiaはさらに、コンパニオンコアというものを導入して差別化を図った。それは、最大スピード500MHzという第五のコア(Nvidiaの特許)だ。それを使うvariable symmetry multiprocessing(vSMP)(負荷対応型マルチプロセッシング)という技術でも、同社は特許を取っている。それは、デバイスの処理負荷に応じて個々のコアの使用をon/offする、一種の省エネ技術だ。
メールなど負荷の非常に低い処理や、待機モードなどのときは、もっぱらコンパニオンコアが使われ、ブラウザ、顔認識、写真編集など高負荷の仕事になると、そのほかのコアが動員される。このやり方で、マルチコアによるパフォーマンスの向上と、電池寿命の節約を、両立させるのだ。しかし他社は、Nvidiaとは違うやり方で自社製品を差別化している。
たとえばQualcommがもうすぐリリースするAPQ8064 SoCには、特殊なワザがある。多くのマルチコアプロセッサのクロックは、全コアが斉同して上下するが、Qualcommのこのプロセッサでは、どれか一つのコアのクロックを最大にして、そのほかは目下のタスクにとって必要なスピードにとどめる、ということをする。
つまりQualcommのプロセッサではコアのクロックを個別に変えられるので、たとえば最初のコアのオーバフローを担当する第二のコアは、最大時の60%程度のクロックで動けば十分、ということがありえる。そこで、Nvidiaではコンパニオンコアが電池寿命に貢献し、Qualcommではクロックの個別化がその役目を担うのだ。
しかしTexas Instrumentsは、まだクヮドコア製品の計画を発表せず、当面はデュアルコアのOMAP SoCで行くようだ。それでも、TIの主張によると、同社のOMAP 5 SoCはデュアルコアのCortex A15プロセッサを搭載し(そしてCortex M4コアを2つ)、命令をより効率的に処理する成熟したシステムである。これをクヮドコアと呼ぶ人もいるが、TI自身はデュアルコアのSoCである、と言っている。そして、市場においてクヮドコアと互角に戦えると。NvidiaのTegra 3に見られるCortex-A9 MPCoreによる4基のコアよりも、うちの(TIの)smart multi-core architectureのほうが命令処理数が30%多い、とまで言っている。
現状はとにかく、4コアへの移行が始まったばかりという段階だ。これからますます、技術と製品の状況が複雑化してくるだろう。
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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))
