あるソーシャルゲームのデータを分析したところ、「戦士」のスキルを身につけていくユーザーよりも、「魔法使い」のスキルを身につけていくユーザーのほうがゲームの世界観にどっぷりハマってくれたという傾向がわかった。これはゲーム作成者もまったく予期していなかったことで、ゲームをリリースしてある程度のユーザーが遊んでみて初めてその実態がわかったという。このためこのゲームでは一定の割合で魔法使いのスキルを身につけることをユーザーに促すようなゲーム運びにしたのだという。
正確ではないかもしれないが、ビッグデータを扱うデータ分析のブレインパッドのサービスイノベーション室の平野健児氏が言うには、あるソーシャルゲーム企業の分析をしたところ、こういった傾向が見てとれたんだそうだ。
“ビッグデータ”はいまやバズワードでこの業界の住人にしてみればもはや食傷気味かもしれない。けれども、ウェブのサービス企業、特にソーシャルゲームのように短期間で10万人以上、場合によっては100万人を超えるユーザーがサービスを利用するようなものが出現してきていて、そのユーザーの行動を分析することは収益面でもサービスの持続性という面でも重要になってきている。そして求められるその分析のスピードは短期間になってきている。
もはや伝説と化した「おむつとビール」の時代のようではなく、ソーシャルゲームの世界では、朝に投入したゲーム内のイベントの様子をデータマイニング分析によって、夕方にはチューニングしなければならないのだという。ゲームのプロデューサーなどがシステム担当者に頼んで都度行っていた分析のためにデータを取得する方法では、システム担当者が面倒がってなかなかそのための業務が前に進まない。かといって分析が必要な現場の人たちが手軽に扱えるビッグデータの分析のためのシステムを構築するには、専門知識が必要となり、数人から数十人規模の企業ではそのための部隊を作るのは難しい。どういったツールを導入するかという選定も大変だし、システムの導入だけでも概算で1,000万から2,000万円ほどかかるのだと、平野氏は指摘する。
そこで、ブレインパッドではソーシャルゲームのプロバイダー向けに分析支援をするためのサービスを開始することをアナウンスしている。このCloudstockというサービスでは、ソーシャルゲームで取得するログデータをAmazon S3上にあげるだけでいい(ただし、その容量は1日だけで数ギガから数十ギガと膨大だ)。Cloudstock自体はPaaSとして提供されるが、超並列データウェアハウスのGreenplumと分析ツールのPentahoを採用して、これらをAmazonウェブサービス上に構築している。したがって、ゲームのログデータをS3に貯めていくように設計するだけで、あとはこのデータをAmazonウェブサービスでMapReduceでデータを加工して、Greenplumで処理し、最終的に担当者はPentahoのビジュアルレポートを見て意思決定をすることができるようになるわけだ。
ブレインパッドでは顧客としてソーシャルゲーム企業のデータ分析をしている。そういった知見があるために、短期間(1カ月半程度)でこのサービスの導入が可能になるのだという。ただ、Cloudstockでは彼ら自身が詳細な分析をするわけではない。どんなデータをとったほうがいいのか、どのようにとればいいのか、といった分析を導入するためのサポートはしてくれるようだが、あくまでも分析するためのサービスを提供するところまでだ。
Cloudstockにかかるコストはおおよそ月額10万から50万円程度で、これはユーザーが数十万程度のソーシャルゲームを想定している。金額は処理するデータサイズによって変動する。一方で、もし数万人程度のユーザー数であれば、これほどの分析ツールは必要なく、プラットフォーム側から提供される大枠のデータで分析するのでもいいらしい。逆に数百万ユーザーであれば、選任の分析官を置くか、詳細なデータ分析を依頼したほうがいいのだという。
というのも、分析した結果によってゲームをチューニングして、KPIを1パーセント程度変化させることでコストを相殺できるぐらいの規模感を想定しているからだ。たとえ1パーセントだとしてもソーシャルゲームをプレイする人はユーザー数が多いために、その変化が収益に響いてくる。このシステムはソーシャルゲーム以外のものにも使えるのだが、こういった分析が収益面で大きな変化をもたらすような例はソーシャルゲーム以外にはなかなかないために、Cloudstockはソーシャルゲーム向けと銘打ってサービスを提供しているようだ。
ソーシャルゲームがデータ・ドリブンで開発されいているのはよく知られているし、ビッグデータの好例であることはわかる。国内で有数のソーシャルゲーム企業であるgumi代表の国光宏尚氏もそういった発言をしている。ただ、先日彼と話す機会があったのだが、ソーシャルゲームもデータ分析やパラメーターの変化だけでは成功しなくなってきているのだという。数値では表せないゲームそのものの楽しさも必要ということだから、分析は必要だとしてももそれだけが勝敗を決めるわけではないと意識して取り組んだほうがいいのだろう。
ブレインパッドについて補足しておくと、同社はビッグデータを扱う企業として2004年に創業されて、昨年9月に東証マザーズに上場している。代表取締役社長の草野隆史氏はフリービット・ドットコム(現フリービット)の創業メンバーである。


