先週ポートランドの新会社Splashcastを 訪ね、同社が開発した未公開のメディアパブリッシングツールを取材する機会を得た。オンラインメディアと言えば最近は過剰なブランディングと選択の幅が少ないことにゲンナリな人も多いだろう。同社のサービスはでも、そんな食傷気味の人たちにもきっと満足してもらえそうなサービスだ。ローンチまでにはまだ数ヶ月あるが、動画・写真・音声・テキストをRSSフィードで取り込んで、そのコンテンツをリサイズ完全対応のスキンレスなフラッシュプレイヤーに発行できるクリーンでシンプルなシステムだった。 メディアコンテンツをSplashcastのストリームで簡単に配信できるほか、自分や友だちのダウンロードしたコンテンツも自分のプレイヤーに取り込んで共有可能。
同社が採用した戦略は、埋め込みメディアプレイヤーとオンラインパブリッシングの分野ではベストな運用方法となるかもしれないし、このマーケットはとてつもなく巨大だ。
Splashcastのようなツールはオンラインメディア市場の拡大要因にはなっても縮小要因にはならない。何故なら既存のツールに比べ、摩擦が極端に少ないからだ。
当日はウィジェットの話でずいぶん盛り上がった。このSplashcastという会社は僕が今最も注目し期待をかけている企業のひとつと言えそうだ。
Splashcastは旧称QMindで、 元々はウェブベースのeラーニング用コンテンツの製作ツールを構築する会社だ。その新製品の多くに自社製ツールをポートしている。同社の手掛けるエンター プライズ用ソフトウェアはクォリティーにも定評があるが、同社は今セミプロの消費者が生成するオンラインメディア領域の未来に賭けている。ここは今後数年でいよいよ本番を迎えることが予想される分野だ。
埋め込み可能なFlashメディアプレイヤーの会社があるよと、最初話を聞いたときは正直言って期待はしなかった。でも、実際に会って同業他社が成果を挙げていることを確認し、その中で彼らが今取り組もうとしていることが何かを話し合い、彼らの目的が実地で鍛えるユーザーエクスペリエンスとプロフェッショ ナリズムをこの領域に持ち込むことにある、そう知って、僕もだいぶ角が取れてしまった。彼らのアプローチを念頭において製品デモを見ると、こんなにすばら しいものもないように思えてくる。
各種メディアとサイトを担当するパブリッシャー向けのコンテンツ制作・配信サービスに関しては今、様々な企業が様々な取り組みを行っている。僕らもここで何度も取り上げてきた。Brightcoveは動画やウェブページのパブリッシャーが再生プレイヤーに埋め込めるような動画チャンネルを生成・表示できるようにするサービスを提供している。VideoEgg とFlixnはブラウザ上にFlash動画のキャプチャーを表示してくれる。Revver は動画を再生するたびに別の新しい広告を挿入してくれるし、Widgetboxではユーザーが自分のページにコードをドロップしたり、管理用ダッシュボードから表示コンテンツの切り換えが可能だ。Tagloopsではマルチメディアのアイテムを発行者がRSSフィードにドロップ&ドロップし、プレイヤーに好きな動画を蓄積していくことができる。OneTrueMediaではパブリッシャーがウェブベースの動画エディターを使って異なるメディア形式の動画を一括してプレイヤーに取り込んだりできてしまう。また、Scrapblog(日本語)が手掛けるウェブベースのメディア生成ワークスペースは簡単なデスクトップのレイアウト用ツールのように動作がスムーズかつパワフル。 Feedburner(英語)(日本語)ではサイトに埋め込めるウィジェットを用意、ここにウェブ上から記事の見出しをシンディケートしてくれる。
Splashcastがやろうとしてるのは、この全部、と言ってもいい。それはまるでメディアのスーパー・ウィジェットとも言うべき試みだ。Stickamは同社と最も広範囲の領域で拮抗するライバルらしいので、Splashcastが自社サービスにStickamのライブチャット機能を追加する話は成立・不成立どちらに転んでもおかしくない。Stickamがコミュニケーションがベースなのに対し、Splashcastはメディア用ツールがベース。もともとタイプが異なるサービスなのだが。
Splashcast が今構築しているシステムは、僕がこれまで見た中で最もユーザビリティの高いシステムだ。これならどんなローテク&セミテクのユーザーでも、フォーマット を選ばずにメディアコンテンツをアップロードしたり、キャプチャーしてチャンネルに取り込むことができる。一方、サイトの発行者はSplashcastの コードを自分のサイトにドロップしてしまえば、あとは先のユーザーたちが生成した動画チャンネルから自分で流したいコンテンツを選ぶだけ。サイトに配信する番組やチャンネルは、どんなファイル形式でもかまわない。複数のフォーマットを組み合わせて流してもいい。オーガナイズはドラッグ&ドロップで一発だ し、ナレーションつけて楽しんだり、そういったこともできてしまう。番組終了後には番組製作スタッフの“クレジット”のスクリーンロールが流れてくるの で、そこで番組中の使用ファイルの詳細が確認できる。
