
2年におよぶ捜査の末、トーレント案内サイトOinkがオランダとイギリスの両国で強制捜査と逮捕の最中に閉鎖処分となった。OiNKは招待オンリーのプライベートなトラッカーだ。利用者は新曲リリースや発売前のアルバムを交換する人たちがメインで、ファイル交換にはロスのないFLACフォーマットを専ら使用していた。
サイト管理者は英国出身の24歳でIT業界の雇われ。傍目には単にwhoisに登録されたサイトドメイン記録と、押収したサーバーから拾った情報を手がかりに捜索・逮捕に踏み切ったように見える。
捜査の責任者は国際レコード産業連盟(IFPI)とインターポール(国際刑事警察機構)だ。合同捜査の末、家宅捜査と逮捕を行った。当局報道官は「OiNKは違法な未発売楽曲のネット配信で中心的役割を果たしていた」とし、管理者はOiNKで多大な利益を得ていたと主張している。「プライベートなファイル共有サイトという設定を装い、非常に儲かる巧妙なスキームを構築していたのです」
OiNK唯一の収入源はメンバーからの寄附金だ。しかし、営利目的の犯罪組織というイメージが植えつけられたことでサイト管理者にとってはますます厄介な問題となり、著作権侵害の罰金プラス多額の賠償金を請求されてしまった。
確かにOiNKは、発売前のアルバムや他リリースへのリンク掲載が早い。ただ、これらリリースに責任があるのはサイトとメンバーだと当局は主張しているが、これは当局がまだScene(コミュニティ)の仕組みを理解していない証拠だろう。
OiNK(会員18万人)は人気だったかもしれないが、オンライン楽曲リリースの核となるハブでは絶対なかった。そんな核となるハブなど存在しない。だからこそリリースする側のグループは全員まだ生き残っているのだし、何個サイトが閉鎖になってもオンラインのファイル交換は続くのである。OiNKのメンバーは主に、高品位なアルバムのリリースを熱望する音楽ファンで構成されていた。間違いなく、同じリリースが聴けるソースをそれぞれ別に抱えている人たちだ。
本件に関してはマスコミも誤報が少なくない。やれ管理者が楽曲をサイトに直接投稿したとか、やれ楽曲を違法に販売していたとか。まだ他にもあるが、こうした誤ったOiNK理解は実態からかけ離れたものであり、こんな風に報じてもオンラインのファイル交換業者を反海賊運動からますます排除するだけである。
この関連で何日か前にネット動画サイトTv-Links.co.uk(アーカイブ)も閉鎖処分の上、管理者が逮捕となるニュースがあった。
Tv-linksは、Google VideoやDailymotion、YouTube、Stage6など他の動画サイトがホストするTV番組のエピソードにリンクするサイトとして始まった。たちまち人気が出て、後で動画など他のコンテンツのインデックスも追加した。ファイルはflashベースの動画サイトがホストしているので、画質はDVDやテレビ放送に比べても遥かに見劣りがする。
OiNK事件同様、こちらもイギリス国内で管理者が逮捕された。サイト自体は英国内のドメインネームで登録されている。(OiNKは前は英国のドメインネームだったが、数ヶ月前に.me.ukドメイン停止後、.cdのアドレスに移転)。 OiNK事件の時もそうだったが、Tv-links閉鎖・逮捕を行った捜査当局はここでも管理者が営利目的でサイトを運営し、他人の著作物から莫大な利益を得ていた…と主張している。Tv-links事件を率いる捜査官の一人の言い分はこうだ。:
「TV Linksのようなサイトは、ネットの違法コンテンツへのリンクを特定・投稿・整理・インデックスし、ユーザーが違法サイトに行ってオンデマンド視聴できるようにすることで著作権侵害を助長し、利益を得ているのです」
Tv-linksはリンクを整理し、インデックスしていたが、コンテンツを投稿していたわけでは断じてない。OiNKもTv-linksも、リンク案内はコミュニティのメンバーたちが保守・調整していた。Pirate Bayのようなサイトはスウェーデンなどの法廷で、トーレントのシードファイルをホストしているのであり彼ら自身は著作権侵害に何らの責任も負わないとの主張を展開し、認められている。TV-linksはもっとこの主張通りで、やっていることはメタディレクトリや検索エンジンが行っていることと機能は変わらない。
英国内のIP関連法は最近見直しが行われ、著作権侵害を”助長(facilitation)”する行為は犯罪なことが明確になった。つまり動画を実際にホストしている側に責任はなくて、GoogleやStage6にある著作権動画にリンクをはる方が違反になる、そんな可能性もあるということだ。
FTPサイト登場の当初から、掲示板やIRC、ファイルトレーダーはやり方を調整し、責任を分散する技術を開発してこなければならなかった。-そして多くの司法現場で法律が素早く追いついてきた。
英国ではリンクをはる行為が今や犯罪なのかもしれないが、各種業界団体が正当と認めないサイトを1本釣りで閉鎖できるよう、法律の適用が偏っているのは明らかだ。
一連の閉鎖に見られるもう一つの共通点は、捜査当局があたかもサイト管理者が自らの行為で膨大な利益を得ていたかのようなイメージを植えつけるのに懸命なところである。最近逮捕された管理者はみな休む間もなくフルタイムでサイトの運営に関わった人たちで、ホスティングにはコストもかかるし、そのためには寄附も請わなくてならない。ほとんどはコミュニティ存続のため苦労している管理者だ。他のコミュニティが学ぶ教訓はひとつ。サイトを回してキープするため寄附を受け取る行為でさえ、当局の手にかかると著作権コンテンツを売る営利行為と解釈されてしまうということだ。
この関連のニュースで、さらに世界最大のプライベートなトーレント・トラッカー、Demonoidが一時ダウンの後、復活を遂げた。当局から閉鎖要求が来たことに関係あるかもしれないとここで伝えたが、サイト管理者にはカナダのCRIAから削除要求が届いたもののホストを新しいものに替えて数日以内に復活、平常に戻った。
The Pirate BayとDemonoidはコミュニティ撲滅努力をなんとかかわしてこれたが、管理者が英国在住だった人気サイト2つの方は両方とも閉鎖となった。ネット著作権戦争では世界共通の法律がない。もっとファイル交換が安全な国もある。OiNKとTv-linksを閉鎖に追いやった英捜査当局は、今後も違法なサイト、好ましくないと思われるサイトの徹底捜査を進める意向を明らかにした。
法律が曲がっていない国、著作権侵害をもっと広い視野で展望したい人たちを懐柔しようと絶えず法律が形を変える国もある。こうしたサイト閉鎖の影響はとても小さなものにとどまるはずだ。OiNKとTv-linksのミラーはすぐにも出る。今度は非英国ドメインのホストで、非英国あるいはオランダ国内のデータセンターで、運営者は非英国市民、そんなミラーとなるだろう。
NikはOmnidriveのCEOで突発的に原稿を送ってくれるTechcrunchの非レギュラー寄稿者だ。ブログはNew Web Order。
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