メーカーで作られる商品はだいたい生産数が決められていて、リアルな店舗も含めて各店舗が仕入れられる商品の個数は予め決まっているのだそうだ。特にシーズン性の高いファッション商品は、たとえヒットとしたとしても、追加生産するころには商機を逸しているから、改めて生産するなんてことをしないことが多い。一方で、インターネットでは商品の人気に火がつくと、どの店舗を検索してもその商品がなくなっているなんてことはよくある、リアルな店舗には在庫があるのにも関わらずだ。だからといって、メーカーは全体の在庫調整をするってことはないし、売れない商品を大量に仕入れても仕方がないので、結局は店舗側の仕入れ担当にはいろんな裁量が求められる。
一方でインターネットでは商品の価格はむき出しになるので、ECとなると安いところに競争優位性が働いて、結局は粗利の低いビジネスになる。そういう話を聞くと、EC運営はなかなか難しい商売だと痛感させられる。だからカフェグルーヴがやろうとしているVIVA JAPANについてはなんとなく理解することができた。
さまざまなビジネスを手がける東京のカフェグルーヴはすでに創業10年を超えてもうスタートアップ企業とは呼べないのかもしれない。最近ではEC事業に進出していて、各ブランドとそのブランドのECのショップを立ち上げるといったことを行っている。ブランド直営のECショップを始めたのは価格競争に陥らないからだそうだが、そうであっても在庫のコントロールは難しい。また、獲得した顧客に限定商品のようなアップセルを可能にしても、他のブランドの商品を販売するようなクロスセルはできなかった。
彼らが立ち上げるVIVA JAPANはそういったことを解決する要素がいくつか入っている。ソーシャルECと銘打ったVIVA JAPANのショップには、TwitterやFacebookとの連携により、自分が買った商品情報をソーシャルメディアに流したり、自分が買った商品に対するコメントが流れてきたり、あるいはQuoraよろしく商品や会員をフォローすることで、それらに付けられた他人からのコメントが流れてくるのだそうだ。友人が「いいね!」と言ってくれたり、誰かに買ったものを自慢したり、友人が買ったものを眺めたりといったことで、買い物を楽しもうということだ。
各ブランドごとにサイトは運営されるようになるのだが、こういったソーシャル性を活用することによって、うまく商流をつくっていくことで、買い物をエンターテインメントしていきたいとカフェグルーヴ代表取締役の浜田寿人氏は言う。
究極的には、ブランドのプロダクト開発者(ファッションデザイナーとか)が「こういったものを作りたい」というのを提示して、商品を買ってくれる人が揃った時点で生産を開始するといった、共同購買のような、あるいはもっといえば、最近のKickstarterのようなスタイルなどもECとして導入していきたいということだ。本来はすべてこの方法、つまりオーダーによって販売がすべて完結すれば在庫リスクもなくなる。ただ、多くの消費者にはオーダー生産の買い方は慣れていなくて、実際には完成品を求めるケースが多い。だから、既存の完成品をソーシャルメディアとの連携を図りながら販売する方法と、Kickstarterのようなプロダクト開発者のファンサイト的なバイオーダーの要素を組み合わせたECサイトに仕立てあげていくのだそうだ。
最近はこういったソーシャル×◯◯◯といった話題にこと欠かない(たとえばECならこれ)。ただ、果たして、こういったアプローチが既存のビジネスを劇的に変化させるのかについては、まだ疑問点もある。というのも、そもそも必ずしもソーシャルグラフ内の人たちと、自分が買いたいものが一致していない可能性もあるし、だいたいにおいて商流の規模感が小さいので、ソーシャルメディア上で商品が話題になることも少ないのではないという疑念点もある。したがってある程度のサイズのメガブランドなどとの提携も必要になってくるのだろう。
ソーシャル性をのぞけば、VIVA JAPANが面白いのは、その笑ってしまうほどストレートなネーミングと日本の製品や日本で培われた製品を東南アジア向けにフルフィルメントで販売するサービスを展開するところなのかもしれない。海外向けに販路を見出そうとしているブランドにとってはそれも魅力に感じるだろう。来年には海外での売上比率を20パーセントまで高めたいと浜田氏は僕に語ってくれた。
VIVA JAPANが掲げるソーシャルECのプラットフォームはまだすべてが完成しているわけではないが、今後のECサイトの方向性を占うものかもしれない。