ウェブでSplashcastプレイヤーを見て真っ先に分かるポイント、それは“美しさ”だ。スクリーンの上には正方形のスクリーンがあるだけでブランド 名もプレイボタンも何もない。だけど、その正方形をマウスオーバーすると透明なガラスのようにクリアなイメージが映し出され、ホバリングすると再生が始ま る。停止ボタン、あとはトップとボトムに“get this item(このアイテムをゲット)” というリンクがロールオーバーするだけ…。
視聴者は複数の番組から好きなものを選んで、自分が現在いるサイト、これはどんなサイトでもOKなので、そこからプレイヤー経由で映像が鑑賞できる。最初 はサイト発行者が決める限られたチョイスの中から選ぶかたちになろうが、いずれはそれも終わり、最終的にはSplashcastの各プレイヤーが Flashメディアコンテンツの世界全体をカバーする小さなポータルとしての機能を果たすようになる。Zooomrのポータルと似ているようだけど、違うのはSplashcastの場合、そこのプレイヤーに頭を突っ込んでいる限りは視聴者と発行者が互いに見たいコンテンツを自分たちで支配権(コントロール)を分かち合って決められる、ということだろう。
Amazonから自分の好きなアイテムを選んで表示できる(MyPickListのような)Flashのウィジェットを使う代わりに、サイト発行者はどんな種類のメディアもビジターと共有できるし、ビジターはビジターであたかも写真アル バムかマルチメディア版スクラップブックのように各アイテムをチャンネルに貯めこんでいける。で、Splashcastの場合、ダッシュボードは Splashcastのプレイヤー上をホバリングするだけでアクセスできてしまうのだ。まるでTVプロデューサーが視聴者に流すスクリーンを選んで画面を 切り替える動画スクリーンのベイのようなもので、僕らは全員が全員カメラクルーであると同時にTV局プロデューサーであり、さらに視聴者でもある、という ことだ。 摩擦のないスムーズな処理のおかげで、全員のチャンネル選びと貢献も楽しいものになっている。
自分のページにSplashcastプレイヤーがあったら、今日はScoble Show見せるだろうし、明日はCookingUpAStory、自分の住んでる場所の写真は年がら年中垂れ流し、見つけたものは見つけた端から流していくね、僕なら。有効な広告モデルがあれば喜んで見せて、僕のプレイヤーで流したコンテンツを 作ってくれた人たちと広告料分け合ったり、そういうこともしたい。これだけ大勢ひとがいて人の数だけコンテンツがあるのだから全部をひとつのプレイヤーで 共有するのは無理かな、そうも思うけど、Splashcastが目指す水準まで技術のハードルが下がってもまだこうしたことができないなら、それは技術の 問題ではない、政治と経済のモデルの方に問題がある。メディアの作り手は自分が作ったというクレジットと仕事の対価さえ保証してもらえたら、あとは自分の 作った作品を可能な限り遠くの人と広く速く共有したいと思うだろう、そう願っていけない理由はないのだ。
現金化のシナリオは? クリエイティブなマルチメディア・ウェブ・パブリッシングとその消費の時代は今まさに夜明けを迎えようとしている、というのがSplashcastの信 念。発行者の中にはサイトのオーナーにお金を払って自分たちのチャンネルを流してもらおうとする人も出るだろう。 サイトのオーナーはオーナーで、サイトでチャンネルを配信するのにお金を出したり。自分たちのバンド、ブランド、主張をPRしたいチャンネルのパブリッ シャーは、ブロガーのような小規模なウェブ・パブリッシャーが自分たちのSplashcastプレイヤーから支払いと引き換えに時間枠を割いていいと思わ せるような魅力的な広告を作らなくてはならないだろう。
こうした未来ビジョンは現実とかけ離れているのだろうか?ショートの小品というウェブのメディア世界から経済的に影響を及ぼすようなエコシステムが生まれる可能性なんて前々から僕は信じていなかった。でも今週末少し時間をとってVloggies大賞の候補者やPodtechやZooomrを 見て回ったら前よりずっと前向きな自分がいたりする。僕たちのオリジナルのチャンネルが財産になれば、そこが起点になるだろう。足かせではなく。この Splashcastが実現を目指しているようなかたちでメディアをどんどんオンラインに投入していけるようになれば、質の高いコンテンツも今よりずっと 見つけ易くなるだろう。それは間違いない。
SplashCastローンチは来年早々となる予定。その際にはまた改めて特集したい。お楽しみに。

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